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トマコと帝国の魔法使い  作者: ちくわ犬
第二章

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30/78

仮初兄妹5

しかし、狭い部屋で宙に浮く繭を避けながらの食事は大変だ。仕方ないのでいちいち繭の下をくぐってからトマコはベットの上でパンをかじった。時々シドを見ると「あんなツタンカーメンみたいにお行儀よく寝れるよな。」と心の中でぼやいた。


「不気味過ぎるっての。」


「まあ。害が有るわけじゃないからな。ほっとけ。」


ネズミはそう言うがうっかり繭に触れると電撃ビリビリらしい。絶対ドのつくSに違いない。取り敢えず簡単な食事を済ませたトマコは軽く部屋の掃除をした。シドは夜中に帰ると服を脱ぎ散らかしている。


「ちょっと、籠に入れればいいじゃん。こんな、玄関から脱ぎ散らさなくたって。」


トマコはちょっと前まで母親に言われていた文句をそのまま使っていることに気づいていないらしい。それよりも頼まれてもこんな男の嫁なんて嫌だ。シドを見て将来の嫁さん可哀そうとまで思うトマコ。トマコがそう思える人物は久兄に次いで二人目だ。久兄に至っては一部のマットが緑色になっていた。あんまり綺麗な緑だったので模様替えしたのかと思うくらいだったがそれがカビだと判明した時は母親が鬼のような顔でハ〇ターをぶちまけまくっていた。


「ちょっと着替えてくるから覗かないでよ。」


ネズミはトマコに意味ありげな視線を向けたが無言だった。その視線だけで「頼まれても誰もみねぇ。」と言いたげなのは分かったが無駄に傷つく必要もないのでトマコは黙って脱衣所に向かった。脱衣所に嫌味たらしく畳んで積み上げたシドの汚れ物はトマコの肩くらいまでになっている。シドの起きる前に着替えたいと思ったトマコはいつもの使用人服を取り出していた。。トイレとここしか扉は無いのでここで着替えることにする。どっちにしてもマレノに渡された服はウルフ仕様なのかスカートは一枚も無い上に下着は辛うじてパンツは可愛かったがブラはさらしが5枚用意されていた。


「巻かなくたって変わんないんだよ!」


一人で文句をつけながらスポーツブラもない今、心もとないので取り敢えずは胸にさらしを巻くトマコ。ここまでくれば立派な男装だ。


「またあのお屋敷に戻されるってこともあるのかなぁ。」


一度は帰っていいとマレノは余裕たっぷりに言っていた。トマコを見ながら豊満な胸を左右に揺らしていたのは絶対ワザとだし。


「あ……。」


最後の結び目を中に押し込もうとしたとき、手が滑ってさらしが下に落ちてしまった。


ガラ……


「え……。」


思いがけず脱衣所の扉が不意に開いてシドが入ってくる。


「顔を洗いますから。」


上半身裸のトマコは突然の訪問者に胸を隠すことも出来なかった。


「……顔を洗いますから!」


シドが気怠そうに二度目にそう言ったとき、それがトマコに横に寄れという意味で有るとやっと理解できた。そこでやっと胸を腕で隠して横に退いた。


バシャバシャと顔を洗ったシドはタオルで顔を拭くとにっこりと笑って鏡で自分の笑顔をチェックした。多分、毎朝の習慣なのだろう。それが終わるとまた脱衣所の扉を閉めて出て行ってしまった。


「……。」


なんだ、今の。私、叫ぶとこだよね?とトマコは呆然。取り敢えずこんなかっこのままでまたシドが入ってきたら嫌なので素早くさらしを巻いて服を身に着けた。そこでトマコは鏡に映る自分を見る。


「いくらなんでも……。乙女を馬鹿にしすぎている……。」


まだまだ短すぎる頭がわびしい。今までのことを思い返してもちょっと私のことを馬鹿にしすぎていないか?とトマコは思う。


「みてろぉ……。」


なんだかわけもわからない闘志が湧いてくるトマコは気合を入れながら拳を握った。ゼッタイ、シドの思い通りになんかさせてやるものか。


シドがトマコをどうするつもりかとか、何をしようとしているのかとか、そんなことは最早トマコにとってどうでもいいように思えた。ただ、シドに何か仕返ししてやりたいとトマコは強く想ったのだった。






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