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第1話 モンスターペアレント

これから書くことは、私の約半世紀をかけた復讐劇である。

 私の親は、いわゆる毒親だった。まだ誰にもこの事を話したことはない。もしかしたら、親自身もそのことに気付いていないかもしれない。


父親も母親も昭和生まれの、考え方が古い人で、父親は育児は全くせずに、泣けば「うるさい!」と大声で怒鳴る人だった。母親は、私が「こんなの欲しい」と言えば「そんな我が儘いう子、知りません!」と私の身体を家の一番太い柱に縄でくくりつけるような人だった。


私が中学生の頃、父親が失業し無職になった。それまで父親の保険の扶養に入っていたのに、父親が無職になり、国民健康保険に切り替えるタイミングで、私や姉妹は無保険になってしまった。母親も正社員として働いていたが、母親の社会保険の扶養にも入れてもらえなかった。


高熱を出しても、病院へ連れていってもらえない。夜咳が出てつらい時も、朝から「あんたの咳がうるさくて眠れなかった!」と言われる始末。私だって、咳がつらくて眠れなかったのに…。


無保険だと学校教師にバレたのは、修学旅行の前に保険証のコピーを提出するように言われ、保険証がないことを職員室で打ち明けたからだ。


両親は、それだけではない。私や姉妹が幼い頃から、目の前で大声で夫婦喧嘩をしていたのだ。母親は口だけだが、父親は母親に対し殴る、蹴るなどの暴力もあった。


私も、父親に頭を強く叩かれたことがあった。私が悪い事をして叱られたなら、まだわかるが理不尽なことで怒鳴られ、頭を叩かれたものだから腹が立って仕方ない。


高校生になり、修学旅行が近付くと、担任教師より、虫歯全て治すようにとクラス全員に言われ、私は少ない預金を下ろして全額自費で歯石除去や、虫歯の治療を行った。(地味に痛い出費だった。)


またまた保険証のコピー提出を求められ、担任教師に私の家に親がいない時間帯を狙って電話で、保険証がないことを伝えた。


担任教師はかなり戸惑ったことだろう。でも、真実を伝えるしかなかった。担任教師は優しく、静かに私の話を聞いてくれた。親友にさえも打ち明けたことがない、真実。そして、モンスターペアレントのこと。


「…そうだったの。何も知らなくてごめんなさいね。大変だったわね…。」

担任教師からそう言われ、私は気が付いたら涙を流していた。一気に話したのと、ようやく打ち明けることが出来たことで安堵していた。


高校卒業後は、姉も私も妹も、みんな家を出て独り暮らしを始めた。私は進学したが、学生寮に入り、給付型の奨学金も受けていた。親元を離れたことで、親の顔色を伺うことなく勉強に励むことが出来たからか、成績も良かった。


このまま、国家試験合格して、卒業…。そのように考えていたが、両親はやたらと私にプレッシャーを与えてくるようになる。私は必死に頑張っているのに、「もっと頑張れ!」励ましているのかもしれないが、私にはプレッシャーでしかなかった。


ストレスが溜まる一方で、心身に不調を感じるようになり、学生寮で休んでいたら、教師陣が代わる代わる私の部屋を訪ねてきたのには驚いた。


結局、私は1ヶ月間休学した後、退学してしまった。今思えば、あの時辞めなければまた違う人生を歩んでいたのかもしれない…。


辞めた理由も親にあったが、親には言えずにいた。寮からまた両親のいる家に戻り、ハローワークで社宅か、社員寮付の仕事を探した。


毎日

「なんで、辞めたんや!」「お母さん、いつも泣いてるんやぞ!」

と怒鳴られていた。私だっていつも心の中で泣いていたよ…。一番つらかったのは、私だよ…。何も知らずによくそんなこと言えるね…。あ、そっか、何も知らないから言えるのか…。。。


それから始まった、私の人生最大の復讐…。


私はこんな人生で終わらせたくはない。私だって、幸せになりたい。誰からも愛されずに育ったから、無償の愛が欲しい。幸せになって、「復讐」したい。


そんな強い意思があったからこそ、今の私があるのだと思う。



















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