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侵略者

この物語はフィクションです。

しかし、いつか皆さんの身にも起こりかねない紛れも無い現実なのです。

「はあ……」

 真田は、夕食中に溜め息をついた。完全に箸が止まっている。夕方の事が頭から離れないのだ。

 突然の頭痛、奇妙な声、これらの現象が、公園でカプセルを拾って開けようとした瞬間、真田に襲い掛かってきたのである。そして、真田は見てしまった。小学生の頃の自分の姿を。勿論、幻覚である事は間違いないが視界に映っている幼い自分を見ていると、当時の公園での記憶が蘇ってしまいそうで、恐かった。思い出してしまうと、自分自身が壊れてしまうからだ。

 あの後、結局カプセルは家に持ち帰ってしまった。カプセルの中身、正体、カプセルに浮かび上がった「87」の数字。それら全てが、好奇心旺盛な真田にとっては興味深く、是非家で調べてみたいと思いたったからかもしれない。

 しかし、今になって真田は思う。あの時の俺はどうかしていたと。公園で起こった不可思議な現象の原因は、紛れもなくカプセルなのだ。そんな危険なカプセルを家に置いておくとなると、安全に暮らすことすら難しくなる。あのまま公園に放置しておけば良かったのだ、と今更ながらに後悔する。

「どうしたの?食べないの?」

 母、晴美が不満そうに尋ねてくる。現在、父が宇宙を探索中のため、晴美と二人暮らしである。

「いいや、ごちそうさま」

 真田はそう言って食器を片付けた。あんな事があったのに、食欲が沸くはずも無い。

「そうだ、今度父さん帰ってくるかもしれないんだって」

 部屋を出ようとする真田を晴美が呼び止める。

「え?いつ帰ってくるの?」

「詳しい事は分かんないけど・・まあそのうちじゃない?」

 晴美の適当な返事に、真田は呆れる。へえ、と返事を返して部屋を出た。

 真田の部屋は2階にある。階段を上がって、部屋についた真田は机に向かっておもむろに勉強を始めた。

私立受験まで半年を切っている。来須の言葉に促されたのか、急にやる気が出てきたのだ。

 しかし・・目線がどうしてもカプセルの入ったバッグにいってしまう。いつバッグの中でカプセルがもぞもぞと動き出して、自分に襲い掛かってきてもおかしくない、そんな妄想に囚われて、勉強に集中ができないのだ。

 仕方なく、真田はバッグからカプセルを取り出した。そのままベットに寝転んだ。カプセルには相変わらず、「87」の数字が刻まれている。このカプセルの中身がどうしても知りたかった。しかし、カプセルの外郭は完全に白く、中身は全く見えない。カプセルを開けようとすると公園の時の頭痛と奇妙な声に襲われる。

 このカプセルの事は誰にも口外してはならない、誰にも渡してはいけない、真田はそう決心する。皆がカプセルをベタベタ触って、第二の被害がでてからでは遅いのだ。

 そんな事を思いながらカプセルを見つめていると、瞼が重くなる。

 窓の向こうでは満月が自分を照らしている。真田は静かに眠りについた。



 強烈な爆発音で、真田は目を覚ました。時計を見てみると1時をまわっている。家の近くで何かがあったのだ。嫌な予感がする。真田は部屋の窓を開けた。1キロ程先で煙が立っている。火事か?だとしたらさっきの爆発音は何なんだ?

 真田は慌ててテレビを付ける。何か事故があったのならばテレビでも報道されている筈だ。地元のニュース番組をやっていた。ある俳優の特集をやっている。

 まだ事故のことは報道されていないらしい。仕方が無いので待つことにする。

 ―――20分位待った。自分で現場に足を運ぶ方が早いのでは、という程待たされた。地元で事故があったというのに、俳優とまったりトークしている場合か、と番組に腹を立てる。

 それから10分ほど経ってようやくテレビ画面の左上に、事故に関連するテロップが表示された。

「都内の住宅街で事故発生、ただいま状況確認中」とのことだった。こちらとしては早く寝たかったのだが、事故のことがどうしても気になる。目を離す訳にはいかない。

 しばらくテレビに見入っていると突然場面が切り替わる。待望の事故現場が上空から映っていた。

「先程こちらの住宅に未確認飛行物体が墜落した模様です」とリポーターが興奮気味に話す。

 未確認飛行物体?真田は顔を顰める。次の瞬間、その住宅がアップで映し出された。真田は驚愕した。異様な光景だった。その家にはどこか見覚えがあったのだが思い出せない。

 その家に航空機のような、戦闘機のようなものが突き刺さっているのだ。家は全壊状態である。

「この飛行物体は日本製ではないことから海外、もしくは地球外から飛んできた可能性も・・」

 リポーターが続ける。地球外からだと?真田は身を乗り出す。思わず涙が出そうになる。今まで真田の宇宙人説など誰も信用しなかった。それでも真田はずっと宇宙人の存在を信じてきた。ついにそんな自分が報われるときがくるかもしれないのだ。

 さあ早く出て来い宇宙人、これで俺を馬鹿にしていた奴等を見返すことが出来る!真田は一人、歓喜に浸っていた。

 しかし、次の瞬間真田のムードを壊すような一言がリポーターの口から発せられた。

「尚、この住宅には■■さん御一家が在住しており…」

 リポーターの言葉は真田の耳には届かなかった。というより真田自身が受け入れられなかったのだ。

「在住していた■■徹さん、瑛子さん、智治さんは救急車で運ばれたのですが

いずれも即死だったということです」

 リポーターが軽々しく話す。真田は口を開けたままただ呆然としていた。

 思い出した。あれは……来須の家だ。

 飛行物体の中に人影らしき物が見えた。リポーター達が詰め寄る。中から誰かが出てきた。「宇宙人だー!」誰かが叫びだした。飛行物体から出てきた者が、地球外生命体だということは、真田にも容易に認識できた。手が2本…足が2本、容姿はそんなに人間とは変わっていない。肌と目の色が違うのだ。肌は灰色に近く、目は眼球も角膜も黒く染まっていた。


 なあ・・来須、宇宙人いるじゃねえか…お前が間違ってんだよ…馬鹿にしたこと謝れよ…来須。

 あいつの前で思いっきりそう言ってやりたかったが、来須智治はもういない。






この話で一気に急展開を迎えました。

どこか欠点があったらどんどん御指摘ください(笑)


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