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2.『六人のオタク』

【エタスト】リシェルたんお通夜会場【part16】


218:名無しの参列者さん

発売から5日経って、段々とクリアする人が現れ始めたな

それに伴い、ヒロイン死亡というショッキングな展開に阿鼻叫喚の嵐が吹き荒れている

…改めて、リシェルたんの冥福を祈ろう…。


219:名無しの参列者さん

>>218

ゆうても古参ファンだけだろ

新規はそこまでショック受けてないで


220:名無しの参列者さん

そういえば、ゲーム初日でクリアしてた奴等

あれから書き込み無いな

マジで異世界転移でもしてたりして


221:名無しの参列者さん

>>220

ねーよ


222:◆名無しの自営業

>>220

あるある(´・ω・`)


223:名無しの参列者さん

>>222

居るじゃん


224:名無しの参列者さん

>>222

居るっ!!


225:名無しの参列者さん

>>222

よう久しぶり


226:名無しの参列者さん

お、釣り宣言しに来たか?


227:名無しの参列者さん

良かった、地震の後だからちょっと心配してたわ

…普通に書き込んでるってコトは、異世界転移は釣りってコトでFA?


228:◆名無しの自営業

どうやらこっちは一方通行じゃないみたいで安心したお(´・ω・`)

>>227

心配させてゴメンお(´・ω・`)

…その辺の話、詳しく説明してもおk?


229:名無しの参列者さん

>>228

おk


230:名無しの参列者さん

>>228

おk


231:名無しの参列者さん

>>228

良いけど…釣りでしたってダケの話だろ?弁明タイム?

あと今更だけど口調はブーンで顔文字はショボンなのな


232:◆名無しの自営業

>>231

そこは個性だと思っていただければ…

それじゃあ、ちょっと長文になるけど書かせてもらうお(´・ω・`)


