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8.『さらば王都』

【エタスト】リシェルたんお通夜会場【part33】


490:名無しの参列者さん

すっごい勢いでスレが進んでたけど

やっと落ち着いてきたか?


491:名無しの参列者さん

そらぁあんな映像見せられたらなぁ


492:名無しの参列者さん

切り抜き動画の再生数エグい勢いで伸びてる

生で見て無かった奴等は良くできたファン作品だと思ってるっぽい


493:◆好きな推しカプ発表ドラゴン

リシェルたんマジで可愛かったなぁ…


494:名無しの参列者さん

マジの天使だったな

子供にも優しかったし、街の人にも慕われてたしな


495:名無しの参列者さん

>>492

CG少しやってる自分からすれば

どんな大金かけてもあのレベルは無理なんじゃないかと思う

海外の映画会社からオファーが来るレベル


496:名無しの参列者さん

>>492

なんかスピリチュアルな方面の方々にも話題になってるらしい

曰く「あの動画流すと低級な邪霊程度なら消滅する」とか


497:名無しの参列者さん

聖なる力が宿ってるって言われても納得するわ

何回見ても自然と涙が出ちゃうんだもん


498:◆高×篠CP支持者

>>497

だけど、涙が出ちゃう♪


499:名無しの参列者さん

>>498

キモオタだもん♪


500:名無しの参列者さん

>>499

お前がNo.1だ


501:名無しの参列者さん

>>499

俺の涙を返せ


502:名無しの参列者さん

>>499

バーカwww


503:◆名無しの自営業

やあ(´・ω・`)


504:名無しの参列者さん

>>503

よう!…やあ?


505:名無しの参列者さん

>>503

やあ?


506:名無しの参列者さん

バーボンハウスかな?


507:◆赤白大好き侍

バーボン?


508:◆名無しの自営業

なんだか心が洗われたように晴れやかだお(´・ω・`)

きっとリシェルたんの歌のおかげだお(´・ω・`)


509:名無しの参列者さん

何お前、悪霊にでも取りつかれてたん?


510:名無しの参列者さん

心が穢れてたんだろうな


511:名無しの参列者さん

>>510

シッ!


512:◆枯れ専の参列者さん

>>508

で、今日はどうしたん?


513:◆名無しの自営業

なんか酷い言われ様だお(´・ω・`)

…まぁ良いお、今日はこの後配信開始だお

今後の方針を話してから、王都から出発するお


514:名無しの参列者さん

>>513

もう出立するの?早くない?

リシェルたんとは直接話さなくていいの?


515:名無しの参列者さん

>>513

あと勇者アルナスとかノエルちゃんには会わんの?


516:◆名無しの自営業

>>514

今回の件で分かったお

多分、直接話したら心臓が爆発するお(´・ω・`)

>>515

アルカスもビッチも割とどうでもいい(´・ω・`)


517:名無しの参列者さん

勇者はアウトオブ眼中とな


518:名無しの参列者さん

新規組はアルナスやノエルも見たいか


519:名無しの参列者さん

まぁ確かにこのスレでやるのはスレ違いかなぁ

リシェルたん派からすれば裏切者と恋敵やし



「…よし、配信始めたお!おまいらオッスオッス!」


『インターネットLv.2』の枝スキル『配信』を立ち上げ、眼前に現れた光る球体に向かって挨拶をする。

球体についた目のようなレンズがキュキュッと縮小し、俺にピントを合わせた。


〈お、きたきた!〉

〈やあ(´・ω・`)〉

〈生配信始まった!〉

〈オッスオッス!〉

〈そこは宿屋の自室かな?〉


俺の不細工な顔を映し出すウィンドウに早速コメントが流れ始める。

空中に浮かぶ数枚の光る板…向こうの景色が透けて見えているコレは『インターネット』スキルによって作られた物だ。

俺以外の人間にも見ることはできるが、書き込みなどの操作は俺にしかできない。


「お察しの通り、ここは宿屋の自室だお。今日は前述の通り今後の方針を説明して、その後王都から出発するお。」


〈もっとゆっくりしてけばいいのに〉

〈もう王都離れるのか〉

〈リシェルたんがまた遠くなってしまう…〉


「…ゆっくりしたいのは山々なんだお。だけど、今回の王都入りは完全に寄り道…まぁ俺達のワガママだったお。正直結構時間がカツカツなんだお。…さて、その辺の詳しい話をするにあたって、今日はゲストに来てもらってるお。」


