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彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第二章 ふたりの冒険

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第9話 急接近

「……それで、もうひとつ言っておかないといけないことがある」

「ああ」

「……まず、PKって知ってる?」

 ペナルティキック……いや、いきなりサッカーの話にはならんだろ。


「何だっけ。プレイヤーキラー?」

「……そう。ゲーム内で他のプレイヤーを死亡させること。初心者に一方的にPKを仕掛けるのは、大きなペナルティがあったりする。でも、システム上では基本的にPKは禁止されていない」

「システム上?」

「……ゲームによっては、他のプレイヤーにダメージを与えられないものもある。でも、このゲームでは実行可能だけど、ゲーム内ルールで裁かれたり、逮捕されたりする。そうやってゲーム内で犯罪者というか悪人になるプレイも一応できる」

「そういう人がいるのも知ってるけど、自分でやろうとは思わないな」

「……で、そんなゲームでもシステム上禁止されていることがある」

「それはつまり、殺人以上に罪が重いということなのか?」

「……ある意味、そう」

 神妙な顔付きでうなづくカズハ。


「……まずこのゲーム、アバターの性別は自動的に本人と同じになる」

「登録に身分証が必要だったりするのはそのためなのか」

「……それだけのためじゃないけど。で、これまでのゲームだと、男性プレイヤーが女性アバターを作って、それを見て楽しむというのもあったんだけど……VRだと、自分の体で、その……」

 ……あ……!


「……いか、いか、いかがわ」

「わ、わかったから! 全部言わなくていい!」

「……い、いや、最後まで説明しないと、変な誤解が」

「何を誤解するんだよ。この状況で誤解の余地とかないだろ」

「……とにかく、PKとかもある世界だから、何も制限なしだと女性アバターがひどい目にあうかもしれない」

「確かに」

 女性だけとは限らないが、ここで細かく指摘して話の腰を折る必要もないだろう。


「……戦いの結果亡くなるのはともかく、セクハラというか、痴漢行為とかは現実世界にまで心に傷が残るかもしれないから」

「ああ、わかった」

「……ゲン」

 急に俺の名を呼んだかと思えば、一気に間合いを詰め、顔をのぞき込んできた。

「な、なにっ!?」

 俺が反応に困っているうちに、カズハの顔が視界いっぱいに広がって――。


 ガツン!!

「ぐあっ!?」

「きゃん!!」

 顔と顔がぶつかる直前、二人の間に半透明の壁のようなものが突如として出現する。そのまま俺もカズハも、かなりの勢いでそれぞれ反対方向に弾き飛ばされた。


「いやこれ激しすぎないか? 痴漢行為禁止とか言ってるが、被害者までダメージ受けてるじゃないか」

「……ごめ……接触防止機能は働いていたけど、調整に失敗してるみたい」

 間近にいたはずなのに5メートル近く間を空けられ、俺もカズハも顔を手で押さえてうめく。


 痛み自体は一瞬だったし、傷もない。俺もカズハもすぐに立ち上がる。


 それはともかく、今のは体当たりとか頭突きとかじゃなくて……この人、俺とキス、しようとした?

 触れられないとわかってるんなら、別に気にすることでもないかもしれないけど。いや、バグかなんか発生したらどうするつもりだったんだ。


「……こんなふうに、このゲーム内では唇と唇の接触は例え中の人が夫婦でもできないようになってる」

「中の人が夫婦ならゲーム外でやれよって話だが。それはともかく、できないならちゃんと周知しないといけないだろう。PKがあるんなら、むりやりキスとか痴漢とかするやつだっているんじゃないか。それで被害者まで吹っ飛んでたら、そのうち女性プレイヤーいなくなるぞ」

「……ん。試してみてよかった。周知もするけど修正も必要」

「それと、次からこういう事するなら、先に言ってくれ」

「……一応技術的には、例えば遠距離恋愛中のカップルが、VR空間で結ばれるなんてことも可能なんだけど……規制があるので、実際は無理」

 顔全体を紅潮させ、視線を泳がせながらそんなことを言っている。

 いや何を想像してんのこの人。


「それはゲーム会社のやることじゃないだろう」

「……ん。法律は詳しくないけど、風営法とかの対象になるから、うちの会社ではやってない。アバター的には、下着は脱げないからそういうことはできない」

「そこまで念を押されなくても、そんな事するつもりはないぞ」

 相手もいないし。


「……じゃあ、もうひとつお願いっていうか、しちゅ……質問に答えてほしいんだけど」

 質問?


 これまでの付き合いで、この人には悪意はないことは分かりつつある。それでも、ここまで思い詰めたような表情もまた、現実世界でも見た覚えがない。いや、不安しか感じないんだが。


「……ゲーム内ではフレンドになったけど…………現実世界の方だと、私のこと、何だと思ってる?」

 …………え?


 ……………………えっ?


 そこでカズハは、急にハッとした顔になる。


「……ごっ、ごめん。何でもない。気にしないで」

 そして彼女は、一旦俺に背を向け、ときおりこちらの様子をうかがいながら歩き出す。

「……ほら、経験値稼ぎとか、素材集めとか、まだまだやることはあるよ」

「ああ……」

 その様子は気になるものの、ひとまず俺はカズハの後を追うのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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