贈り物
いつもの佐和商店。
「すみちゃん、これやるよ」
閉店間際の暇な時間に、菫は榊から小さな紙袋を受け取った。
「!何ですか?これ」
不思議そうな菫に、榊が笑って説明する。
「出先で買った。面白い露店だったから、お土産だ。前、日本刀キーホルダーくれたじゃん?お返しだな」
「ありがとうございます。お返しとかそういうつもりじゃなかったんですが」
照れたような、はにかむような表情の菫に、榊の眼差しも優しくなる。
「気にすんな。貰っとけ貰っとけ」
「ありがとうございます。ーーペンダント?」
袋からそれを取り出した菫は、光に翳す。雫型の少し大きめな水晶がペンダントトップになっているだけの、シンプルなチェーンペンダント。
「水晶らしいぜ」
菫は早速首に着ける。白いワイシャツの上で、雫が揺れた。
「大事にします」
パッと、文字通り花が咲いたように笑う菫。
あまり見ない嬉しげな笑みに、榊もつられて笑った。
(外では分からんが、ここでももっとそうやって笑えば良いのに……ああ、いや、他の奴らに見せるのは惜しいような気も……)
何とも複雑な気分になる榊だが、自分の土産物が喜ばれたのは素直に嬉しい。
その日から菫は、ワイシャツの下に隠してペンダントを着けて来るようになった。
ある時、菫が店長である吉瑞にペンダントのことを尋ねられ、「大事なお守りです」と笑って答えていた。
それを榊がうっかり聞いてしまい、動揺でレジを盛大に打ち間違えたのは別の話である。