アイカメラが少し離れ、俺の隣に座った二人が画面に映し出される。


「これはもう映っているのか?…スレッドの皆、こうやって話すのは初めてになるな。『名無しの最速攻略者』こと篠原だ。」


「同じく、『名無しティーチャー』こと高見です。よろしくお願い致します。」


〈!!!〉

〈私の最推しCPキターーー!!〉

〈おお、リーダー&副リーダーだ!!〉

〈カメラ目線頂きました!〉

〈そういや水無瀬氏以外がこうやって話すの初だな〉


そう、今回は解説役に篠原氏&高見氏をお招きした。

今後の事を説明するにあたり、この二人にお願いするのが適任と思ったのでね。

…決して、高×篠カップル本実現の為の燃料投下とかでは無い。…違うよ?


「さて、今回お二人に登場して頂いたのはですね、我々の今後について改めてお二人からご説明いただきたいと考えてのことなのですお。」


「…水無瀬さん、なんだか喋り慣れてます?」


「MCも出来るとか本当に多才だな…分かった、それでは説明させてもらおう。」


そう言うと篠原氏はアイカメラへと向き直り、言葉を続ける。


「当初の目標としていた『各自の職業レベルをMAXまで上げ、アルティメットスキルを手に入れる』だが…メタル狩りを経て現在、俺達の平均レベルは70前後まで上がった。エタストのレベルシステムの特徴として、『後半のレベル上げが極端に困難』という事もあり、ここから先は短期で上げるのは難しくなってくる。」


「敵とのレベル差が開いている程、経験値が多くなるシステムの弊害ですね。レベル70以上の敵となると、各種ボスや『マジックアーカイブ』、『ドレス大迷宮』の深層でエンカウントするモンスターに限られてきますから。」


「そうだな。そこでレベル上げは一旦ここまでとし、今後は『強力な武具やアイテムの収集&モンスターの軍勢に滅ぼされる村や町を救う』フェーズに移行する。」


俺達がヘキサの街に辿り着いた後、皆で話し合って決めたアレだな。

藤村氏の提案で、本番の『リシェルたん救出作戦』の前に、歴史改変やストーリー改変が本当に可能なのかテストとして…ひいては邪神自体の力を削ぐ為、村や町を襲撃するモンスターの軍勢を討伐する。


…それと、装備やアイテムの回収。

実はコレ、もう当初の意味合いよりも重要になってきている。


「…実はレベルアップに伴って白川さんが『簡易アイテム合成』の上位互換スキル、『アイテム合成』及び『上級アイテム合成』を覚えた。…どうやら白川さんの職業『アナリスト』は鑑定と合成に特化しているようだ。…となると、この職業のレベルMAXで覚える『アルティメットスキル』も、それに沿った物になるだろうと予想できる。」


「鑑定スキルか合成スキルの最上位…歯に衣着せずに言えば、『ぶっ壊れスキル』ですね。」


「本人に確認したが、『上級アイテム合成』で既にゲーム内に登場したアイテムの9割は作成可能だそうだ。…まぁ、それなりに要求される素材もレアアイテム揃いのようだがな。…となると、コレのさらに上位スキルが存在するとなれば…」


「…『既存のゲーム内に登場しなかったアイテム』まで作成できる可能性がある、という事ですね。」


「俺達の最終目的の為に必要な『邪神を完全消滅させる』為のアイテム…リシェルたんの命という犠牲が必要な最低最悪の害悪アイテム、『犠牲の楔』に替わるキーアイテムの作成が可能かもしれない。」


そう。

俺達の最終目的は『リシェルたんを救う事』。

その為にはリシェルたんの犠牲無く『邪神を完全消滅させる』為のアイテムorスキルor魔法…何かしらの手段が必要だ。

…おそらくコレには、俺達の職業スキルが重要な筈なのだ。


ゲーム本編に登場しなかった、俺達の職業。

創造神オルフェリアが俺達を選んだ理由が、そのあたりにあるんじゃないか?

