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第2話 仮面うつ

 泣いても、笑っても同じならば、笑っていたい。いつからかそう思うようになっていた。私はとにかく貯金しなければ、と必死に働いた。


気が付けば、泣きたくても泣けないくらいに、作り笑顔がうまくなっていた。心の中ではいつも泣いていた。


なんで私ばっかりこんな思いしなきゃいけないの?…正直、つらかった。医療系の道諦めて、別の道を手探りで始めたからわからないことだらけで、それでも、淡々と仕事をこなしていた。わからないことを誰かに聞く、ということも出来ず、前任者もいないから、私は一人で「やりきる」しかなかった。

「あなた、大丈夫?」

と聞かれても、「大丈夫じゃないです…。もう無理です。」なんて言えるはずもなく。無理して、いつものように作り笑顔で

「はい!大丈夫です。」

とこたえるしかなかった。


私の精神はすでに崩壊寸前だったんだと思う。給料日に預金通帳を見ては、「今月もよく頑張った、私!」と自分で自分を誉めていた。


2年後、会社は倒産し、私は社員寮を出て一人暮らしを始めた。


仕事はアルバイトを、掛け持ちでやっていた。歩きながら寝てしまい、電柱にぶつかることもしばしばあった。


ある時は、ふらふら歩いていたら、

「あの、…いつもこの時間にあなたを見掛けるのですが、どこかお身体の具合でも…?」

と聞かれ、

「いいえ。どこも悪くないです。」

とまたふらふらと歩き出したことがある。


アルバイトで良かったことは、掛け持ちだからお給料が良かったこと、税金が安く済んだことだろうか?


しかし、帰って寝るだけの生活に私は疲れてしまっていた。それでいて、フリーター生活は四年も続いた。やがて、眠れないようになり、不眠が一ヶ月続き、さすがにつらくなり、初めて精神科を受診した。


薬があれば眠れるだろう、安易に考えていた。私のように掛け持ちしている人なら、わかるかもしれない。眠らなければいけない時間に眠れないのは、かなりつらいものだ。


だが、最初に処方されたのは、精神安定剤。診断名も何も言われなかった。


私の不眠症は、ひどいものだった。精神安定剤などで、眠れるはずもなく。「疲れたら、眠れるだろう」そう思う人もいるかもしれない。私の場合は、疲れ過ぎると返って眠れなくなってしまうのだ。


もうこうなってくると、私は心身共に病んでいった。精神科の薬は徐々に増えていき、ストレスからか、突発性難聴にもなった。


医師からは入院を勧められるも、断り、アルバイトで忙しい日々を過ごしていた。突発性難聴の治療のため、しばらく毎日病院で点滴を受けてから、アルバイト先に向かうこともあった。


聴力は完全には戻らなかったが、かなり回復し、治療を終えた。


私がしていたアルバイトは、接客業が主である。人と接するのが好きだからだ。「聞こえない」ことは大変だった。


生きていくためには、お金が必要である。毎日、必死だった。無理し過ぎてしまっていたのだろう。そのうち、アルバイトを休みがちになってしまった。












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