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序章 助けに来たよ

邪神の軍勢が王都に迫る。…その数、およそ200万。

王国騎士団や魔導士団、テンプルナイトが必死の抵抗を見せるも…絶望的な戦力差は覆せない。

城壁が崩れ落ち、街のあちこちから火の手が上がる。


私はそれを…邪神の領域、「次元の狭間」から眺めていた。



「…止めるんだリシェルッ!!キミが犠牲になるなんて…そんなの間違っているっ!!」



…空中に浮かぶ私の遥か眼下で、今はもう家族よりも見慣れた顔が、涙に歪む。



「…アルナス…。」



王国に認められた勇者で、私の…たった一人の幼馴染。



「…駄目だよ、アルナス…こうしないと、折角アルナスが邪神を倒しても、また復活しちゃうんだって。」


「でも…でもっ…!!」



私の胸に突き刺さった神具『犠牲の楔』が、心音に呼応して叫び声のような異音をあげる。

…呪法が進行し、私の体はどんどん白い石像のように変質していく。


…確かに、一度は邪神を倒した筈だった。

世界には平和が訪れ、みんなずっと幸せに暮らせる…筈だった。


五年。

たったの五年で、邪神は復活した。


邪神は神、たとえ肉体を滅ぼしたとしても、月日が経てば復活してしまうなんて。

あの時の私達は、知らなかった。


…だから、もう二度と復活しないように。


「神の愛し子」である私の命と引き換えに、邪神の魂を肉体に縛りつける必要がある。



「リシェルさん…そんな…やっと友達になれたのに…!」



…小柄な女性がアルナスの隣で涙を流し、その体にしなだれかかる。

ノエル…二度目となる邪神討伐に同行した、王国騎士団長の娘さん。


…知ってるよ、ノエル…?

旅を続ける中で、貴女がアルナスに惹かれていってたコト。

…同じ相手を好きになったんだもん、言わなくたって分かっちゃうよ。


…私が居なくなった後、アルナスを支えてあげてね?

勇者なんて呼ばれてるけど、本当はとっても寂しがり屋だから…。



『…グウッ…!!「神ノ愛シ子」メ…我ヲ縛リ付ケル気カ…忌々シイッ!!』



邪神の体を、光の鎖が縦横無尽に拘束する。

『犠牲の楔』が私の命を変換して作り出した、封印の鎖。

…この封印が完成すれば、肉体と魂を縛られた邪神は二度と復活できない。

勇者の…アルナスの手で、倒すことができる。


アルナス…アルナス…。


ああ…悔しいな。

頑張って一度は邪神を倒したのに。

…平和になった世界で、私はアルナスの隣に居られない。



『犠牲の楔』の放つ光が一層強まる。

もう私の体は、首から上以外全て石像と化している。



…封印が、完成する。



「…さよなら、アルナス…。」


「嫌だリシェルッ!!リシェルッ!!」









突如、「次元の狭間」に亀裂が走る。


空間が砕け散り、その中から無数の人影が飛び出した。




最初に着地した男性…高等魔術師の法衣を着た人が、息を切らしながら叫ぶ。


「間に合ったかっ!?…ヤバい、ギリギリだっ!!白川っ!!」


呼びかけに答えるように、白衣を着た女性が何かを掲げた。


「全ての呪法を打ち消せ…『回帰する運命の歯車(フォルトゥナ)』っ!!」


虹色に輝く二対の歯車が、音をたてて宙で回転する。

…すると、まるで時間を巻き戻したかのように私の石化が解けていく。


「ああぁぁ…可愛そうに、ボロボロじゃないか…『神級究極治療魔法(アルティメットヒール)』っ!!」


顎ヒゲを綺麗に整えた白衣の男性が声をあげると、血が滲み傷だらけだった私の体はウソのように修復されてしまった。


「『神眼鑑定(プロビデンス)』…うん、呪法も怪我も完全に無くなってる。二人ともナイスっ!!」


銀縁の眼鏡をかけた男性が親指を立てて笑う。

その背後で、大柄な男性が邪神に向かい両腕を構えた。


「…となれば、あとはこの邪神を仕留めれば任務完了だな?…来い、『金剛阿修羅』ぁ…!!」


そう呟いた男性の背に、ゴーレムのように巨大な四本の腕が浮かび上がる。


…そして少し離れた所で、幾つもの空中に浮かんだ光る板に話しかける、細身の男性。


「やったぞおまいら…!リシェルたん生きてるっ!…グスッ…ありがとうっ!生きててくれてありがとうっ…!!」


…泣いて…いるの?

なんで…?



「……あなた達は…いったい……?」


唖然とし、なんとか捻り出した私の疑問に、振り返った六人が応える。


「俺達はキミを――」


「「「「「「リシェルたんを助けに来た!!!」」」」」」

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