あの後…



「…うっわ、マジか森だよ…ええぇ、マジで異世界転移したの?」


俺は目の前に広がる薄暗い森林に唖然としていた。

…夢かとも思ったけど、鼻をつく濃い緑の匂いと獣臭さが、ここが現実なんだと嫌が応にも再認識させた。


つい先程まで、実家の自室でパソコンの前に座っていたはずなのに。


地面についたままの尻に、湿った土の水分がじんわりと伝わってくる。



「…よう、大丈夫かい?どこか痛めたりでもしたか?」


「おうっ!?」


不意に後ろから話しかけられ、思わず奇声をあげながら振り返った。

…そこに居たのは、紺と白の看護服?…に身を包んだ、オールバックのオッサ…男性だった。


「君もあの掲示板に居たクチだろう?僕はコテハン『名無しの兄貴』だよ…コレ自分で名乗るのメッチャ恥ずかしいね…。」


そう言うと、照れ臭そうに顎ヒゲを擦る。

…オッサンの照れ顔とか何処に需要が…いや、あるか。


「ご丁寧にどうも。自分は『名無しの自営業』ですお。」


「…リアルでもその口調の人、初めて会ったよ…いや、個性的で僕は良いと思うよ?」


笑顔でそう言う『名無しの兄貴』

…おべっかの無い表情、なんでも許容する大人の余裕を感じるぜ。

…ただ、俺はまだこの状況が上手く飲み込めないでいた。


「…自分、まだ気が動転していて…ちょっと一服してもいいですお?」


「…タバコ持ってるの?…悪いんだけど、僕も一本貰っていいかな?」


俺は無言で煙草を差し出すと、それをくわえた『名無しの兄貴』にライターで火を着けてやった。

…深呼吸するように煙を深く吸い込むと、ゆっくりと吐き出す。


「…タバコ、止めてたんだけどねぇ。流石にこの状況は、吸わざるをえないかなぁ…。」


「…今回ばかりは仕方ないと思うお。」


…異世界の森に、野郎が二人。

無防備にすっ立ったまま、紫煙をくゆらしている。


…まさか異世界転移して最初にした事が、煙草を吸う事だったとはな…。



「…お、居た居た。…って、煙草吸ってるのかよお前等…肝が据わってるな。」


こちらに向かって手を振りながら近づいてくる、大柄な男性。

…と、よく見るとその陰に隠れるように、小柄な女性も一緒に歩いてくる。


「いや、単純に落ち着きたくて一服してるだけですお。」


「…ああ、気持ちは理解できるな。…俺も一本貰って良いか?」


「どうぞ。…そちらの女の人は、吸うお?」


「……貰う。」


一応聞いてみたら、この女性も喫煙者だったみたいだ。

…ちょっと意外。


異世界の森に、喫煙者が四人。

…どうやら俺達、異世界じゃなくて喫煙所に転移してしまったようだ。


「…フー…ちょっと落ち着いたわ、ありがとうな。…ああ、俺は『名無しの警備員』だ。」


「…私は、『名無しの解析者さん』…ちなみに、普段はタバコは吸わない。匂いが付くから。」


サバサバした印象の男性と、ちょっと陰気?な印象の女性。

…一緒に一服したからか、多少は打ち解けた…かな?


「まぁ…最近はアレだけど、ある程度の世代は喫煙者も多いよねぇ。」


「…ああ、昔は煙草吸うのはカッコイイみたいな風潮、あったしな。」


「…私はそこまで歳いってない。」


「ハハ…こりゃ失敬。」


「それにしても、よく煙草なんて持ってきたな。俺は、咄嗟だったんで手ぶらで来ちまったよ。」


「体が消え始めたのを見て、咄嗟に机の上にあったカートン掴んだお。」


「…カートンで持ち込んだの?やるねぇ。」


そんな他愛もない会話をしていると、木々をかき分けて更に二つの人影が現れた。


「…なんだこのヤニカス集団…あれ、ここまだ日本?」


銀縁眼鏡をかけたスーツ姿の男が、口元をハンカチで押さえながらそう呟く。

…非喫煙者か、そりゃあさぞかし不快だろう。


「…これで全員かな?それじゃあこのまま、流れで自己紹介しとこうか。」


身なりのキッチリとしたサラリーマン…といった風体の男性が音頭を取り、名乗り始める。


「俺は篠原修悟。『名無しの最速攻略者さん』って名乗ってたヤツだ。あっちでの仕事は…まぁ管理職だ。」


そう言い終わると、目線で銀縁眼鏡に続くよう促す。

…あ、ポケットから加熱式煙草取り出したぞ。コイツも喫煙者じゃねぇか。


「私は、高見流です。仕事は中学校の教師をしてい…ました。」


ああ、この人『名無しティーチャー』さんか。

そりゃあ喫煙者に厳しくもなるワケだ。


その後、俺達は一通りの自己紹介をやり直した。


大男、赤城護。コテハン『名無しの警備員』。

警備会社に勤めており、以前は自衛隊にいたらしい。


看護師のオッサン、『名無しの兄貴』こと藤村良治。


某マテリアル系企業で研究者をしていたと言う『名無しの解析者』こと白川真理。


…そして。


「水無瀬だお。『名無しの自営業』…実家の酒屋を手伝ってたお。」


「ああ、だからその恰好か。かなり個性的だったんで気になってたんだ。」


赤城氏にそう言われて自分の服装を見る。

いつもの仕事姿、デニムの前掛け。


「…そんなに変かお?」


「いや、前掛けの下の萌えTシャツ!…お前普段からその恰好で仕事してるの?」


…ああ、こっちか。普段通りの姿なんで全然気づかなかった。

喫煙者集団から少し離れて会話に参加していた高見ティーチャーが口をはさむ。


「…そういえば、そのTシャツ『愛max』のリツちゃんですよね?…そこは普通、リシェルたんじゃないんですか?」


「ば…馬鹿言うなお!リシェルたんTシャツなんて、恐れ多くて着れないお!…そっちはちゃんと、自室で額縁に入れて保管してるお。」


「額縁…。」


そんな感じでこの後しばらく、オタトークに花が咲いた。

年齢、性別は違えどオタが六人も集まれば、話題は尽きない。


…と、いい感じで和んできた所で、リーマンの篠原氏が手を挙げた。


「…さて、そろそろ現実を見ようか。…どうやらあのスレに現れた『創造神オルフェリア』は本物で、俺達はエタストの世界…セラフィードに転移した。ここまではOKか?」


「いや、ここって本当にセラフィードなのか?日本のどこかにある森って可能性も…」


「…高見さんと合流する前、森で『ゼリー』種のモンスターを見かけたから、間違いない。」


おおぅ、『ゼリー』…ドラ〇エで言う所のスライム系モンスターだ。…マジで?


