トマコお披露目会3
昨日トマコがピカピカにした玄関の一つから一行が外に出ると門の外に車が待っていた。
車?
「何これ?」
トマコが驚いたのも無理はない。その車もどき(またかよ)はタイヤらしきものが見当たらない。
「リニア?もしかしてここ未来?」
てっきり昔っぽかったのにとトマコ。だから異世界なんだってば。
「車を見るのは初めてなのね。まあ。それもそうね。この車は最新だからこの国で走っているのは5台しかないもの。」
ビンボーな子供を諭す様にマレノがトマコに言い含めた。なんだかんだ言って彼女は子供らしいトマコに好感を持っているようだ。自分で言っちゃあなんだがあの息子が気に入っているという娘が普通であるわけないと思って身構えていたからでもある。
「ほへ~っ。」
車体の(だから車がないっての)裏側を覗き込んだトマコは面白そうに観察している。マレノはそんなトマコを見て子猫みたいだと思った。
「さあ、時間が惜しいわ。もう行くわよ。」
「ほぎゃっ。」
ふたたび大きな侍女に横腹を抱えられたトマコを見てマレノもまた「やっぱりカエルかしらね。」と思うのであった。
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連れられてきた本邸は殺風景なウルフの住まいと違ってゴージャスでロココだった。フリフリでピンクでリボンだったともいう。ここにきてトマコはイヤ~な感じが舞い戻ってきた。気のせいじゃない。モリスンが選んできたドレスはきっとこのセンスからきているんだと確信が有った。
「あの~。私、あんまし特技は無いので。」
余興は簡単なものしか覚えれません。ソフトのエースだって言っても肩の強い子はいくらでもいたし、ほかは昼寝くらい。だから勘弁してくださいとトマコは切に願った。
「貴方はウルフィの隣をイソギンチャクみたいにくっついてたらいいのよ。いい?離れるんじゃないわよ?分かったらここにきて立って。採寸が終わるまでは動いちゃダメ。」
そう言うとマレノは少し離れた椅子にトマコを見ながらどっかりと座った。手にはいろんな紙を持っていてトマコを見ながら一枚一枚めくっていた。マレノが座るのを合図に後ろで控えていた侍女たちにトマコは押さえつけられて空気の薄い金魚のように口を上に向けてパクパクとしていた。採寸が終わるといろんな衣装が次から次へと部屋に運び込まれてマレノが選んだ数種類をトマコは着せられていった。
「し、死ぬ……。」
目まぐるしい早着替えにトマコは疲労困憊していたがマレノは次々と侍女たちに支持を出す。途中、パンとジュースを少し口に突っ込まれ、やっと衣装とカツラ、装飾品が決まった頃には夜も大幅に過ぎていた。
「しょうがないわね。今日はここまで。明後日までに衣装は寸法を完全に治して置いてちょうだい。アクセサリーは丁寧に磨くのよ。カツラも本物に見えるようにサイズを微調整するように。靴はサイズの合うものに交換ね。」
てきぱきと其々にマレノが指示を飛ばす。その姿は女軍師。
「さあ、トマコ。お疲れ様。少し過ぎてしまったけれど夕食にしましょう。」
立ちっぱなしだったトマコはヘロヘロ。根性で立っていたに過ぎない。すかさずやってきた大柄な女の人に抱きかかえられてやっと食卓に座らされた。
「どうしたの、このくらいで根を上げてちゃだめよ。食べないと明日が持たないわよ。」
言ってることは真っ当だが誰のせいだか。恨めしそうにトマコはマレノを見たが、マレノは飄々としている。明日はどっちだ~とどこかのボクサーなどを思い出しながらトマコはパンをノロノロと口に運んだ。そのうち……トマコは食卓におでこを引っ付けて眠ってしまったのであった。




