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彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第二章 ふたりの冒険

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第10話 はじめての武器

「ちょっと待って。まだ武器がない」

 獣道のある方へと歩き始めたカズハを呼び止める。


「……あ、そうか。忘れてた」

「さすがに初心者のナイフでは心もとないだろうな」

「……でも、このあたりでは、武器屋はなさそうだね」

「まあそれは、森の中だから仕方ないだろ」

「……もしよかったら、私のお古でも……」

「いや、最初は自分で作ってみる」

「……え? 作ったことあるの?」

「いやさすがに武器作ったことはないが、木刀ぐらいならなんとか」


 近くに落ちている木の枝の中から、なるべくまっすぐで、硬くて腐っていなさそうなものを選んで拾い上げた。

 先の細い部分や余計な枝を折り、一本の棒にする。それだけではまだ不格好なので、ナイフで枝の痕を削り、なるべくまっすぐに仕上げてみた。

 

 ピロン♪

 突然、腰のフォルダーに戻しておいたガイドフォンが、短いアラーム音を響かせる。

 そして視界の端に、メッセージが浮かんだ。


――[エノキの棒]を作った!――


「えのきのぼう!?」

「……何だか、どこかで聞いたことのあるような」

「名前を設定してるのはカズハの会社じゃないか」

「……まあ、昔のゲームネタだけど」

 名前はわかったのはいいが、どの程度の強さがあるものやら。

 初心者が即席で作ったものが強いわけもないだろうが。

 

「この手のゲームによくある、鑑定のスキルみたいなのはないの?」

「……というより転生もののラノベによくあるやつ」

「いやラノベはともかく、このゲームはどうなんだ」

「……所持しているアイテムなら調べられる。ガイドフォン、出して」

 棒を地面に置き、ガイドフォンを腰のホルダーから取り出すと、画面を眺める。

 その画面には今使えないものも含め、アプリが色々と並んでいる。


「……まず、アイテムボックスのアプリを開く」

 箱型のアプリアイコンをタップすると、そのふたが開いて画面の下半分に箱の中身が表示される。始めたばかりなので、当然中は空っぽだ。


「あ、そういえば俺のガイドフォンのウインドウ、カズハには見えないんじゃ……」

「……フレンドになったから、許可してもらえれば色々なデータは共有できる」

 数葉に教えられる通り、設定を変更してウインドウ表示を共有とする。

 ベータテスト中だし、彼女は会社側の人間だし、信頼……はできるだろう、きっと。


「……で、そこにアイテムを入れる」

 現実世界ではスマホに物を収納できたりしないが、こちらではできるのだろうか。半信半疑ながら、画面から棒を近付ける。

 画面が弱い光を放ち、1メートル近くある棒が、ずぶずぶとガイドフォンに吸い込まれてゆく。

 一瞬の後、空っぽだったアイテムボックスフォルダに、エノキの棒のアイコンが現れた。

 さらにそのアイコンをタップする。

 するとそれを取り巻くように、それぞれ手のひら、剣、錠前、虫眼鏡、ゴミ箱の形をした新しいアイコンが出現する。


「……手のひらが取り出し、剣が装備、錠前は間違って捨てたり加工したりしないためのロック、ゴミ箱は廃棄、そして虫眼鏡が鑑定」

 虫眼鏡をタップすると、新たなウィンドウが展開された。

 

[エノキの棒]  ★

種別:武器/棒

攻撃力:5  重量値:3  耐久値:10/12

オートスキル【季節特効(夏/小)】

解説:(エノキ)の枝から作られた棒。木材としての強度は低く、ゆがみやすい。


「耐久値が減っているな。まだ何もしていないのに」

「……作成時に少し失敗したかも。職人系のジョブも取ってないし、まあ仕方ないよ。リアルのスキルだけでこれくらいで切れば十分」

 強度は低いと書かれているが、それは最大値のことだろう。耐久値の減少を除いてもあまりいい武器ではなさそうな気がするが、さすがにゲーム開始早々に長く使える武器が手に入るとは思えない。


「で、問題はこの【季節特効】なんだが」

 俺は空中に表示されたスキル名らしきものを指さす。

 普通に考えたら、ゲーム内季節が夏の間だけ攻撃力が増すとかそういうものだろう。多分これは、エノキが漢字で木偏(きへん)に夏と書くことに由来するのではないか。


「……これはいわゆる武器に付随するスキル。装備中のみその機能が発揮される。スキル名をタップすると、説明が出てくる」


【季節特効】 アイテムスキル

 ゲーム内季節がスキルと一致する場合、キャラクターの攻撃力を上げる。

  小:攻撃力が10%上昇する


 なお、現在の季節だが、現実世界では高校2年の夏休みが始まったばかり。

「セミの鳴き声から考えて、このゲーム内においても夏のようだな」

 もしかしたら、現実世界とは昆虫の発生期が違うのかもしれないが。

「……ん。この装備スキルもちゃんと有効」

 夏にしては暑さが足りない気もするが、現実世界みたいな猛暑というか酷暑だったら、それこそゲームにならん。


 ひとまずガイドフォンをしまい、木刀、いやエノキの棒を構える。体育の授業でやった剣道の構えを取った。そのまま、何度か素振りをしてみる。()()()()()()()()には身体は動いた。


「……ゲンって、武道は剣道を取ってたんだよね」

「まあ、柔道や相撲よりはましだろうと思ったが」

 体育は苦手だ。とはいえうちの高校、男子は格技を何か選択しないといけない。

「……試合で勝ったことは?」

「ない!」

 さすがに素振りだけでレベルが上がるほど甘くはないだろう。

 それに、剣道と実戦剣術も違うのだろう。

 それでも、なにもないよりはマシなのではないだろうか。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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