トマコお披露目会4
二日目はいろんなメイクをさせられた。
つけまつげ、爪の手入れ、眉を整えられ、最新だと言う糸で顔の産毛を剃られた。
メイクはこれまたマレノの指示にしたがい、あれこれとして見てはやり直す。途中カツラの微調整が入ったりとこれまた忙しかった。
そして、三日目、とうとうマレノの努力を費やした一押しトマコが出来上がったのだ。
「す、すごい。」
ここで初めて鏡を見せてもらったトマコが見たものは紛れもなく美少女だった。
「私じゃないみたい。」
「ふふん。私の手にかかればこんなものよ。」
隣では勝ち誇ったマレノがトマコを一回りさせて衣装のチェックをしていた。
「やっぱり後ろのリボンが長かったかしら。ミゼット!こっちに来て!」
マレノが余裕の最終修正を行っている隣でトマコは奇妙な気持ちになっていた。
だって
これ、
誰?
確かに目の前の鏡に映った人物は美少女だ。しかし、トマコの面影なんてのも一切感じられなかった。
これってトマコでなくってもこうなる?そうなるね。と断言できそうだ。胸だってパッドを何枚も入れられたし靴だって恐ろしくヒールが高い。トマコは着ぐるみに入った気分になった。
「美少女戦士の着ぐるみ……。」
そう考えると何だか気持ちが落ち着いた。お世話になっているウルフの為だ、何かウケる一発芸は無かったか……。
後ろでいそいそとマレノが指示を飛ばす中、トマコはそんなことを考えていた。
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「いい?あなたは黙ってウルフィの傍にくっついてるのよ。ひと時だって離れちゃだめよ。」
パーティの直前にトマコはマレノに脅されていた。トマコはコクコクと頷くしかない。
「ウィー。マダム。」
なんとなくそんな気分になってトマコも答えた。取り敢えずここを乗り切らないとマレノに呪い殺されそうだ。そのくらいトマコの準備には気合が入っていた。
「あ~。ウルフィちゃんの反応が楽しみ!トマコもウルフィに「かわいい!愛してる!]って言われたいでしょ!さあさあ、ウルフィちゃんのところに行きまちゅよ~。」
なぜか超ハイテンションのマレノには突っ込みどころが満載だ。トマコは立ってるのだけでも疲れる。それでも背中を押されてウルフの部屋へと向かった。
「じゃ、じゃ~ん!!」
マレノの口から出た効果音と共にウルフの部屋のドアが観音開きに開け放たれた。
「うおっ。」
窓の前に佇むウルフを見てトマコが驚いて声を上げた。いつも居るだけで美男子だったウルフは催事用の白の軍服を着こなしていた。滑らかな琥珀色の髪はオッドアイを隠す為か軽く横に流されていたが美しい瞳は隠しようもなく魅力的だった。ここは天国か、二次元世界かと思うほどにウルフは男らしく美しかった。
「母上、それは?」
「……。」
だから、ウルフに「それ」呼ばわれされてもピンとこない。
「ちょっと!私の最高傑作を前に!」
「……トマコ?」
「そうよ!ウルフィちゃんのトマコよ!」
「なんでちゃん付けなんだよ。止めてくれよ。……しかし、なんか、トマコは人形みたいだな。」
美少女戦士のな。トマコは心の中でため息をつく。
「そう!お人形みたいにかわいいでしょ!? ほら、トマコ!ウルフィちゃんの隣に!」
「……。」
マレノの声で操縦されるロボットのようにトマコは足を右左と出しながらウルフのところに向かった。
「……。」
ウルフ無言。沈黙がトマコを殺そうとしていた。殺すならいっそ、一息に!
「ヌォ……。」
「!!う、ウルフィちゃ……ん。まさか……。」
ウルフの腕にトマコの手をかけさせようとしたマレノが青ざめた。
「駄目だ。痒くなってきた。」
「そんなぁ!!」
「パーティは不参加。無理。」
「ちょ、ちょっと待って!普段のトマコなら大丈夫なんでしょう?」
「それは……。」
「仕方ないわ!!こうしましょう!!」
マレノの奇抜な発想にトマコとウルフは目が点になった。
「まさか、これで今日一日乗り切るんですか?」
やっとこさ絞り出したトマコの声を聞いてもマレノは止まらなかった。
「何とかするのよ。」
恐ろしい形相のマレノに誰が反論できただろうか。




