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名前


「晃次郎さん」

「えっ?」

素の声が出た。榊は、名を呼んだ菫を凝視する。

「どうしました?」

「いや……名前、」

「榊さんの名前ですよね?」

「うん。いや、そういうことじゃなくて」

菫は首を傾げる。

「何で下の名前で呼んだんだ?」

「榊、のとこから読みましたけど」

「はぁ?」

間の抜けた声を出す榊に、菫は封筒を見せる。

「榊さん宛の封書ですよ。業者さんからです」

「宛名読んだだけ……?」

「え。何か悪かったですか?」

榊は顔を手で覆う。

「何も悪くない。気にするな」

菫は首を傾げたまま。榊は榊で、名を呼ばれた威力に未だ打ちひしがれていた。



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