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トマコと帝国の魔法使い  作者: ちくわ犬
第一章

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トマコと結婚問題

パーティの次の日からウルフの甘味補給係はトマコの役目となった。今度は堂々と仕入れることができるのでウルフもご満悦だった。周りのものは噂を聞きつけてはトマコにと甘いもののプレゼントを山の様にそろえるウルフを「トマコにメロメロ」と受け取っていた。


その日の晩もトマコはウルフの寝室から帰ってきた。一度モリスンが豪華な部屋に移るように言ったがあまりの待遇にトマコが引いてしまい、逃げる準備まで考えたのでモリスンもそれ以上は腫れ物に触るようにトマコに接していた。ネズミはどこかで食べ物が調達できるらしく以前みたいに始終ポケットにはいない。しかしこうして一日の終わりにトマコの部屋に来てお喋りしに来ていた。


「おい、本当にマッサージして帰ってるだけかよ?」


トマコの帰りをベットの上でちょこんと待っていたネズミは尋ねた。日ごとにウルフの夜の寝室から帰ってくるトマコの帰りが遅くなっていた。無理もない。お菓子を一緒に食べさせられているのだ。初めこそ飛び上がって喜んだトマコだが節度の無い甘党のウルフに付き合っていると顎の奥が痛くなってきた。


「ポテチ食べたい……。」


「へ?」


「実は……。」


ここで関を切ったようにトマコが愚痴りだした。だってネズミが毎日来てくれないもんだから鬱憤も溜まっているし。ウルフの秘密だって他の人には言ったら殺されちゃうし。話を聞いたネズミはパーティの一部始終を聞き終えたうえで腹を抱えて笑い出してしまった。


「ほんと最悪だったんだから。」


「ヒー、ヒー。トマコって期待を裏切らないな!」


「それっていい意味じゃないよね。……ちょっとまって。ネズミだから話しちゃったけど、あんたしゃべれるじゃん……しかも口軽そう……。」


「え、俺?なんだ、気付かなかったのか?俺の言葉が通じるのは「レント」だけさ。トマコはそうなんだろ?」


「なに?その「レント」って。」


「言葉の壁を破るものってこと。トマコ召還されたんだろ?召還されてきた奴ってのは言葉が誰でも通じるんだ。」


「え?でもカッシードとは話しできなかったよ?」


「カッシードは極端に無口なんだよ。トマコの言葉は理解してただろ?」


「そう言えばそんな気も。」


なんだかカッシードを思い出してトマコは悲しくなった。あの後カッシードはどうなったんだろう。


「ねえねえ、カッシードってどうなったのかな。殺されてなんかないよね?」


「あいつは貴重な品種だから暴れでもしなければ大事にされるだろう。」


「……だったらいいけど。あんなに素直で可愛かったもん。大丈夫だよね。」


アレが可愛いってんだからこいつの美的感覚は理解できない。ネズミにとってトマコもまた不思議生物だ。あのウルフを相手にしても色めきだった態度さえ見えなかったトマコって宇宙人。


「はあ。なんだか悲しくなってきた。」


そう言うとトマコはいつもの様にベットに突っ伏して寝てしまった。そんなトマコをちょっと「可愛い」と思うネズミは自分も不思議生物に近づいてきたかと思うとゾッとしながら部屋を後にした。



*****



例のパーティが終わってから数日経って、トマコの周りが俄かに騒がしくなってきた。有無を言わせずにマレノはトマコをウルフの寝室に近い部屋に移したし、屋敷の仕事を一切させてくれなくなった。その分暇になるワケもなく、マナーを教わるべく教師が付けられた。この世界は義務教育が無い様で一通り算数と国語の出来るトマコにマレノは舌を巻いていた。語学に至っては不思議となんでも読める。書く方も伝えようとすると問題なく書けるようだったので勉強の必要より学者になれるとまで言われてはさすがにトマコも「ちょっとした事故です。」と訳の分からん謙遜した。しかし、何しろ立ち場が「愛人」で13歳。歴史は様子を見ることにしてマレノは取り敢えず「マナー」だけ教育するように決めた。こんなに出来るならどこかの養子に入れて「本妻」にするかとマレノは本気で考えだしていた。


「なんだか急にここに居ずらくなった感が有るのは気のせい?」


誰の趣味だかヒラヒラでポエミーでリボンでピンクのバラが飛んでる壁紙が施された豪華になった部屋で隅っこに立てかけられた不似合なデッキブラシを遠い目で見ながらトマコはつぶやいた。


最近のこの屋敷での自分の扱い方が正直怖い。


「ああ。あの狭くてギシギシいうベッドが恋しいよう。」


そりゃあ、トマコだっておいしいものが食べれて綺麗な部屋に住めたら言うことなしなんだけども。でも明らかに皆が自分に「何か」を期待しているのだ。美味しい話には裏がある。絶対このまま上手く行くわけがない。思わぬどんでん返しが有るに違いない。……庶民の感かトマコはそんな風に今の状況を捉えていた。


だから、マレノに呼び出された時にはちょっとした悪い予感がしてモリスンに促されて嫌々部屋に足を踏み入れたのだ。


「貴方はまだ……そうねぇ。幼いくらいだけど、ウルフィには早くお父さんになってもらいたいのよ。」


そんな感じでマレノはトマコに話を切り出した。


「はあ。ウルフ様、ご結婚なさるんですか?」


「やっぱりトマコは結婚したい?あなた、思ってたより賢いから実はその線も考えてたのよねぇ。」


「へ!?どうして私の話になるんですか?]


「だって、トマコとウルフィの子供が早く見たいのだもの。」


「……。……。……。」


その言葉でトマコはようやく最近の屋敷の様子が思い当たった。

調理場のザットンさんは「おや、若奥様。」と自分のことを呼んでいたし、モリスンは毎晩ウルフの部屋に入るトマコをいちいちカレンダーに花丸をつけて確認していた。



まさか。


この人たちは本気で私とウルフ様を結婚させる気なのでは……。


ついつい豪華になる食事に食い意地はって付き合って逃げるタイミングを逃した自分を張り倒したくなるトマコだった。



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