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〜家の妖精たち〜

皆は家のリモコンが気づいたら別の場所にあったりそこまで携帯使ってなかったはずなのに充電が思いのほか減っていたり、お菓子が無くなっていたりしないだろうか。それは妖精たちのイタズラである。

朝の日差しがカーテンの隙間から覗き込みガサガサと音がして目を開けると、枕の横でせっせと3人がかりで枕元にあった懐中電灯をこっそりと運んでいた。あぁ、またやっていると心の中で思いながらまた私はそっと目を閉じた。私には妖精が見える。何を言っているのかと思われるかもしれないが、私は幼い頃から妖精が見えるのだ。幼い頃はみんなが妖精が見えるのが当たり前だと思っていたが、友達に妖精の話をした際に不審がられた為、それをきっかけに私にしか見えないと気付き、それからは家族とその子を除き妖精が見える事は誰にも話していない。私だけの特別な秘密だ。

 妖精がどのような物か気になるだろうから説明しよう。私の考えは妖精は何かの守り神のような物ではないかと考えている。一人一人見た目に違いはあるがどの子も可愛いのは間違いない。でも、世間が思っている妖精のティンカーベルのような空飛ぶ羽はついていないし体が浮く魔法の粉のような物は勿論持っていない。

 妖精は至るところに存在しており色んな事をしている。みんなも一度は経験した事がないだろうか、机の上に置いていたはずのリモコンが無くなっていたり、カバンに入っていたはずのお菓子が気付けば無くなっていたり。みんなはそれを気のせい?あれ食べたかな?と思うかもしれないが私は知っている。それは妖精の仕業だと。私の家にいる妖精の三人組はよくいたずらをする。今日は何をするか薄目を開けながらそっと観察をしてみよう。

 一人は小さな体で私に見つからないように持ってきた懐中電灯をセッティングしスイッチをオンにしている。一人はイチョウの葉っぱを体の前に合わせて持っている。そしてもう一人は画鋲でライトから透けた体の周りを縁取り少しずつイチョウを切っている。そうだ、妖精の服を作っているのだ。器用な事をするなぁと感心してそっと薄めで見ているとリビングから「もうすぐご飯が出来るよ〜」と母の声がした。妖精達は一瞬驚きそそくさとイチョウを隠すと私の顔の前に来て私の顔を笑顔で覗き込んできた。「今から行く」と返事をし扉を開けて妖精達も通れるように少しドアを開けたままリビングに向かった。

 リビングに行くと母は「今日のポテサラなんかピンとこないの、味見してみて」と私に言ってきた。母は専業主婦であり一言で言うとメルヘンな人だ。その為四歳の頃、私が妖精が見えると話しても母はすんなりと受け入れ「素敵ね!ママも見てみたいわ」と言い私にシルバニアファミリーを買ってくれた。そのシルバニアが現在の妖精達の素敵なお家になっている。普通は自分の娘が妖精を見えると十九になっても言っていると妄想癖や精神疾患があるのではないかとと心配したりすると思うのだが十九歳になった今でも私は妖精が見えていると信じてくれている変わった…いやメルヘンな母である。「やっぱり林檎がある方が美味しいね」と私が言うと「パパは無い方が好きだなぁ」とソファーに座り釣り番組を見ている父が口を挟んできた。

 父は私の知っている人の中で唯一私以外で妖精が見える人である。きっと父からの遺伝で私は妖精が見えるようになったのでは無いかと予測している。父は私が初めて妖精が見えると話をした際、とても喜び「心が綺麗な証なんだよ」と言い、同時に「家族以外には絶対に内緒だよ。そうしないと妖精さんが見れなくなっちゃうからね」と当時四才の私にそう言った。きっと周りの子から私が変な子に見られないよう、いじめられないように優しい嘘をついてくれたのだ。私は四人家族で姉がいる。姉は妖精は見えないし信じてもいない。教師をしており現在は一人暮らしをしているため、三人で暮らしている。

 朝食を運び机に座ると私の箸置きに三人の妖精が座り手を叩いている。妖精なのに人間のご飯を食べるなんて世界観壊れるな、なんて思いながら母には不信がられないように小皿に少しずつおかずとご飯を入れてそっと箸置きの所に滑り込ませた。妖精達は口いっぱいにご飯を頬張りニコニコしている。三人のうち一人の妖精は食いしん坊でいつも私があげた分じゃ満足出来ずヨチヨチ父の所へ行き食べ物をねだっている。いつも父は満遍の笑みでご飯をあげ餌付けをしている。この食いしん坊さんを私は「グル」と名付けている。グルは妖精の割にはぽっちゃりしておりいつも何かしら食べている。頭からハチのような触角が出ておりご飯を食べて美味しい時や機嫌が良い時はその触角が揺れてお腹も揺れている為非常に可愛くついつい食べさせてしまう。妖精の健康状態などはさっぱり知らないがこの一六年程一度も病気になったり、痩せたり太ったりしていないため良しとしている。ご飯を食べてお腹いっぱいになった三人組は朝食に出てたみかんの皮をこっそり持って私の部屋に戻って行った。何に使うんだろうねと父とこっそり話しながら三人の後ろ姿を見つめていた。

