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トマコと帝国の魔法使い  作者: ちくわ犬
第一章

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トマコお披露目会1

「なんかさ、モリスンさんの私を見る目がちょっと、怖いんだよね。」


「ちょっと聞きたかったんだけど、お前、ウルフに毎晩呼ばれて……。」


「ああ、あれ!?最初の晩にオネショ疑惑を被せちゃったからお詫びに望月家秘伝のマッサージをしてあげたら気に入ってさ。うちのじいちゃん仕込みでわたしってば結構うまいんだよ~?」


「……。まあ、でもあの有名な女嫌いがお前に体を触らせているってのは事実だな。」


「どうせ私の女度は低いですよ。」


「このまま上手いことウルフの情……恋人になれれば今よりもっといい暮らしが出来るぞ?」


「え~。無理無理。だいたいイケメン過ぎて現実味無いもん。子供だからいいんだってウルフ様も言ってた。」


やたらとウルフと仲良くするように勧めてくるネズミに戸惑いながらもトマコの頭ではウルフの顔を思い浮かべるだけで許容範囲オーバー。男前すぎて真正面から見たことすらない。そんなことしたら蛇に睨まれたカエルのごとく動けなくなってしまうような気がした。お子様トマコにとってウルフは空想の世界の産物に近い。


「……周りはそうは思ってないけどな。」


一方ネズミはトマコが人を欺くような性格でなかったことに安堵しながらもここでの生活を安定させたい気持ちが上回っていた。屋敷の噂ではトマコはとっくに「ウルフ様の愛人」扱いだったし、権力のある男にトマコが囲ってもらえればそれに越したことは無いと思った。ウルフィファルと言えば王を守る親衛隊で一番の歳若であり腕利きだった。その上家柄も由緒正しい。多少性格に難があろうともそこはネズミとは関係の無い次元だった。「案外トマコはやるなあ。」と自分のことしか考えないネズミはこっそりニヤッと笑った。


「ふあああ。眠い。お休み……。」


疲れたトマコはそのままベットに横たわった。


「お休み。」


ネズミは言葉を返したがきっとトマコの耳には入っていないだろうとトマコの部屋を後にしていった。




*****



トマコの筋肉マッサージがウルフのささやかな楽しみに成りつつあったある日、本家から乗り込んできたウルフの母親マレノは応接室の豪華な椅子にどっかりと女王様の様に体を鎮めるとウルフを呼び出していた。


「この屋敷でパーティを開催します。」


いつ言い出そうか。え~い言っちゃえ。

多分そのくらいの軽さのある決定だった。5年前夫が亡くなったマレノは一族の長の仕事をとっくに掌握していたし、不良(ある意味?)息子のことを相談する相手に飢えていた。そんな女王様に忠誠を誓っているモリスンも冷静そうに見えてレッツラゴーな浮かれ気分でその提案を聞いていた。


「俺は出ない。だいたい何のパーティって言うんだ。本邸ですればいいだろ。」


当の本人たちの気持ちも余所にどんどんと周りは期待を膨らませていた。モリスンもウルフの母親も諦めていた「後継ぎ」に夢見る毎日だし、トマコが来てから軍隊さながらの屋敷のピリピリした雰囲気が和んで使用人たちもこのままトマコがここに居ることを望んでいた。そうなるとウルフの母親はこの機会にウルフの「正常」さを対外に証明したくなった。「女嫌い」「女アレルギー」までは何とか許せてもウルフの裏の噂では「同性愛者」「変態」など耳が痛いものが多かった。「女」を触っても大丈夫なウルフを見せてやりたかったのだ。


「貴方もパートナーがいるのだからよろしいでしょう?」


「ええ?いるわけないだろ。蕁麻疹が出るのに。」


病気を理由に公のパートナー同伴行事は難なく避けていたウルフは横暴な母親に口出しを試みた。


「オダマリ!」


母親はギロッと睨むとウルフの頬に軽くキスをした。


「ヌォ~~~!!」


おかしな奇声と共にウルフの顔に蕁麻疹が浮きでる。


「まったく、それが実の母に対する反応か!」


試してみて悲しくなったマレノは顔を掻きむしる息子をイラッとして見た。どうしてこうなったんだ?アイツ(マレノの夫)が浮気したからか?10歳ごろまでは平気だったのに。私のおっぱい吸って大きくなったくせに蕁麻疹だとぉ?ふざけてやがる。と、まあ。そう思っても仕方ないだろう。


「いい?あなたが連れてきた娘がいるでしょう?当日は私が淑女に仕立て上げてあげるから安心なさい。あの子は大丈夫なんだからパートナーには困らないでしょ?」


複雑な思いも交じって殺人的な視線でマレノはウルフを追い詰める。軍のトップともいえるこの男をここまでビビらすことのできるのはきっとマレノしかいない。


「はあ。」


ウルフの気のない返事を強引に「イエス」と受け取ったマレノの頭はトマコをどう美しく仕上げるかでいっぱいになった。一方ウルフはピンクのドレスを着せられたおかしな恰好のトマコを思い出してしまって、ちょっとふいてしまった。もちろんマレノにばれないように。


「では私は失礼するわ。予定なんて入れて逃げたりしたらどうなるか分かっているんでしょうね?」


凄んでウルフを恐喝したマレノは息子の顔に怯えの色を見て取ると満足げに席を立って屋敷を去って行った。



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