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彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第二章 ふたりの冒険

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第19話 ふたりでたき火

「確かに、映画なんかでたき火をはさんで語り合うシーンはよくあるけど……ベータテスト中にそんな時間の無駄づかいして大丈夫か?」

「……大丈夫。問題なし」

 いやそんなはずないだろ。


「本当に? 例えばコンビニでバイト中に突然キャンプファイヤーとか始めたら、さすがに首が飛びかねんだろ」

「……火の挙動を見たり、たき火の効果をみるのもテストプレイのうちだから」

「たき火の効果?」

「……モンスターを遠ざける。しばらく話をして、襲われたらバグ」

「そういうことなら、まあいいけど……」


 そして俺たちは、たき火を挟んで向かい合う。俺は土の上に胡座(あぐら)をかき、カズハはいわゆる女の子座りで。

 これ、もしかしてクッションかイスでも用意したほうがいいんじゃないか。明日、また考えよう。


 バーチャルリアリティのこの世界の景色と同じように、燃え上がる炎も現実世界と区別がつかないくらいよくできている。

「な、何か落ち着くな、これ」

「……ん。動画サイトでずっとたき火を見る動画もあったりするから」

 気が付けばすっかり日は沈み、辺りの草原や林は闇の中に姿を消していた。俺たちを含め、たき火を中心に半径10メートルほどが、オレンジの温かな光の中に浮かび上がっている。

 これもたき火の効果なのか、獣の声や虫の声、木の葉を揺らす風の音は遠ざかり、パチ……パチ……と木の枝がはぜる音だけが辺りを支配していた。


 とはいえ、何を話せばよいやら。

 話題に困っていたら、先にカズハの方が口を開いた。

「……ゲンは……さあ」

 そこでしばし、言葉が途切れる。それを口に出してよいか、迷っている様子だ。


「……このまま一生どうテ……独身を通すつもりなの?」

 なんか一瞬、妙なことを口走りかけたな。いつものように噛んだとかではなさそうだが。


 正直、別に俺がどうなろうとカズハには関係ないと言いたいところだが。

 そういえば、小学校のころは罰ゲームで変なこと聞かれて、下手に答えたらセクハラ扱いなんてこともあったな。

 とはいえ、この人からは昔のいじめっ子のような悪意は感じられない。俺に人を見る目がないだけの可能性も、いまだ否定しきれないけど。

 

「一生っていうか、まだ高校生なんだから普通そこまで考えないだろ」

「……そう……かなあ? 結婚までは考えなくても、こ……こいびちょ……恋人……とかは……」

 言い慣れない言葉なのか、カズハの声はかすれて消える。


「中学の頃からそんなことを言ってる同級生はいたな。高校生になったら彼女を作りたいとか、男子高は嫌だとか」

「……男子高……」

 そういえば、あいつら今どうしてるだろう。女性恐怖症とはいえ、男子ともあまりいい関係は築けていなかったからなあ。もはや顔も名前もあいまいだ。


「……ゲンは、男子高に行こうとかは考えなかったの? 女性が苦手なら、そっちがよかったんじゃ……」

「確かに中学の頃、志望校に男子高を書いてた時期もあった」

 俺の言葉に、はっと息を呑むカズハが、揺らぐ炎の向こうに見えた気がした。


「……じゃあ何で、共学のうちを選んだの?」

「さすがに、このままじゃあまずいと思ったんだよ。買い物に行けば普通に女性の店員さんがいるだろ。お釣りをもらう時、うっかり手が触れるたびに呼吸困難起こしたり、声かけられるたびに挙動不審になってたら、まともに生活もできやしない」

「……今はもう、触っても大丈夫?」

「触ってもって、そんな触る必要ある?」

 そういえば、現実の方でもうっかりこの人に触れて、過呼吸で保健室送りになったことがあった。

 カズハは一瞬、ムッとした表情になる。

 やっぱり、現実世界に比べて表情豊かになってる気がするな。


「……女子に慣れたいんでしょ?」

「慣れたいと言っても別に彼女が欲しいとかそういうのじゃなくて、普通に日常生活を送れたら大丈夫だから」

「……むー」

 不満そうな声を上げるカズハ。


 何やら妙な雰囲気になったな。

 とはいえ彼女は、このゲーム内ではバイト先の上司みたいなもんだから、あまり関係をこじらせたくはないんだが……どうしたものか。


 ピピピッ!


 俺たちが言葉に迷っていると、俺のガイドフォンがアラーム音を発した。


「あ、そろそろ現実世界(むこう)で用事が」

「……うん……今のところはバグもなかったみたいだし、それじゃ、また明日」

 何やらさびしげな表情で、カズハが手を振る。

 バグ……そういえば、それが目的だったな。話しているうちにすっかり忘れていた。


 支給品の一人用の簡易テントを取り出す。これは使い捨てで、一度使うとなくなる。

 明日は拠点にちゃんとした泊まれる場所を作ろう。

「じゃ、また。ログアウト」

 小さく手を振り返すと、俺は気まずさから逃れるように早々に簡易テントに飛び込み、ログアウトのアイコンをタップする。

 一瞬目の前が暗転し、ゆっくりと自分の部屋の光景が戻ってきた。


 さて、次までに仲直り……いや、ケンカしてるわけじゃないけど、状況を改善する方法を考えないとな。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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