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第8話 遠距離恋愛

 花祭りでの再会から、私たちは恋人同士になった。


 だけど、私たちにはひとつだけ、大きな壁があった。───距離だ。


 私は関東、優斗さんは長野。

 車で行けば数時間とはいえ、頻繁に会える距離ではない。


 だから、会えない日々は、メッセージと電話が頼りだった。


 朝、「おはよう。」

 夜、「おやすみ。」

 たったそれだけのやり取りでも、彼の存在を感じられた。


 それでも、時々、寂しさに押しつぶされそうになる。


(今、優斗さん、何してるんだろう。)


(会いたいな…。声だけじゃ、足りないよ。)


 そんな夜、耐えきれず電話をかけると、優斗さんは必ず優しい声で答えてくれた。


「寂しくなった?」


「……うん。」


「俺もだよ。次、会える日を楽しみに頑張ろうな。」


 ───優しいけど、優しすぎるから、よけいに涙が出た。



 次に会えたのは、初夏だった。


 私はまた長野へ向かった。

 

駅の改札で、優斗さんは私を見つけると、走ってきて、強く抱きしめてくれた。


「会いたかった。」


 その一言に、胸がギュッと熱くなる。


「私も、会いたかったよ。」


 やっぱり、声だけじゃだめだった。

 触れられる距離にいるって、こんなに幸せなことなんだって思った。



 遠距離恋愛は、楽しいことばかりじゃない。

 

 会えない時間に、不安になることだってあった。


(本当に私のこと、好きでいてくれてるかな?)


(他に好きな人ができたらどうしよう?)


 そんな弱い気持ちを、何度も何度も飲み込んだ。


 でも、会うたびに思う。

 彼の優しさも、笑った顔も、全部、嘘じゃないって。


 私たちは少しずつ、距離を越えて、心を繋いでいった。


「───ねえ、優斗さん。」


 ある夜、電話越しに私は聞いた。


「もしも、いつか一緒に暮らせたら、どこに住みたい?」


 少し間があって、優斗さんは優しく答えた。


「君がいる場所なら、どこだっていい。」


 涙が溢れて、携帯をぎゅっと握りしめた。


「ありがとう。」


 遠く離れていても、心はこんなにも近くにある。


 ───きっと、この距離さえも、私たちの愛を強くしてくれる。


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