第3章 鋭い視線
説明章みたいになってしまいました。
見辛かったらすいません…。
周りの目がチクチクと痛い。
「………安立さん」
「何だね?火野くん」
「………何か、クラスの目が恐ろしいのですが……?」
「あぁ………。それは、咲姫ちゃんと仲良くなった人の宿命というかなんというか…」
「……なるほど」
さすが咲姫。
高校生活一日目からもうファンがいるのか…。
ここは1年7組の教室。
悠、咲姫、緋奈、崇、紫衣の5人は雑談をしながら普通に教室に入ったのだが、クラスメイトは咲姫を見るなり目の色を変えた。
それもそのはず。
咲姫は、中等部に入学式した時から人気者だったのだ。
美少女で、誰にでも優しく、そして『天才』と呼ばれた咲姫。
そんな彼女と一緒に教室に入ってきたのだ。
羨ましい…というより、恨めしいと言う感情なのだろう。
悠も中等部時代、ほぼ毎日咲姫と一緒に学校に来ていたので、そりゃあもう酷いものだった。
…毎日、家に出入りしているなんて、絶対に言えない…。
悠はブルッと震えた。
「僕達も、中等部の時はこんな感じだったんだ~。
ずっと咲姫ちゃんといたからさ~」
「あぁ…。初めは気が滅入りそうだったが、もう慣れた。
……ん、先生が来たようだ」
紫衣はそう言い、きちんと座り直す。
前を見ると、丁度飯島が教室に入ってきたところだった。
「おぅ、席つけー。……ひぃ、ふぅ、みぃ…うし、全員居るな。
ゴホン……。えー、今日から7組の担任になる飯島だ。よろしく」
そう言って自己紹介をする飯島。
その様子を見て、何となく悠は隠れてニシシと笑ってしまった。
「分かっていると思うが、高等部からは『ガード』になるための実践訓練が始まるからな。心しておけよ?
……じゃあ、30分後に始業式が始まるから、それまで親交でも深めてろ。」
この【亜利乃学園】は、人を食らう化物、【植獣種】に対抗するための兵士を育てる学園だ。
その兵士のことを『ガード』と呼ぶ。
ガードは、自分の『神才』に合った武器を使い人々を守る。
では、『神才』とは何か。
神才は自分に合った武器に選ばれ、使いこなす力のことを言う。
例えば、『片手剣の神才』を持つ者は、片手剣に選ばれ使いこなすことができる。
「……あー、忘れてた。荒地、朝花それと火野。ちょっと来てくれ」
教卓の椅子に座っている飯島は悠たちに手招きした。
「悠くん。呼ばれてるよ。行こう?」
「あ、うん」
咲姫は悠を引きずって、飯島の方へ行く。
「「「いってらっしゃーい」」」
後ろから緋奈、紫衣、崇の声が聞こえた。
◆◇◇◆◇◇◆
悠と咲姫と、荒地という男子は教卓の前に横一列で並んだ。
「えーっとだな…。
これから、お前達に今年度初の『ジャックス』としての任務をしてもらう。
……まぁ、火野は『ジャックス』じゃないが……」
『ジャックス』
それは学生なのだが、即戦力となる力を持つ者の事。
いうならば、学生の『ガード』の事を指す。
咲姫は中等部の時からジャックスとして活躍していた。
多分、この荒地という男子も、中等部時代からジャックスだったのだろう。
しかしこの男、さっきから悠の事をずっと睨んでいるのだが…。
「内容は、現在【植獣種】の大群がここに向かって来ているらしい。
それを、今から迎撃しに行く。それが、今回の任務だ。
【植獣種】のレベルは、LV.3が1体、LV.2以下が合計50体以上…。まぁ、楽勝だな。」
飯島が手元の資料を見ながら言う。
【植獣種】はLV.1~LV.5に分類されている。
LV.1が一番弱く、LV.5が一番強い。
見た目も、LV.1は狼や犬など小型なものだが、LV.5までなると巨人、大蛇など大きなものになる。
LV.5はジャックスや普通のガードでは倒せない。その上の『キング』と呼ばれる最高ランクの精鋭兵でも倒せるかどうかと言うレベル。
今、この都市を回しているのはその『キング』と呼ばれる人達である。
「んで、荒地は俺のチームに。朝花もチームに入れ。
……火野は単品で」
「はい」
「分かりました」
「了解」
「……あれ?先生、始業式はどうするんですか?」
咲姫が疑問を口にする。
「あぁ、サボってもらう。…先生公認だから大丈夫だ!!」
胸を張る飯島。
……いばんなよ。
「それじゃ、準備ができたら本部室に集合な」
そう言って飯島は去って行った。
飯島の背中が見えなくなった時、初めて荒地という男は悠たちに対して口を開いた。
「……おい、咲姫。こいつは誰だ?」
荒地という男は悠を指差しながら咲姫に尋ねる。
「あ、えっとね、
その人は火野 悠くん。私の幼馴染なの。…悠くん、この人は荒地 直哉くんね。ジャックスの任務の時に知り合ったの」
咲姫は笑顔で答える。
「……どうも」
軽く頭を下げるが、荒地はスルーして咲姫と話している。
「幼馴染何て居たのか?」
「うん。言ってなかったけ?」
「あぁ。……幼馴染、ねぇ…」
そう言って、荒地はジロジロと悠を眺め回す。
この荒地という男、よく見るとイケメンだった。
少し茶色い髪の毛に、同じ色の瞳。顔のパーツ一つ一つが綺麗な形をしていて整った顔立ちだ。
「あの…?」
「君、ジャックスでもないのに何で任務に参加できるんだ?」
荒地は悠の言葉を遮って言った。
「えっと…」
「……まぁいい。どうせ俺よりも弱いことは分かっている。
咲姫の幼馴染だからと言って調子に乗るなよ?」
そう言うなり、荒地は去って行った。
「はぁ?……意味分からん…」
ポツリと悠はそう呟いた。