 悠長にご飯を食べていたら気付くと家出るギリギリになり慌てて私も部屋に行き身支度をした。シルバニアの机に座っている三人に卵ボーロを一粒ずつあげ「いい?今日もおとなしく私の部屋で過ごすんだよ?」と私が言うと両手いっぱいにボーロを受け取りニコニコしながら頷いた。絶対嘘だなと思いながら部屋の扉をしっかりと閉め母が作ってくれたお弁当を受け取り玄関に向かうと「おはよう」とみきが家に来た。

 みきは幼馴染で同じマンションに住んでおり、大学も隣同士の大学に通っている。私が幼い頃に妖精について話をして不審がっていた張本人である。マンションの下に行くなり大和とこうきも下に着いており「うわっ実習の服忘れたから取りに帰るわ、先に言ってて!」と大和は家に戻って行った。「本当にそそっかしいよな」とこうきと三人で話しながら先にマンションを出た。私たち四人は小学校の頃からの幼馴染で私、みき、大和は同じマンションでこうきは前のマンションに住んでおり、家が近い事と上の姉同士が友達という事で腐れ縁であり未だにつるんでいる。私と大和、みきとこうきが同じ大学であり大学同士も駅が一つ違うだけの近い距離ということから毎日一緒に行っている。私と大和は料理を学ぶ大学に行っており、みきとこうきは別の大学で経済学を学んでいる。将来は四人でお店を開けると良いねなんて言いながら気付くと大学生になっていた。私の今日の授業はパン作りでメロンパンだった。帰ったら家族と妖精達にあげようと思いながら小さめに作った。大学が終わり家に帰って来ると母がカレーを作っていた。良い匂いを嗅ぎながら部屋に入ると三人の妖精達は壁に画鋲を刺して階段を作り本棚の上で遊んでいた。

「危ないでしょ」と言いながら様子を覗いてみると妖精の一人が料理の教科書を見ながら卵ボーロとにらめっこをしている。この子は「セル」と言い、とても真面目で勤勉な妖精だ。心優しく私が布団を被らずに寝てしまった時はシルバニアから自分のハンカチサイズの布団を一生懸命私の元まで持ってきて何故か頭にかけてくれる可愛い三角の帽子を被った文字が読める頭のいい妖精だ。「メロンパン持って帰ってきたよ〜」と声をかけると三人とも目を輝かせながら急いで画鋲階段を降りてきてノートの上に座った。小さくちぎってあげるとシルバニアからお皿を持ってきて並んで食べていた。家にいる三人の妖精達は単語は話す事ができるため「メロンパンッメロンパンッ」とずっと呟いていた。

 夕飯後母から呼ばれリビングに向かうと母は首を傾げながら辺りを見回していた。どうしたのか尋ねると昨日近所に住んでいる親戚のまゆみおばちゃんから「庭に立派な金木犀が咲いたから」と剪定の際に少し切って金木犀の花が沢山咲いている枝をお裾分けしてくれた。その枝を花瓶に飾っていたが、オレンジ色の小さな可愛い金木犀の花が一部分だけが綺麗に無くなっており、無くなっているのに花は落ちていないためずっと母は不思議そうに床を見ていた。私はすぐに妖精のいたずらだと分かったがなんでだろうね風で落ちたのが飛んでいったんじゃないかなと当たり障りのないことを言いそそくさと部屋に逃げ帰った。部屋に帰ると妖精の一人が、私がティーカップに入れていた紅茶と今朝こっそり持って帰っていたみかんの皮をシルバニアのお風呂に入れて柚子風呂ならぬみかん風呂を楽しんでいた。この妖精が三人目の「ラク」と言う妖精だ。私が幼い頃から流行りのドラマなどを見て人間の真似をしている面白い妖精だ。今日は私がユーチューブで見ていたモデルの一日のルーティンを横から見ておりそれを真似してみかん風呂に入りながら残ったみかんの皮を顔型にくり抜きモデルがパックをしているようにラクも顔に付けてパックをしているらしい。人間の私よりも女子力が高い妖精である。ただ、今ラクがお湯代わりに使っているその紅茶は大和がパリにお菓子の勉強に行った際にお土産でくれた本場の美味しいダージリンなので是非次からはスーパーで買った安いティーパックでやってほしいものだ。そんな人間の願いなどお構いなしに優雅にお風呂に入るラクであった。

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