「…ん?今『ゼリー種』って言ったかな?…それって、ノーマルのゼリーじゃ無いって事かな?」


藤村氏の質問に篠原氏が応える。


「…察知されない様に距離をとってたから言い切れないが、赤みを帯びていた。…恐らく『ストロゼリー』だと思う。」


「…『ストロゼリー』!?ゼリー種でも中級クラスの難敵じゃないですか!」


高見氏の言う通り、赤い身体のストロゼリーはそこそこの強敵。

耐久値も高いし、なにより炎の魔法を使ってくる。


「…ゲームみたいに、最初は初心者向けの敵…とはいかないみたいだお。」


「そういう事だ。…そこで皆、まずは異世界転移モノお決まりの『例の言葉』を言ってみてくれ。」


…あ、そういえばまだやって無かったな。

俺としたことが…「異世界転移」したら最初に言わなきゃいけない言葉だってのに。

うっかりしていたぜ。


「そ…それじゃあ皆、せーの…!」


「「「「「「ステータス・オープン」」」」」」


キレイにハモった俺達の目の前に、親の顔より見慣れたエタストのステータスプレートが出現する。

…はぇ~、実際に現物を見ると、流石に感動を覚えるなぁ…。


「名前とHP、MP、各種ステータス…はぁっ!?しょっ…職業が既に決まってる…だと…!?」


赤城氏の大声に、急いで自分のステータスを確認する。


…わぁ~…なんか、俺のステータス…低くない?

エタストの主人公であるアルカスやリシェルたんと比べるのが間違ってるのは分かるんだけど、それにしたって…ほとんどのステータスがリシェルたんの初期値より低いぞ…。


…いや、それよりも今は赤城氏の言っていた「職業」の件が先だ。

俺の職業は…



…は…?




「俺の職業は『マネージャー』となっているんだが…こんな職業、エタストには無かったハズだ。…ちなみに、初期スキルとして『マネジメント』というスキルが付いていた。」


「…俺は『ガードマン』だ…あっちでの職業がそのまま反映されてるのか?スキルは…『ガード』って、マンマかよ…。」


「『ティーチャー』って…なんでみんな英語?いや、ガードマンは和製英語のハズ…スキルは『エデュケーション』…教育って…。」


「英語表記ってことは…ああっ!不味いっ!……やっぱり…ハハッ…僕の職業、『ナース』だ…英語だと看護師って男女関係無く『ナース』なんだよ…ハァ。…初期スキルは『バイタルチェック』だね。」


「おじさんナース…大丈夫、需要はある。…私は『アナリスト』。初期スキルは『アナライズ』…あまり面白みが無い。」


「…。」


「…どうした水無瀬くん?…もしかして、何か不味いモンでも引いちゃったかい?」


…さすが藤村氏、勘が鋭い。

…いや、この状況で黙ってたら、普通は分かっちゃうか。


「俺の職業…『フリーマン』って書いてあるお。」


「「「「「はぁっ!?」」」」」


「…モーガン?」


「違う、ただのフリーマンだお。」


黙り込む一同。


…いやぁ…森の静けさが一層際立つな…。

…なんか遠くの方から、魔物の咆哮が聞える気もするけれど。


「…やっぱりこの職業表記、訳がちょっとおかしいみたいだ。『警備員』は本来なら『セキュリティーガード』のハズだし…もしかすると、『自営業』を何か誤訳しているのかも?」


「…ちなみにそれって、スキルはどうなってる?」


「インターネット。」


「「「「「!?」」」」」


「俺の初期スキル…『インターネット』って書いてあるお…。」




再び、辺りを沈黙が支配する。


うううっ…どうして俺がこんな目に…。

何だよフリーマンって、俺は自営業!ちゃんと働いてるっての!


