表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第四章 スローライフ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/52

第51話 出発準備

第4章スタートです

「……出かけるよ。1ミリ秒で支度して」

 4日後。

 このゲーム、GLOことグレイト・ライフ・オンラインにログインした直後、俺のいるテントをのぞき込んできたカズハがそんなことを言う。


「空賊なんだか宇宙刑事なんだか」

「うるせえ! 行こう!」

「海賊だった。なんでそんなにテンション高いの」

「……だって、会えるの3日ぶりだから」

 なんでそんな、遠距離恋愛中の彼女みたいなことを。


 俺は昨日まで別のバイトで、3日間ほどこのゲームに参加できなかった。

「3日ぶりって、去年の夏休みは40日以上会わなかったじゃないか」

 俺がそう言えば、カズハはむっとした表情になる。もしかして、怒った?


 今年の夏休みは去年と違ってある意味特別で、開発中のゲームのテストプレイのため、数日前まで俺は毎日のようにログインしてカズハと会っていた。

 だから、まあ……。

「俺もまったく寂しいとは感じなかったと言えばうそにならなくもない」

「……そんなわかりづらいい方じゃなくて、ちゃんと言って」

 なんかずいぶん積極的に攻めてくるなあ。


「寂しかった」

「……わたしも、寂しかった」

 正直に言うと、たった3日会えないことが寂しいと思えるなんて、自分でも予想外だった。

 昨日の朝とか、夢にカズハ、というか沖浦さんが出てくる始末。

 いやあれほんとに夢だよな……? フルダイブ型VRゲームの後遺症とかじゃないよな。


 なんか一瞬妙な雰囲気になりかけたが、カズハはそのやりとりで満足したのか、話題を今日の計画へと引き戻す。

「……夏休みもベータテストも、長いようで短い。まだまだやることはたくさんある」

 ひとまず今日は海の副拠点を離れ、森の拠点に戻る予定だ。

 ファストトラベルの施設はできていないので、歩いて戻らなければならない。


「わかった。わかったけど、出発前に転職をしておきたい」

「……何になるの?」

「戦士。ある程度レベル上がるまでは俺が前衛をやるよ。虫系のモンスターも多そうだし、カズハが苦手だったら俺が守るから」

「ふえっ!?」

 カズハの顔が紅潮し、驚いた表情になる。なんか勘違いが発生しているような。

 

「……ありがとう……末永くお願いします」

 そういいつつカズハは深々と頭を下げる。

 いやプロポーズか!


「あのな、これRPGの職業による役割分担の話であって、他意はないぞ」

「……うん。でも、嬉しかった、よ」

 まだ勘違いしてない?。

 まあ……いいか。

 俺はガイドフォンを取り出して、履歴書アプリから職業を変更する。


――ゲンは初級戦闘職【戦士】に転職した!――

――アプリ【秘伝書・棒術】が解放された!――


「棒術!?」

「……まあ、棒の方をよく使ってたから」

「槍は装備してたけど、魔法主体で戦ってたからなあ。でも、ふたりとも鈍器ってのもどうなんだろう」

「……じゃあわたし、後衛に転職する」

「えっ?」

 いや、そうやってうまく役割分担した方がいいのか?


――カズハは初級戦闘職【神官】に転職した!――


「神官? 僧侶とかじゃなくて?」

「……確かにほかのゲームだとしょうりょににゃってりゅことぎゃおおいけでぃよ、しょれおびょうしゃんみないじぇ」

「落ち着け。確かに日本じゃ僧侶と言えば仏教のお坊さんを連想するかもしれないが」

 なんで職業の話をすると滑舌悪くなるんだ。


「……あとは、侍祭じさいという言葉もある、よ」

「じさい?」

「……ん。侍祭さむらいまつりと書いて、侍祭じさい

「いやさむらいまつりはおかしいだろ。確か、教会で司祭の補助をする人だったな」

「……英語だとアコライト」

「それなら、別のゲームの話で聞いたことはある。時間ないからやったことはないが」

「……ほかのゲームはともかく、このゲームでは神官だから」

「神官ってことは、この世界に神様的な存在がいるってことか?」

「……設定上、神官魔法の力の源みたいな感じでいるけど、ゲーム内には出てこない予定」

「まあ神様出てこられても対応に困るよな普通」

「……あ、装備も変えないと」

 そう言うとカズハは、さらにガイドフォンを操作して着替える。


「っ!?」

 そして新たに彼女が身に着けたのは、白を基調とした法衣のような服と、それとセットになった帽子と靴。思わず、声が出た。

「……ゲン?」

「聖女風の装備、似合う」

「ふにゃ!?」

「あ……あっ! ごめん! つい余計なことを」

 慌てて謝罪する。俺にほめられて、喜ぶやつなんていなかった。


「……余計じゃないよ。ありがとう……嬉しい」

 俺のほめ言葉に、そんな反応を返ってきたのは、これが初めてだ。というか、女子をほめるの自体これが初めてかも。


「ああ、ええと……それでだな」

 カズハから目をそらしつつ、俺も装備を変更する。カズハのときもそうだったが、職業を変えても装備は勝手に変わらない。

 ゲームによっては、職業により装備できるものが違って、対象外だと勝手に解除されたりすることもある。だがこのゲームだと、一応何でも装備はできる。ただし、職業と装備の組み合わせによりペナルティが発生することはある。

 以前カズハからもらった、鉄の装備を付けなおした。

 で、問題は……。


右手:[エノキの棒]

左手:装備なし

頭:[鉄の(かぶと)

腕:[鉄の小手]

胴:[鉄の鎧]

腰:[鉄の腰当(こしあて)

足:[鉄の具足(ぐそく)


 左手だ。


「……じゃ、鉄の盾をプレゼント」

「いや待て、ちゃんと購入するぞ」

「……ほめられて嬉しかったから、そのお礼」

 あんまりここで押し問答をしても仕方ないか。

「ありがとう。このお礼は戦闘で返すよ」

 左手に鉄の盾を装備する。


「それじゃ、経験値稼ぎでもしながら森に帰るか」

「……もう少し経験値を稼いで、キャラクターレベルが10になったら、サブの職業を付けられるようになる。そうしたら能力をかなり底上げできる」

「よし、ひとまずレベル10を目標としよう」

 そうして俺たちは、この前に下って来た川沿いを登り始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