…これが、俺達六人が散々考えた末に辿りついた見解だ。


これに誰の職業スキルが必要なのか…それはまだ分からない。

もしかしたら、複数の職業スキルが必要な可能性もある…なんせ六人も同時に転移してるからな。

…まぁ俺の『インターネット』スキルは、流石に役立てそうに無いがな…。


〈つまり…どういうことだってばよ?〉

〈なんか複雑になってきた〉

〈レアアイテム拾いつつ街や村を救うってコト〉

〈要は当初の予定通りやん〉

〈今出来る事となるとな〉


「そうだお、結局やることは予定通りに、アイテム集めと村や街を助ける、コレだお!」


「…でもそうなると、アイテム回収の為にセラフィード全域を回らなければならないワケで…時間が限られている中、コレは非常に効率が悪い、と。」


「ああ。…なので、一旦パーティーを二つに分けようと考えている。」


〈えっ!?〉

〈マジでっ!?〉

〈まぁ余裕でクリア推奨レベル超えてるしな〉

〈効率を考えると、そうなるかぁ…〉


「ストーリー通りの流れですと、最初にモンスターの軍勢に襲われるのは『辺境都市ツヴォルフ』…大陸の最北端、王都から見ても北に位置しますね。」


「…なので我々は、王都から一度東に進み山岳地帯…『霊山スピリトーゾ』を抜けてツヴォルフに行くルートと、西に進み『海の街オクトパ』を経由してツヴォルフに行くルートの二手に分かれようと思う。」


「これで大陸の上半分はカバー可能な筈です。」


山ルートと海ルートか…


山岳地帯には大型の魔物が多く出没する。

ロックゴーレムにジャイアント、グリフォンに…あとはワイバーンやドラゴンかな?

レアなモンスター素材や山岳信仰の寺院に遺された装備の回収ルートだな。


海沿いルートは…『海の街オクトパ』での海賊討伐、クラーケン退治クエスト…それと、海に呪われた一族のクエスト。

それぞれ海賊の秘宝とクラーケン素材、一族に伝わる遺物がGETできる。


…そういえば、そろそろ海鮮も食べたくなってきたな。

…異世界の魚類は生食OKなんだろうか?


〈質問!そうなるとしばらくは水無瀬がいるチームしか配信無い感じ?〉


「お、よくそこに気付いてくれたお!高見氏、説明お願いするお!」


「…ああ、了解しました。私が新たに覚えたスキルの一つに、『我以外(われいがい)皆我師也(みなわがしなり)』というものがあります。これは、私の『エデュケーション』の影響下にある人物が持つスキルの劣化版を覚えられる…俗に言うコピースキルなんです。」


〈!?〉

〈チートスキルキターーー!!〉

〈異世界モノの定番スキル!これで勝つる!〉

〈コピースキルか…胸が熱くなるな…!〉


「このスキルで水無瀬氏の『配信』スキルをコピー済みです。…一人から一スキル、その上劣化コピーなので私が直接配信することが出来ないのですが…水無瀬さん経由でミラー配信してもらえます。つまり、私か水無瀬さんがチームにいれば両ルート配信可能です。」


〈おお、『配信』もコピー可能なのか〉

〈…待って、一人につき一スキル!?〉

〈地味目だった高見氏が一気に強キャラに…!〉

〈ハズレスキルかと思ってたら実は最強でした!?〉

〈何そのなろう小説〉

〈これは…まさかのざまぁ展開…!?〉

〈誰に対してのざまぁだよ…〉


「一応捕捉しておくと、高見氏がコピーした『配信』は俺だけが見れる仕様だったお…恐らくコピー故に世界の壁が超えられず、こっちの世界でインターネット出来るのが俺だけだった為と思われるお。」


〈…あれ?〉

〈…なんか…弱体化強くね?〉

〈残念スキルか〉


「そこっ!残念スキル言うなっ!…色々と試した結果、私から水無瀬さんに『配信』し、水無瀬さんは『配信』にコメントが可能なので遠距離での連絡手段として有用と判断しました。」


