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あれから数ヶ月。
もう、ほんっとうにいろいろあった。
クセが強いのはそうだし、透さんみたいにすんなりいかない時もあって……。
その話はできたらしようと思う。
そして今は、ついに最後の4人目に会うことができたあと、別れるところだった。
◆◆◆
「今日はありがとう!会えてよかったよ」
「うん!魔法つかったときはいつテンセーするかわからなかったから、おじいさんになってたらどうしようかと思ってた」
「さすがにそこまではないと思うけど……。まあ、前からと同じ歳で会えてよかったってことで!ね!」
「そうだね!じゃあまたね、お兄ちゃん!お姉ちゃんも!」
「うん、またね!」
「またね」
私も少しは慣れたと思う。話にはついていけないし、さんざん振り回された時もあったけど、この4回でだいぶ耐性がついたと思う。
「さ、彩音、帰ろう!」
「うん、そうだね……」
「どうしたの?なんか疲れてる?」
「いや、今回特に体力も精神も使ったの覚えてないの??」
「ごめん冗談じょーだん!明日は休みだし、今日はゆっくり休もうか」
「うん……」
「……かわいいなぁ」
「ん?何か言った?」
「ううん、なんでもない」
今日会ったのは弓使い。弓道場で1人練習しているところに半分押しかけて行ったのだが、幼いながら、怖いくらいに弓がうまくてびっくりした。しかも強すぎるのと幼いので相手がいなかったらしく、「お兄ちゃんなら勝負できるでしょ!」と満足するまで付き合わされたのだ。
もちろん私も巻き込まれて、筋トレに走り込みに精神統一まで、すごく大変な一日だった。
幸い今日は土曜日だったので、このあとと明日はゆっくり休もう。と、そう思っていた。
◆◆◆
渡の家にて。
「今日は解散でよかったのに」
「ううん、僕に付き合わせて大変だったんだし。少しくらいゆっくり休んでってよ、彩音帰ったら勉強しちゃうでしょー」
「うぐっ……見破られてる……」
「そりゃあ、幼なじみだからね!何年の付き合いだと思ってるの!」
「なんで最近それにこだわるの……。まあ、ありがと。そんなに言うんだったら遠慮なく休ませてもらうね」
「彩音だったらいつでも大歓迎だよ!なんでも言ってね」
私は、親が少し厳しいのだ。友達、特に渡といるなら何も言われないが、家にいると勉強したのかうるさく聞かれる時がある。自然と友達とは遊ぶ、家では勉強という自分ルールが染み付き、家ではどんなに疲れていても勉強をするようになっていた。
今日はすぐベッドに入るつもりだったが……やはり、勉強をしてしまうだろうと見抜かれてしまった。ただ、こういう気遣いはすごくありがたくて、渡にはいつも感謝している。
「渡、いつもありがとうね」
「……急にどうしたの?」
「なんか、改めてありがたさを実感したなーって思って」
「……役に立ててるなら、その、よかったよ」
「うん……ありがとう」
「ほら、もうまぶた閉じかけじゃん!絶対疲れてるでしょ、ブランケット貸してあげるから」
「うん……あり、がと……おやすみ」
「おやすみ。……ゆぅっくり、休んでてね」
「……?うん…………」
何か違う意味を含んでいた気がしたのは、気のせいだろうか。
温かいお茶に、テーブルと柔らかいクッション付きの椅子。それにブランケットまで加わって、私は眠気に耐えられず、突っ伏して寝てしまった。
□□□
夢を見た。
私は武装して、邪悪の根源に立ち向かう。
かわされ、かわされ、かわされる。当たらない。
捕まえられた。
□□□
捕虜になった。
しかし、優遇されている。
豪華な食事に、きれいな服。
話しかけてくれる人も、遊んでくれる人もいた。
なんで、こんなにしてくれるんだろう。
□□□
突然、呼び出された。
いつも通り手助けしてほしいのかな、それとも何かしちゃったかな。
「『・・・』!来たよ!」
突然、剣が目の前に現れた。
□□□
痛い。怖い。辛い。痛い。熱い。苦い。痛い。苦しい。助けて。なんで。
なんで、こんなことするの。
わたし、なにかした?
なんで、なんで。痛い、いたい、なんで……。
なんで、そんな顔するの?
彼は今にも涙がでそうな表情をしながら、
自分の胸に、剣を刺した。
◇◇◇
「……ぅあああぁああ!」
今の何だったんだろう、夢?はっきりしてて、痛みもあって、でも空ごとのようで……。
1つだけ確かなのは、今も胸が酷く痛むことだった。
「大丈夫?すっごくうなされてたけど……」
「あ、ごめん渡、もう……大丈夫」
「何か、辛い夢でも見たの?」
「う〜ん……どっちかって言うと、不思議な夢?かな」
「そうなんだ。どんな夢だったか、聞いてもいい?」
「…………で、彼が自分を刺して……なんかリアルな夢で、怖くなっちゃって。ごめんね、こんな話して。変だよね」
「……ふふ」
「?なんで笑ってるの?」
「ううん、なんでもないよ。それで?それからどうなったの?」
「いや、そこで目が覚めたから……あとは何も」
「そっか」
なんで、渡はこんな顔してるんだろう。
なんか、見たことあるような……。
「じゃー、その悪夢を忘れるためにも、夕ご飯食べよっか!もう準備してあるんだ」
「え、ごめん!そんなに食べていくつもりじゃなかったんだけど……私寝てた間にやってくれたんだよね?」
「大丈夫大丈夫!もう彩音んちに電話入れてあるし、うちは帰ってこないし!今日は泊まっていきなよ、疲れてるでしょ?」
「あ、ありがと……」
用意周到すぎて怖いぐらいだ。前からこういうときは行動力あったけど。
にしても、今日は何もかもやりすぎのような……?
「さ、食べよ!いただきまーす!」
「い、いただきます」
やっぱり美味しい。
渡が作ったものは何回か食べたことあるけど、毎回美味しいんだよね……プロ級というか。
なんでこんなに美味しいんだろう?いつ習ったんだろうか?
あと、これは初めて食べる料理なのにどこか懐かしいような……?
「ねぇ、わたr……」
「おっと、大丈夫?」
「あり、がと……なんか、ねむぃ……」
「きっと体が限界なんだよ。一旦寝たとはいえ、完全には回復してなかったんだろうね」
「そう、かな」
「うん。あとは任せて、もう寝な」
「う……おやすみ………」
「うん、おやすみ」
最後にうっすら見えた彼は、
夢で見た彼と、同じ目をしていた。
読んでくださりありがとうございます(*^^*)