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彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第二章 ふたりの冒険

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第16話 はじめての漁

「……運営に確認したけど、仕様だって。詳細は教えてもらえなかった」

 スズメバチ型のモンスター、ホーネットを倒して蜂蜜がドロップアイテムとして出た件。

「教えてもらえなかった、ということは自力で解明しろ、ということだろうな」

「……ん」

「とりあえず先に進もう」


――満腹度が50パーセントを切りました。何か食品アイテムを食べましょう――

 さらに森の中の獣道を歩いていると、目の前にそんなメッセージが出現した。


「満腹度あるタイプのゲームか、これ」

「……少なくとも現実世界で食べられるものは、こちらでも食べられる、よ。あと、現実世界で食べられないものも、一応」

「死に戻りするやつじゃないかそれ」

「……ゲームスタート時にもらえる初心者セットの中に、非常食があるけど」

「非常食は非常時用に取っておこう。食べ物は一応、そのあたりにある」

「……え、どこ?」


 森には高さが10メートルを越える大木ばかりでなく、日当たりのよい獣道沿いには背の低い木が生えている。近寄ると、キイチゴの実がなっているのが見えた。

 実を一つ摘み、口に運ぶ。ちゃんとキイチゴっぽい味がする。


 直後、カズハがまた近寄ってくる気配がした。

 思いの外近くに来ていた彼女は、15センチほど身長差のある俺を上目遣いで見つめると、目を閉じて口を開く。

「……あーん」

 ……いいのか? 俺の手から食べたりして。


 …………。

 しょうがないなぁ……。


 もう一つキイチゴの実を摘むと、その唇に近づけ――。

「うおっ!?」

 こちらの手に噛みつかんばかりの勢いでキイチゴを口に入れた彼女は、そのままもぐもぐと口を動かすと、続けて眉をひそめた。

「……すっぱい」

「そりゃあ、品種改良された果物とは違うから」


 ゲーム内でも、味覚はちゃんとある。だが、問題はそこではない。それはこのゲームに限らず、少し前からVRの技術として存在した。

 重要なのは、食材の方。現実世界の食べ物、そして現実世界では食べられないもの、そしてゲーム内にしか存在しないファンタジーな食べ物。

 そんなありとあらゆるものに、味が設定されているというのだろうか。


 まあそれはさておき、これだけで腹を膨らませるのは難しい。小さな木の実は数個食べても空腹度が1パーセント増える程度。食べながら歩いていたら、すぐに空腹度は下がってしまう。

 できれば魚か鳥か、何かを捕まえたいが……。


 さらに歩けば、森の出口に近づいたか、木々は少しまばらになり、かすかに川の音が聞こえるようになった。


 少し歩いて森から出ると、ゴロゴロとした石で覆いつくされた川原が広がっていて、川幅5メートルほどの川が流れている。

 ところどころに深い部分もあって、30センチほどの魚影が見えた。


「よし、川魚でも捕ろう」

「……釣りとか、するの?」

「釣り竿がないけど……さっきの虫網の仕様からして、魚を図鑑に登録したらもらえるような気がする」

 念のためガイドフォンを取り出し、アイテムボックスの中をはじめメイン画面もざっと見たが、網も釣り竿も、魚が捕れるような道具はない。


 もっとレベルが上がったならともかく、素手で魚を捕まえるのは無理だろう。少なくとも、今は。

 

 ならば仕方がない。あの方法を使うか。


 あたりを見回し、なんとか抱えられるくらいの大きな石を持ち上げる。

 これは現実世界では禁止されているが、ゲームなら漁協とか漁業権もないだろうし、魚もリポップするだろう。


「せー、のっ!」

 全身で勢いを付け、両手で放り上げるようにして石を投げる。川の中にある大きな岩を目掛けて。

 がつん、と鈍い音を立てて石と岩がぶつかり、石のほうが真っ二つに割れる。数秒後、衝撃で気絶した魚が十数匹、水面に浮かんできた。

 このままだと意識を取り戻すか、川に流れて行ってしまう。でも、今ならば素手で捕まえられる。

 川の中に入ろうとしたら、行く手を(さえぎ)るかのように目前に何かが出現した。


――石打漁、別名がっちん漁は、現実世界では法律により禁止されています。現在ゲーム内では禁止されていませんが、節度を持ったプレイをお願いします。詳しいお問い合わせは、以下のアドレスまで――


 そんな運営からのメッセージが、川に入る直前の俺の前に表示される。

 いや、知ってる。


 それを読んでいる間に、魚たちは川の流れに乗って手の届かないところまで流されてゆく。

 それでも――。


――[イワナ]を採集した!――

 何とか三匹をつかみ取ることができた。


――図鑑に「魚」が1種登録された!――

――[子どもの釣り竿]を3個入手した!――


「ほらやっぱり竿がもらえた」

 ミッションみたいなものが達成されたようで、釣り竿が手に入った。子どもというのが気にはなるが、少しは食材確保の役に立ちそうだ。


 もう一度、大きな石を投げる。

 

――石打漁、またはがっちん漁は、現実世界では法律により禁止されています。現在ゲーム内では禁止されていませんが、節度を持ったプレイをお願いします。詳しいお問い合わせは、以下のアドレスまで――

――このメッセージを、ふたたび表示しない――YES/NO――


 またか!


 急いでYESを選択し、流れていく魚を拾い上げる。

 さっきのイワナに加え、また別の魚が捕れた。


――[アマゴ]を採集した!――

――[アユ]を採集した!――


――図鑑に「魚」が3種登録された!――

――アプリ【水槽】が開放された!――


――食品として利用可能なアイテムを5種入手した!――

――アプリ【食糧庫】が開放された!――


――食品アイテム、「魚」を10個獲得した!――

――アプリ【冷蔵庫】が開放可能となった!――


 食品5種というのは、歩きながら食べていたクワやキイチゴの実もカウントされたからのようだ。


「色々出てたけど、とりあえず食事にするか」

「……ん。おなかすいた」

 冷蔵庫はまた課金制みたいだし、水槽に数匹入れて、残りは食糧庫にするか。とはいえ、冷蔵庫が別にあるということは、このままずっと保管はできなさそうだな。


「……そのまま、食べる?」

「それなんだが……現実世界だと川魚は生では食べられない。寄生虫がいるから。でも、ゲームではどうなんだろ」

 ゲームだから、もしかして寄生虫の設定はないかもしれない。

「……最悪死に戻りですむ」

「さすがにまずいだろ。焼いて食べるとしよう」

最後までお読みいただきありがとうございます。

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