〈疑似的なテレビ電話として使えるのか〉

〈そう考えると便利だな〉

〈正に副リーダーにふさわしいスキルだ〉

〈手の平クルー〉


「まぁそんなワケで、王都を出たらパーティーを二つに分けて、それぞれのルートで『辺境都市ツヴォルフ』へと向かう。…しばらくは六人揃っての配信はお預けになるな。」


そう言って篠原氏が話を締めた。


「それじゃあ…事前説明はこの辺にして、買い出しに行ってる三人が戻ったら出発するお。一旦配信は切るけれど、出発のタイミングでまた再開するお!」


〈了解!〉

〈とりあえずお疲れさん!〉

〈いよいよ王都編も終了か~〉

〈しばらくはリシェルたんともお別れだな〉

(乙乙っ!!)


流れる労いのコメントを見つめながら、一旦配信を終了する。


「…ふぅ、改めて配信って意識して出ると、意外と緊張するものですね…。」


「急に出演オファーして悪かったお。篠原氏も。」


「…いや、前にも言ったが、水無瀬さんのスキルでこうやって現代日本の…スレッドの連中とやりとりするのは良い気分転換になる。自分の意志で異世界にやって来たが…向こうともちゃんと繋がっていると、改めて認識できるしな。」


そんな事を三人で話していると、自室のドアがノックされる。


『…待たせたな、今戻ったぞ。そっちの方は準備OKか?』


「赤城氏達が返って来たお。」


「…よし、それじゃあそろそろ出発しようか。」






「…という訳で、配信再開だお~!」


〈始まった!〉

〈待ってた!意外と早かったな〉

〈お、全員揃ってる〉

〈六人揃った絵面もしばらくは見れなくなるんだな…〉


王都正面の大門前で配信を再開した。

王都入りした時は長い行列に並ばされた大門だが、出る時はそんな事は無いようだ。

王都を発つ馬車や旅人達が、ゾロゾロと歩みを進めている。


「さてさて、それじゃあさっさと出発するか!」


「…名残惜しい。リシェルたんをもっと堪能したかった。」


「う…このタイミングでそんな事言うかなぁ?なんだか後ろ髪引かれちゃうなぁ…。」


口々に軽口をたたきながら、歩き始める一同。


「…ちょっと待つお!さっき買った物カバンに入れたいお!」


「…まったく、出発の直前になって追加で買い物なんてするからですよ。」


「まあまあ。それより水無瀬さん、急いでくれよ?」


慌てて追加購入した香辛料の小袋をカバンに詰め、先を行くメンバーの後を追って駆けだす。




「…あ、そこの人!今、何か落としましたよ?」


唐突に後ろから声を掛けられ、何事かと振り返った。



「……あっ……」



…その女性は、俺のカバンから零れ落ちた小袋を拾い上げると、ゆっくりと俺に歩み寄る。


「はいコレ。さっきカバンから落としたみたいですよ?…香辛料か何かかな?」


「…あぅ…ううっ…」


あまりの衝撃に言葉にならない声をあげている俺の手に、小袋が手渡される。

…その時、ほんの僅かに、指先が触れ合った。


うわぁ…柔らかい手…それにメチャクチャ整った目鼻立ち…この距離で見るとよく分かる…。

…俺の香辛料の匂いに混じって、なんか嗅いだことの無い甘ぁい花のような良い匂いが…。


「これから出発ですか?良い旅になるようにお祈りしています。…それじゃあ!」


「…あ、ありがとうごじゃいますっ!!」


そう言って、その女性は軽く手を振りながら去って行った。




「……。」


「…みな…水無瀬さん…。」


「今のって…まさか…。」



〈マジかマジかマジかマジか〉

〈出発寸前にまさかの大イベント…!!〉

〈うわぁぁぁぁぁぁっ!!!〉

〈超至近距離…かわええ…〉

〈水無瀬ぇ…お前ってヤツは…〉

〈神 回 決 定〉

〈…いや、神回ならぬ女神回〉

〈り…リシェルたぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!〉



「…おいおい、どうしたんだみんな?早く出発しようぜ!」


「…何かあったのかい?」


「…いや、それが…何と説明したら良いのか…。」


「…?」





「…水無瀬氏、立ったまま気絶してる…何コレ?」

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