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彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第二章 ふたりの冒険

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第20話 もう一人のカズハ

「……おはよう。早速だけど、昨日と何が違うか、わかる?」

 翌日。

 俺がログインした途端に、カズハはめんどくさい彼女みたいなことを言い出した。


「おはよう。昨日も言ったけど、女子の髪型とか服装とか、まったく知識はないからな」

 多分、髪か服のことじゃないかと思う。具体的に何かと聞かれてもわからんが。


「……興味は?」

「小学校の頃は女子の方見てたら痴漢か変質者呼ばわりだぞ。そんなもん発生しようがないだろ」

 このいじめのせいで、カズハ以外の女子とはようやく事務的な話ができるようになったくらいだ。

「……それじゃ、わたしが『はじめての女』なの?」

「…………は?」

 はじめて……の……おんな……?

 一年同じ部にいたせいで、確かにこの人は普通に会話が成立する唯一の女子ではある。


「い、いや、なんでそんな話に……?」

 そもそもこういうのは彼氏とかに聞くもんじゃないか? そんなもんがいたら、まず俺に絡んでこないだろうけど。


「髪の毛が普段よりは、すっきりしているっていうか……あれ、もしかしていつもの寝癖がなくなっただけなんじゃ」

「……良かった。まったく関心がないかと思ってたけど、現実の方でも少しは見てくれてたんだ」

「だからその感想はおかしいだろ」


「……正解は、セカンドキャラに、交代した」

 答えを見つけられない俺に業を煮やしたか、結局数分で数葉はその答えを口にする。

「いやそれ、見てわかるもんなの?」

 さすがに反則だと思ったので、【鑑定】スキルは使わなかったが、裏目に出たかも。


「……これまでは育ててきた高レベルキャラを使ってたけど、1レベルからやり直すことにした」

「いいのか、それ?」

「……ん。ゲンを守ってあげられなくなったけど、一緒に成長するのも、いいかなって」

「まあ本人と、会社が許すならそれでいいが。テストプレイ中なんだから、なんか計画とかあったんじゃないの?」

「……そっちは、大丈夫」

 大丈夫なのか、本当に? この人を見ていると、たまに不安になるんだが。


「……それと、一応、髪型もいじった」

「やっぱり髪型で間違いなかったんじゃないか」

「……まさか、そっちに気付かれるとは思わなかった」

 俺が女子の髪型なんか気にしないというのも事実ではあったんだが。

 一応、この人と知り合ってから1年以上経つしなあ。


「……これまでこういうの、気にしてなかったけど、こっち《・・・》の方は、寝癖とかなおすのは簡単だから」

「ゲーム内でも寝癖発生するの!? いやそれより、たまに寝癖がなおし切れていないって思ってたけど、なおす気すらなかったのか、あれ!?」

 大丈夫かこの人? 現実世界で親とうまくいってなかったりするのでは……?


「……現実世界あっちでも、こうやってなおせれば、いいのに」

 そんなことをつぶやきながら、カズハは自分のガイドフォンから一つのウィンドウを開く。

「……髪型はこれで調節できる。リクエストがあったら、言ってね」

 確かに、これまでも自分のアバターをいじれるゲームは色々あったけど。

 俺も、このゲームで容姿や髪形を変更できることは知っていたが、あえてそのままを選んだ。髪型については、知識もセンスもないから。もうひとつ理由があるが、それはまあいいだろう。


 とはいえ、俺にカズハの髪型決めろと言われても、なあ。


「……例えば、これは髪の長さ」

 カズハがスライダーを触ると、その髪が一気に伸びる。

 全体が、いっぺんに。後ろ髪だけでなく前髪までも、腰のあたりまで届くロングヘアと化した。


「いや普通、前髪は変わらないっていうか、後ろ髪と独立してるもんじゃない?」

「……まっ、前が見えない! なんか設定ミス発生してる!」

「落ち着け! 前髪を左右にかき分けてだな」

「……見えた! って髪押さえてたらプログラムの修正ができない!」

「髪ゴムとかで後ろで止めたらいいんじゃないか?」

「……かみ……ごむ……?」

「なんでそんな『何……だと……?』みたいな反応なんだ」

 普段おしゃれとかまったくする気のない人なんだろうか。


「……仕方ない。ちょっとこれ持ってて」

 カズハは俺に背を向けると、掻き上げた髪を後ろでまとめ、俺に持たせる。

 ちょうど、ポニーテールのような感じで。

「いいの!?」

「……ん」

 そのままカズハは、今空中に表示されている髪色変更用のウィンドウではなく、その手前の何もないところに手をやると、わきわきと指を(うごめ)かせる。

 なにこれ? 指の体操?


 いや、すぐに思い出した。これは現実世界で部活中によく見る光景だ。

 のんびりとした話し方からは想像のできない、高速のタイピング。

 キーボードは、ただのアルバイトの俺には見えない設定になっているのだと思う。今このカズハの行動にも、きっと企業秘密が含まれているから。


 しかし……これまさか、プレーヤーが操作する部分ではなく、プログラムそのものを触ってる?


 しばらく、目に見えないキーボードに入力を続けていたカズハだが、数分でその動きが止まる。

「……ん。デバッグ完了」

 中学生の頃、プログラミングの大会で賞をもらったなんて話も聞いたことがある。

 もしかしてこの人、ただのプログラマー見習いのアルバイトではなく、実は即戦力だったりするのだろうか。


「……で、髪型、どうしよう」

 俺に髪を持たせたまま、斜め後ろに視線を送って来る。

 やっぱりこの人も女子の髪型とかよく分かっていないようだな。


「あんまり大きく変わると、正直落ち着かない気がするから、普段通り、現実と同じがいいかな」

「……わかった。じゃあこれで」

 彼女がパネルをささっといじると、長かった髪が生き物のように動き、高校で見慣れたショートヘアに戻った。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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