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彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第二章 ふたりの冒険

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第12話 ジャンピングスパイダー

 そしてそのクモ型モンスター、ジャンピングスパイダーは、振り子の動きで大きく勢いを付ける。

 その頭上に「ジャンプ」の文字が浮かんだ瞬間、クモはこちらに飛びかかってきた。 

「くっ!」

 自分の運動能力は、体育では底辺の現実世界より少しましな程度だが、動きがわかればよけられる! はず!

 俺は右に駆け出し、クモの体当たりの軌道から逃れたつもりだった。だが大きく開かれた前脚、いや、クモだから第1歩脚というべきか、とにかく脚に引っかかる。


「ぐはっ!?」

 そのまま勢いに押され、地面に転がる。

 クモはそのまま2メートルほど離れたところに着地する。


「ゲン! 大丈夫?」

 学校では聞いた覚えのない沖浦さん、いやカズハの慌てた声が届く。

 痛覚を軽減する設定にしてあるが、それでも多少痛かった。だが現実世界と違い、痛みは長続きせずに一瞬で消える。

「大丈夫。格闘技とかやってる人なら、これくらい日常茶飯事なんだろう」

「……格闘技なんかやってないでしょ」

「まあ確かにそうだけどさぁ」


 それよりも問題は、俺のHP(ヒットポイント)バーが4分の1近く減ったこと。

 直撃されてたら、瀕死だったかも。


 回復魔法……そういえば、カズハは回復魔法とか使えないんだろうか。

 彼女のほうに少しだけ視線を向ければ、10メートルほど離れた木の後ろに隠れている。


 目が合うと、両手を振りながらこちらに応援の言葉を掛けてくる。

「……がんばれ……がんばれ」

 いや、それより回復魔法があれば。

 そう思った直後、俺の体は薄い金色の光に包まれる。続いて視界の端に、剣と上向きの矢印、そして鎧と上向きの矢印のアイコンが現れた。

 いつの間にかカズハの頭上にも、【応援】の文字が浮かんでいる。

 そういうスキルなのかこれ。なんというか、昔はいじめられていたし、女子に応援されるなんてことは、もしかして初めてなのでは。

 一瞬悲惨な過去に気を取られかけるが、クモが枯れ葉を踏む音で我に返る。いかんいかん。まだ戦闘中だ。

 すぐに立ち上がり、まだこちらに背を向き直ろうとしていたクモに駆け寄る。

 竜騎士でもあるまいし、こんな接近戦の間合いでジャンプ攻撃も使えないだろう。

 俺が勝てるかどうかはまた別の話だが。


 クモは8本の脚を器用に動かし、その場でゆっくりと回転する。

 回転が終わるよりも早く、クスノキの棒を振り上げて叩き付けた。

 20、というダメージの数値が浮かび、敵のHPバーが8分の1ほど縮む。

 HP、160前後か。このペースではあと7回ほど殴らないといけない。何か大ダメージを入れる方法は……。


 そんな事を考えた一瞬のうちに、クモは完全にこちらを向いていた。

 反射的に後ずさってしまった。せっかく詰めたはずの間合いがわずかに開く。やっぱりこのサイズの敵との闘いなんてほとんど経験がないからな。

 厄介なことに、相手の動きのほうが速かった。空いてしまった間合いを、すぐに詰められる。8本の足で地面を蹴っての体当たり。

「ぐ……っ!」

 跳ね飛ばされ、大木の(みき)に叩きつけられる。

 ジャンプがなくても、十分痛い。俺の残りHPは早くも5分の1ほど。これ、カズハの応援がなければ死んでたんじゃ?

 幹を支えに立ち上がる。

 もちろん、敵がそんな隙を見逃してくれるわけがない。力をためるように体勢を低くし、こちらにとびかかろうとするクモの姿が見えた。

 俺は反射的に棒を構える。水平に構えた棒の先をクモに向け、反対の先を樹の幹に当てた。大木に背中を預け……。


「ゲン!?」

 バギィッ!!

 至近距離で轟音が響く。だが、痛みどころかクモに触れられた感触もはない。

 目にも留まらぬ速さで突っ込んできたクモだけが、高々と跳ね飛ばされていた。

 俺はただ、棒を支えていただけ。棒の先にまっすぐ突っ込んできたクモは、棒を挟んで大木に体当たりし、その衝撃が跳ね返った形になる。


 当然、大ダメージを受けたのはクモ。HPバーは一気に減少し、真っ赤に変わる。


 な、何とか勝った。でも、こっちもボロボロだ。早く回復しないと。

 そう考えてガイドフォンを取り出したとき……ガサッと地面の草を踏みつける音がした。

「しまった! まだ……」

 全身傷だらけになっても、まだクモは動いていた。

 しかも逃げるとかではなく、まだ戦う気のようだ。


 まずいなこれ。一撃くらったらこちらも死ぬ。

 視界の端に、文字列が浮かぶ。

 何かのチュートリアルだろうか。危機に陥ると何らかのヒントをくれたりするやつ。

 だが読んでいるヒマはない。見えたのは『スキル解放』の文字だけ。

 一か八か。その名を叫ぶ。

「スキル解放、発動!」

 次の瞬間、まだ手にしていたエノキの棒が白く輝く。

 こちらが棒を振り上げるより早く、飛びかかってきたクモを迎え撃つかのように、文字通り光の速さで光の盾が広がった。

 それにぶつかったクモはまたもやはね飛ばされ、今度こそ体が粉になるような感じて消えてゆく。

 な、なんとか勝てた。


――小ボス、【ジャンピングスパイダー】を討伐した!――

――[ハエトリグモの糸]を3個手に入れた!――

――ミッション:はじめての戦闘 をクリアした!――

――[ヒールポーション]を1つ手に入れた!――

――ミッション:はじめての勝利 をクリアした!――

――[ヒールポーション]を1つ手に入れた!――

――ミッション:はじめての小ボス をクリアした!――

――[初心者の服]を1つ手に入れた!――

――[クスノキの広場]が開放された!――

――ミッション:はじめての小エリア をクリアした!――

――[クスノキの広場]がセーフティゾーンに設定されます――

――この樹の近くでは、ログアウト中の安全が保証されます――

――[クスノキの広場]がリスポーン地点として登録されます――


 視界の端を、メッセージが一気に流れる。


 そして、クスノキの大木がざわりと(うごめ)いた気がした。

 木の梢から緑色に輝く何かが無数に飛び出し、それに続けて黒と青のチョウたちも大木の周りを飛び交う。


「……な、何これ? 虫?」

「タマムシとオオムラサキだな。このイベント知らなかったの?」

「……プログラムの手伝いはするけど、細かい演出なんかは聞いてない」

「たぶんエリア解放の演出だから、すぐいなくなると思うけど……」

 俺の予想通り虫たちは森へと姿を消し、すぐに森は落ち着きを取り戻した。

 

 というわけで、ここが当面の拠点になるわけだが。

 …………。


 え、ここでリスポーン?

 つまり、ゲーム内で死んだりしたら、ここに逆戻り?


 街とかないの!?

最後までお読みいただきありがとうございます。

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