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彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第二章 ふたりの冒険

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第11話 四季島

 作った木刀、というより棒で素振りを続けるうち、目の前を親指大の緑色に輝く何かが横切った。

 とっさに棒を動かし、それを受け止める。

 その正体は、4センチほどのグリーンメタリックの甲虫。


「タマムシじゃないか」

「む、虫!?」

 カズハがさっと俺の後ろに隠れる。

 そういや虫嫌いだったな、この人。

 去年の部の合併の時、それでもめたことがあった。

 

「いや、別に噛んだり、毒あったりはしないぞ」

「……そ、そういう問題じゃない……」

 もともと日本にいるはずの虫だ。俺も図鑑でしか見たことないけど。

 こういうゲームってもっと中世ヨーロッパ風の世界観かと思っていたが、世界設定は日本と同じようなものなんだろうか。

  

――アクションスキル【鑑定】が習得可能となりました――

 視界の隅にそんな表示が現れる。


「鑑定スキル?」

「……異世界ラノベの定番」

「いやそうかもしれないけど、棒はスキルなしでも鑑定できたじゃないか」

「……あれは自分の持ち物だから。距離の空いているものとか、敵は【鑑定】スキルがいる。詳しく調べるには、さらにレベルを上げないと」

 

 習得に必要なスキルポイントは1ポイント。始めたばかりなので、スキルポイントはまだ10ある。

 というわけで、【鑑定】スキルを1レベル取得した。これからも役に立ちそうだから。


【タマムシ】

種別:小動物/昆虫類

HP:3/3

解説:光り輝く鞘翅(しょうし)を持つ昆虫の一種。その(はね)は防具や工芸品の素材となる。幼虫はエノキの幹の中にいる。


 これは、もしかして。

「……どうしたの?」

 あたりを見回す俺に、カズハが声を掛けてくる。

「エノキの枝が落ちていて、それをエサとするタマムシもいるということは、エノキの木が近くにあるんじゃないか」

「……それって、学校に生えてるやつ?」

(えのき)が丘高校の名の由来になったやつだな……ああ、たぶんあれだ」

 あたりを見回せば、それはすぐに見つかった。

 森の中の広場のような空間。その中央に、主のように鎮座する一本の大木。


【エノキ】

種別:植物

解説:ニレ科の落葉高木。葉は四季島(しきしま)の国蝶、オオムラサキの餌。


「オオムラサキもいるのか、このゲーム」

「……チョウチョな名前だよね」

「ああ。でも日本の国蝶って言っても、学界で決められたやつだから法的拘束力みたいなものはないが……それより問題は、四季島?」

「……字は違うけど、敷島(しきしま)は大和に係る枕詞(まくらことば)だね」

「なんとなく日本っぽいし、ここの国の名前なんだろうか」

「……ま、まあその辺りは、プレイヤーが攻略を進めながら解き明かしていくことだから」

「攻略、か……まずは街を探すのが先かな」


 ガサッ。


 その時、不意に頭上から何か大きなものが動く音がした。

 見上げれば、枝の上にいたのは一匹のクモ。


「ハエトリグモ……か?」 

 家の中や学校内でもよく見かける、小さな網を張らないクモ。疑問形になったのは、そのサイズのせい。現実のハエトリグモはこんな中型犬サイズじゃない。

 ゲーム世界だし、クモ型モンスターなんてのもいてもおかしくない。


「ひぃっ!?」

「ちょ、待て! しがみつくな服を引っ張るな!」

 レベルは高いはずなのでこれぐらいなんとでもなりそうなきもするが、苦手なものはどうしようもないか。

 この世界観じゃ虫型モンスターなんていくらでもいそうだけど。もしかしてカズハってこのゲーム、向いていないんじゃ……。


 ピコン!


 思考に沈みかけた俺を呼び戻すかのように小さなアラーム音が鳴り、クモの真上にメッセージウインドウが開く。


【ジャンピングスパイダー】 魔獣 Lv.5


 同時に、青い横棒も表示された。たぶんこれがHPを示しているんだろうが、具体的な数字は出ていない。

 ジャンピングスパイダーって、やっぱりハエトリグモじゃないか。

 魔獣というのはよくわからないが、この戦闘が終わったら調べよう。


 それより問題は、HPバーの上にある交差した剣の形のアイコン。

 これはそのキャラクターやモンスターが、戦闘中であることを示す。

 で、その相手はというと、他に周囲にはそれらしき相手はいなさそうなので……というか、俺かカズハが獲物と見られてるよな、やっぱり。

 そしてクモは、枝から飛び降り、腹の先から出した糸にぶら下がって降下してくる。網を張らないと言っても、糸は使いこなすのだ。


「……こ、こっちきた!」

「こいつは俺がなんとかするから、カズハは少し離れてくれ!」

 

 それよりも、ぶ、武器を……!

 初心者のナイフも含めて、さっき全部片付けたから、今は完全な丸腰だ。


 敵から目を逸らすわけにもいかないので、手探りでガイドフォンを取り出す。確か音声による操作も可能だったはず。右手のひらを画面に押し付け、叫ぶ。

「エノキの棒、取り出し!」

 それに答えるかのように、右手の中に棒の感触が出現する。それをしっかりと握りしめ、画面から引き抜いた。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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