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王女が欲した黒毛のペット

かる~い感じです。すいません。

トマコは目を何度も擦った。


だってこれが現実だとは思えなかったから。


自分は祖母の家で昼寝をしていただけだった筈なのだ。


なのに……


「あれぇれぇ?これって人間だよね?」


じっと自分を見つめているのは目が覚めるほどの美少女。

はちみつ色の金髪に青葉を思わせるような緑の瞳。透き通った白い肌は夏休みに海で潜って遊んだトマコとはえらい違いでまるでテレビのCMの女優さんみたいだと思った。


「毛並みは黒だけど……やばっ。」


ちょっと顔の割に抜けた声を出している目の前の超美少女はおとぎ話のお姫様みたい。そんなことを呑気に思っているトマコはただ瞬きの回数を増やしていた。


その直後になぜかトマコは大きな箱に入れられていた。堅い素材のそれは容易にトマコをそこから出さないように作られているらしかった。これは夢か。いやいや、夢でしかないだろうとトマコは一度目を閉じてみることにした。


どのくらい経ったのか眠ることに失敗したトマコの入った箱の蓋が開く。


「おい。」


今度は厳しい男の声がして思い切り鼻を摘ままれた痛みに目を開けることになった。


眠れなかったからだとトマコが目を開けるとそこにはこれまた絶世の美女が……いや、声の低さからいくとこの人は男の人なのだろうかとトマコは目の前の人物を見分した。


「アホ面してないで。自分がどこから来たのかわかりますか?」


美人の何気なさそうな冷たい言葉をスルーしながらトマコは取り敢えず答えた。これが夢の中の話しであったとしても迷った時は自分の名を言って交番で……。


望月苫子もちづきとまこです。あの……住所は……。」


ここでトマコは考える。眼の前に居るのは明らかに外人。自分はどこかに間違って来てしまったのでは?


「日本。ジャパン……。」


耳にした言葉は通じていたというのに律儀に英語で答えようとするトマコはよほど混乱していたに違いない。


「ちょっと立っていただけますか?」


そんなトマコに目の前の美人(性別?)は命令した。混乱にあるトマコがそれに反発できるわけもなく、立つとホットパンツから出た擦り傷だらけの膝小僧が目立っていた。「ふうん」と興味無さそうに美人はトマコを眺めた。


「異世界人ってところでしょうか。運が悪かったですね。違法召還なので元の世界には帰れないでしょう。まあ、まだ幼いようですから順応も早いかもしれませんし。」


ちんぷんかんぷんな事を言われてトマコも不思議顔。昼寝から覚めたらこんな状態じゃあ誰だって訳が分からない。


伊勢怪人いせかいじんって?」


トマコが勇気を振り絞って聞くのに美人は面倒くさそう。


「まあ、簡単に言いますとね。多分貴方が初めて見た綺麗な女の子が頭の軽い王女様で、黒毛のペット欲しさに違法な召還を行って、貴方をここに呼んだということです。」


「ぺ…ペット……。私、ペットにされちゃうんですか?」


「いいえ。人間なんかペットにしたら国民から総スカンでしょうね。でも黒髪なんて珍しいものだから王宮に置くこともできない。で、私が呼ばれたわけです。」


「え…と?」


トマコの中では謎のエビ怪人がマントをつけて犬の散歩していた。トマコの想像力が安直だろうと貧しかろうと突っ込む人は誰も居ない。


「まあ。おバカな王女様の後始末をつけに来たってことです。」


「……。」


「後始末」と言う言葉にトマコはびくりと体を揺らした。昨日見たドラマの「後始末」と「バラす」の意味は命を片づけるって意味だ。私、わけわからないうちに死亡フラグ立ってる?そう、トマコは「フラグ」について考えてみた。だからと言ってなんの解決にもならないのだが。縋る気持ちで目の前の美人になけなしの笑顔を送ってみると予想通りの冷ややかな視線。ちょっとは空気を読んでもらいたい。そんな重々しい中トマコが頭をひねって考えた言葉は


「取り敢えず、寝てもいいかな。」


無駄な抵抗だと思ってもそう信じたいのは仕方ないことだった。

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