第2章 新たな出会い
「……よし、今日は卵焼きを作ろう‼」
………この一言が、始まりの合図だった。
◆◇◇◆◇◇◆
ただいまの現状。
悠は、床に正座して、お説教されていた。
「……だ・か・ら!何でいっつも冷凍食品しか食べないの!?」
「いや……あの、」
「いや、じゃないんですよ!!冷凍食品ばっかり食べるのは、すごい体に悪いの!!それに、冷凍食品は料理じゃありません!!!」
「は、はい…」
目の前で、説教をしている女の子は…悠の幼馴染の朝花 咲姫。
咲姫の髪の毛の長さは肩ぐらいまで、肌が白い。目はぱっちりとしていて、まつ毛が長い。
鼻筋が綺麗に通っていて、手足はスラリとしている。
いわゆる美少女。
それに加えて、器量もいい。性格も良い、そして天才。だからモテるのだった。(しかし、本人は自覚なし)
咲姫は、ほぼ毎日毎朝、悠の一人暮らしの様子を見にきてくれているわけなのだが…
「悠くん!」
「はいっっ!?」
突然名前を呼ばれ、背筋を伸ばす。
「昨日の晩御飯は何でしたか?!」
「…えっと…覚えてな「ゆーうーくーんー?」
「……………春巻きでした」
「冷凍食品の?」
「……はい」
それを聞いて、咲姫は爆発した。
「何でいっつも冷凍食品なんですかぁぁ!!!??」
ドッカーンという音が聞こえた気がした。
「あわわわわ」
「私いっつも言ってるよね!?『レンジでチン♪』はダメって言ってるよね!?たまにはいいよ?でもさぁ、毎日はダメだよ‼」
「あ、あ、あの」
「ダメです‼」
「は、はい」
その後、たっぷり一時間怒られ涙目になりながらも何とか解放された。
何故こんなになったのか。
…至って簡単。
いつも通りに見にきた咲姫に、冷凍食品の卵焼きを、朝ご飯として食べようとしたことが知られ、『冷凍食品オンリーはダメ!!』と、いつも通り説教された…。と言うことでした。
◆◇◇◆◇◇◆
朝の騒動も収まり、一緒に登校した悠と咲姫は、外掲示板に貼り出された、クラスごとの名簿を見ていた。
今日から高校生。
…と言っても、中等部から高等部に行っただけなのだが。
「……悠くん。何組?」
「…7組」
悠がそう答えると、咲姫が嬉しそうに笑った。
「っ!?本当?良かったぁ…。私も7組‼」
「私も7組ーーーーー!!」
突然、クラスの名簿を見ていた悠と咲姫の後ろから、誰かが叫びながら突っ込んできた。
「緋奈ちゃん!?」
「そうだよ!…っていうか咲姫ちゃん咲姫ちゃん!!7組でしょ?私も7組だったぁ!!って…」
突っ込んできた謎の少女は、咲姫に高テンションで話しかける。そして、咲姫の隣に居た悠に気が付く。
「…誰ですか?咲姫ちゃんの知り合い?」
首を傾げる女の子。
ポニーテールで元気一杯というイメージを持つ女の子だ。
「あ、緋奈ちゃん。…えっとね、この人は…」
「火野 悠です。咲姫の幼馴染。」
「…えっ!?咲姫ちゃん幼馴染居たの!?初耳~‼
あ、私は安立 緋奈!咲姫ちゃんとは中等部で同じクラスだったの。よろしくね‼」
悠と咲姫は、中等部ではクラスが違った。
だから、当然悠と緋奈もクラスが違うわけで、お互いを知らなくても仕方が無い。
「よろしくお願いします」
悠もそう言い、握手をする。
その後、三人で雑談をしていたのだが…
「緋奈ちゃ~ん…。どこ行った~?」
「バカ緋奈!!…どこ行ったのよ!?」
と言う緋奈を呼ぶ男女の声が聞こえてきた。
「安立さん?何か呼ばれてるよ?」
悠は、咲姫とじゃれあって今のが聞こえていなかったであろう緋奈に声をかけた。
「んにゃ?誰?……あ、崇くんと紫衣ちゃんだ。おーーーーい!!こっちだよぉ‼」
そう言いながら、大きく手を振る緋奈。
突然緋奈の声が聞こえ、一瞬戸惑ったが、緋奈を呼んでいた2人はすぐにこちらに気付き、走ってきた。
「バカ緋奈!!どこ行ってたのよ!?」
「あー…やっと見つけたぁ…」
相当全力で走ってきたのだろう。2人とも肩で息をしていた。
「全く‼何ですぐにいなくなんのよ!?」
「にゃはは…。ごめんね」
「まあまあ。…あ、朝花。久しぶり!……そっちの人は?」
緋奈を怒っている女子をなだめ、男は悠達に声をかける。
その問いに咲姫が答える。
「あ、崇くん。久しぶり。
…この人は私の幼馴染の、火野 悠くん」
「あぁ、この前言ってた幼馴染くん?…初めまして、石塚 崇です。
よろしく!」
崇と名乗った男は、背が高くて爽やかな感じを出す人だなぁと悠は思った。
そこに、さっきまで緋奈を怒って居た女子が入ってくる。
「私は華原 紫衣だ。…久しぶりだな、咲姫。
……咲姫の幼馴染と言ったな?」
この人も背が高い。ただ、崇は爽やか系なんだが、紫衣はパリッとしている。
髪は咲姫よりも少し短い。
この二人も、咲姫と中等部の時、一緒のクラスだったらしい。
「はい。2人とも、よろしくお願いします。
…2人も7組?」
「あぁ。いい感じにみんな揃ったね~」
「ですね」
崇はぐるっと見渡し、そう言った。
「……では、とりあえず教室に行くか?」
「行くぞー!オー!!」
周りからみれば、この集団が特に騒がしい集団だった。