み…みんな、ずっと黙ってる…。

次の言葉を聞くのが…怖い…。




「…ずりぃ…。」


「…え?」


「ズリィぞ水無瀬!!そんな有用そうなスキル手に入れやがって!俺と変わってくれ!」


「あっちの世界のインターネットに繫がるんだとすれば…情報収集が格段に楽になるな。」


「『なろう』で言えば確実にチートスキル。現代知識チートも楽々。」


「いきなりこっちに来ちゃったからねぇ…向こうと繋がってるとなると、精神的にもだいぶ安心できるよ。」


「…もしメールとかも使えるなら、ちょっとだけ使わせてもらえませんか?…学校側に無断で来ちゃったんで、一度謝罪のメールを送りたいのですが…。」


…なんか、想像と違ってた。

…いや、よくよく考えてみれば、こっちの方が正しい反応か。

なにせここにいる六人全員、生粋のオタクなんだから。


「…よし、各自のスキルについては検証するとして、まずは森の外…できれば街か村まで移動しよう。今がどのくらいの時間か分からないが、なんとか日が落ちるまでに辿り着きたい。」


「…ここがエターナル・ストーリーの世界なら、夜間はエンカウント率が上昇するハズだもんねぇ。」


「それにしても、六人全員見事なまでに後衛職っぽいなんて…戦闘面が不安だなぁ。」


「…あ、ストレージの中に初期武器入ってるぞ!ゲームと同じ、『鉄のショートソード』だ。攻撃力は平凡だけど、DPS的には悪くないな。」


「『ストロゼリー』が出現する森なら、ここは『ベベル大渓谷』西側の森のハズ。MAPは覚えてるから、急げば街まで着ける。」


…心強ぇ~、何よこの安定感。

俺一人ならきっとテンパっちゃって、悪い結果に陥ってただろう。


「…どうした水無瀬、ボーっとしてたらはぐれちまうぞ?そんなことになったら、後で救出費用貰うからな!」


金は取っても、助けてはくれるんだな。

…ハハッ…。


「…よし、皆!俺達で絶対にリシェルたんを助けるお!…でも、今日の所は全速力で街まで退避だお!」



…その後、何度かモンスターと戦闘になり、格上相手にも人数とスキルに助けられながら、なんとか日が落ちる前に街まで辿り着くことが…



「…出来なかったな。」


「くそ…もうちょっとだったのに!」


「夜間は街の入口が閉まる仕様まで同じだとはねぇ…。」


「…門前で朝を待つしかない。…森よりはマシ。」


「…門番の人達、私達がモンスターに襲われたら、ちゃんと助けてくれるんですかね…?」


「…朝まで、交代で見張りするお。」



744:◆名無しの自営業

…で、モンスターに怯えながら一晩を明かして

門が開くと同時に街に逃げ込んで宿屋に直行したお(´;ω;`)

みんなベッドに入ると同時に爆睡しちゃって

目が覚めたら昼過ぎだったお(´;ω;`)


それで、やっと落ち着いたからスキルの検証って事で

このスレに繋いでみたってワケだお(´・ω・`)


745:名無しの参列者さん

ふーん


746:名無しの参列者さん

>>744

あっそ!!


747:名無しの参列者さん

>>744

妄想もここまでいくと楽しそうだな


748:◆名無しの自営業

グロ中尉(´・ω・`)

http://*********

http://*********

http://*********


749:名無しの参列者さん

…マジ?


750:名無しの参列者さん

いやいや…いやいやいやwww


751:名無しの参列者さん

>>748

何これウイルス?

怖くて開けないんだけど


752:名無しの参列者さん

>>751

画像と動画


753:名無しの参列者さん

>>752

いや説明しろし


754:名無しの参列者さん

URLは画像と動画

画像はシャーマンコボルトの惨殺〇体とヘキサの街全景

…但し、本物の写真みたいにリアルな画像…朝日がキレイですね


動画の方は…件のシャーマンコボルトの杖を持った女性が

…たぶん『フレイムピラー』の魔法を使ってる所


…え、本当に?


755:名無しの参列者さん

AI画像だろ


756:名無しの参列者さん

>>755

ちゃんと見たか?すっげぇリアルで吐いたぞ俺

>>748

ゲロまみれキーボード弁償しろ


757:名無しの参列者さん

え?じゃあ何か?

コテハン最速攻略者、解析者、ティーチャー、警備員、兄貴、自営業

この六人は本当にセラフィードに行ったっての?


…俺行ってないよ?なんで?


758:名無しの参列者さん

>>757

知 ら ん が な


759:名無しの参列者さん

>>757

創造神「お前はい~らない♪」


760:名無しの参列者さん

>>757

お前もしかしてあの時のスレの941か?

なんつーか…残念だったな

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