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トマコと帝国の魔法使い  作者: ちくわ犬
第二章

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増えるトマコの家族2

「で、お兄ちゃん。この話は続けていいの?」


トマコは口調の崩れを感じながらも聞いた。トマコにとって「お兄ちゃん」とはどうしようもない存在でしかないのだ。出来れば内輪揉めには関与したくない。隣んちの鈴木さんの夫婦喧嘩はいつもトマコん家を巻き込んでいた。奥さんが逃げ込む日もあれば旦那さんが来る日もある。決まってケンカの理由はしょうもないことだったし、その後の仲直りは吐きそうなくらい甘々でベタベタでどうしようもなかった。


「……なんかきゅんと来るねその響き。もっかい呼んでくれる?」


「……。」


さっきまで「様」扱いだった大男は「お兄ちゃん」になったことで転落の格下げとなった。トマコにめいっぱいの軽蔑の目で見られる。だいたい奥さんに逃げられるなんてロクでもない。


「まあ、もう君は身内だからね……どうせならシドにも聞いて貰おうかな。」


向こうでメヌエットたちとお茶をしていたシドを手招きするとにっこりとシドもやって来た。


「どうかしましたか?」


「サムスンお兄ちゃんがシドお兄ちゃんにも奥さん逃げられ話を聞いてもらいたいんだってさ。」


「……そんな、ズバリは酷い……。」


だいたい年端のいかない子供に聞かせる話じゃないだろうに。向こうで夫妻が憐れむようにこちらを見ていた。


「……アンヌ管理官は魔法省詠唱召還管理局に普通に出勤してました。」


「うおっ。げっそりとか、悩んでる風無かったか?」


「……。」


「案外ウキウキとか……。」


「……。」


「うおっ。」


サムスンは逃げた嫁の動向を掴もうとシドに話を振ったらしかった。しかし、トマコはシドの言った単語に目を丸くした。「まほうしょう・ええしょう・しょうかん・かんりきょく」……まあ、ちょっとした聞き間違いはご愛嬌。ここまで聞き取れたんだえらいぞトマコ!トマコが引っかかったのはもちろん「召還」という単語。もしやそれって私が元の世界に帰れる方法を知る偉い人たちがいっぱい……。そう思って落ちそうになったまなこを気にしないでシドに向けた。


「しょうかんって!……ムグムグムグ……。」


思いっきりトマコは直球でシドに問いかけようとした。が、言葉が出ない。なんだこれ!?私の喉が壊れたか?シドは冷ややかにトマコを見つめていた。


「シドおにいちゃん……。」


これが証文取った「呪い(?)」か!?溜まってくる唾液を飲み下しながらトマコはシドが薄く笑うのを見た。




******



「だから、言ったでしょう?話せなくなるって。貴方はホントにサル頭ですね。どうしようもない。」


「……。」


あの後サムスンに延々と愚痴を聞かされ、さらにはアンヌとの馴れ初めまで事細かく聞かされたトマコとシドは先ほどやっとのことでサムソンから逃れてきたところだった。サムソンは顔色一つ変えずにいたが飲んでいたのは強い酒で、最後は酒飲みらしくンゴーっと豪快に倒れて寝てしまった。二人にとってはいい迷惑だった。サムスンが寝たのでおほほとメヌエット母が「ごめんね二人とも」と言って  父が両足を抱えてサムスンの頭を引きずりながら居間を退出していった。それを見届けたシドはトマコを顎で自分の部屋に誘ったのだ。


「いいですか。仮にも兄妹となったのですからサル頭のあなたにも私の事情を話して差し上げましょう。私が魔法省に務めているのは貴方も知っていますね。」


「ああ。虐められてるってね。」と心の中でトマコ。


「容姿も優れていながら私の魔力、知力はズバ抜けているんです。しがない孤児でなければ権力だって夢じゃない。……カドーレの力が有ればね。貴方が初めて会った美少女がいたでしょう。あのむすめはこの腐った国の王女様でね。私をお気に入りにしてるんです。いずれはカドーレの養子となった私を夫にと国王に進言するでしょう。私は国の中核に入り込めるというわけです。」


「……はあ。なんの為に?」


トマコは平和的頭でそう質問した。なにも考えちゃいない。この人逆玉狙いだったんだ。すげぇ。って感じで。なのにシドの目は爛々と恐ろしい色を秘めていた。なにこの感じやべぇ。


「復讐……。」


「……。」


「全てをこの手で滅ぼしてやります。」


シドはニヤリとトマコを見る。その眼はトマコを見ているようで確信のある未来を見ているようだった。トマコは背筋が恐ろしく寒くなって……。

とんでもない人を兄にしてしまった後悔を今更ながらする羽目になった。



 





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