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女の子と


二十四時間営業でないコンビニ佐和商店の話。


タッタッタッタッと、店内を子どもが走る足音がする。私・芽吹菫は、陳列棚を整えながら身を固くした。榊さんは外の灰皿を掃除しに行っている。閉店間際のこの時間、お客さんはいない。つまり。人じゃない何か。

中腰から立ち上がり、辺りを見渡す。明るい店内はいつも通り。

通路の真ん中辺りにいた私は、とりあえずカウンターへ戻ろうと足を踏み出す。そこへ。

キャッキャと楽しそうな笑い声と共に、五〜六歳ほどの着物の女の子が、カウンターから棚前を横切って行った。

「えっ、」

初めてはっきり姿を見た。というか、本当に人じゃないの?

でも、自動ドアが開く時の音楽は聞いてない。

私は女の子を追って、反対側へ回る。

「お姉ちゃん!見つけた!」

棚を出た瞬間、パッと抱き付かれた。真っ赤で艶やかな着物。声の明るさと触れる身体の冷たさに、一瞬背が凍る。

「……あなた、は、」

動けないまま女の子を見ると、おかっぱ頭に椿の花飾りが愛らしい、可愛い子だった。

女の子はにこにこしたまま、言った。

「わたし、すずっていうの。おばけなの。お姉ちゃん、やっと視えたね!わたしのこと」

頭が真っ白になる。理解が追いつかない。どういうことなの。気絶しなかった私を褒めたい。

「お花のお姉ちゃんは力が強くてちがうのにじゃまされてるから、わたしみたいなのは見えづらいの」

「え?」

ぎゅっと抱き締められ、私は自然と受け止めていた。すごく軽い。

「私ずーっとここにいたから、お花のお姉ちゃんと話してみたかったんだー!」

不思議と、怖さが消えていた。それが良いことなのか悪いことなのか、分からないけど。お花のお姉ちゃん、て、私のことか。

「……すずちゃん、ていうの?」

「うん!」

抱っこをせがまれて抱えたら、片手でいけてしまった。人形みたい。そのタイミングで、榊さんが戻って来た。私とすずちゃんを見比べ、今まで見たことがない表情をしている。気持ちはよく分かるけど。

「すみちゃん。……何があった……?その子は、」

「……すずちゃん、というらしいです」

「すずちゃん」

真顔になる榊さんを見ながら、夢じゃないんだなって、他人事みたいに思った。

腕に抱えたすずちゃんは、ずっとにこにこ笑っていた。










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