世界のコマンド
世界のコマンド
20××年人類の科学技術は止まる事を知らず加速度的に日々進歩を続けていた。
そして日本に科学そのものの概念について研究している者たちがいた。『魔法研究所』馬鹿馬鹿しいような名前の研究室である。研究所は横浜市の南方金沢八景に居を構えるいた。研究内容としては『定義』と定められている者がなぜそうなるのか。
例えば当たり前に感じている電気。電気の発電には主に電磁の差を利用する。その電磁の差とはなぜ発生するのか。他にも『万有引力の法則』物には質量の大きさに比例して物を引き付ける引力があるとい法則だ。ではなぜ質量を持ったものが引力を持つのか。
このような普段そうなるんだからそうとしか言えない『定義』の部分に着目し研究した研究所がある。世界の根本たる原理。考えてみれば電気だって理論が当てはまるだけで、その原理を知らない人から見ればファンタジー物の小説や漫画、アニメで出てくる『魔法』と変わりない物だ。そうなると何か新しいエネルギーの生み出し方があるのではないか。そういった研究が主な目的であった。そして何十年と研究を重ねていくにつれ“定義”は何かしらの言語の様な物で統括されているのではないかという仮説が浮かび上がった。それはまさにこの世界が何者かによって作られなのではないか。そう思えてしまうような不穏な仮説だった。しかしその仮説は語学解読の専門家を踏まえ徐々に確からしさを増していく。解読されていくにつれ背筋を伝う謎のゾワゾワとした不穏感を抱えた。しかしそれがさらに好奇心を駆り立ててついに、その言語のような物の解読に成功した。それは世界のコマンドの様な物であり、その言語をものに付与することで物理法則の全く異なる物体を作り出せるとされた。
4月12日、研究所はこの言語を『コマンド言語』と呼び、実験としてコマンド言語を使い一つ目の物質に付与を行った。
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≪サーバに未確認のIDが検知されました≫
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≪申請中≫
?「ん?コマンドに辿り着いた生物がいたのか。ほう。明らかな言語を持った知的生命体。『人類』か。」
同日、晴れていた筈の空が徐々に影っていく。
途方も無く大きな雲の様なものが、世界中同時に空を覆った。雲は次第に大きな人の様な二足歩行で四肢のある姿へと変わっていった。
ホログラムの様な巨人は頭の位置がぼんやりと赤く光っていた。どういう原理か。それは全世界の住民全ての人の目に同じ様に写っていたという。写真を撮る人や、恐怖を感じ座り込む人車でどうにか逃げられないだろうか、と考える人、人類はその光景の前にパニック状態を起こしていた。未知の情景を恐れてるのは明らかに動物としての本能であろう。そしてこの超常現象を多くの人が≪神≫と認識することになる。
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≪刮目せよ≫
聞いたこともない様な言語で放たれた音は何故か地球に住む全ての人類が≪刮目せよ≫と言っていること認識し不安なども関係なくすぐに強制的に鎮静化された。建物に入っている人は窓から外を見て、窓のない建物の中の人々は表へ出た。見るのが当たり前であることの様にその巨人は人類に注視させた。
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≪今日人類は世界の真理に辿り着いた。≫
耳では全く聞いたことのない筈の言語が勝手に翻訳されて理解される。この巨人が言っていることが理解できる。そしてこの巨人こそが神と呼ばれる存在であろうことはほぼ全員が察する物となった。
≪私はこの世界の創造した者の1人だ。自然成長に任せたマップの中でこの空間において、マップの製作に用いた私たちの言語を解読し使おうとするまで成長した生物がいた。
だが、コマンドは管理者権限が必要なため実際は意味を持たないただの言語だ。
しかしそれを導き出した者の種に褒美として一つだけどんな願いでも叶えてやろう。
“星が太陽周りを一周する短時間の間『人類』によっての総意を汲み取り叶えよう"
世界の法則を変える願いでもなんでも叶えよう
では一年後の今日また合間見えよう。≫
そう言い残すと巨人はそのまま形がぼやけていく様に只の雲へと姿を変えて少しずつ空へ消えていった。
人々は、超常現象の正体が神であると確信を持ってしまった。
どんなに非科学的だと論破したい人でも本能でどうしようもなく神だと認識してしまう。
そう"本能でわからされた"のだ。
直後より世間では神の言葉を解析したのは私だ!と主張する人で溢れた。説明をさせても論点のズレた話をする者がほとんどでただ実績を求めて
「我々の手柄だ!だから世界のルールを改変するのは我々の権利だ!」
と主張する団体も出てきて収集が付かなくなった。あまりにも突拍子もないことだから適当な論文でも論点が合わないことが多く質問に対して曖昧なものしか返せないのがほとんどの国で多少確からしくても実証が無かったりなど大騒ぎとなった。
また各宗教でも神の降臨において信憑性を持ち一気に勢力を広げるきっかけともなった。
3日後、4月15日『魔法研究所』は例の研究成果と今回の件で深い繋がりを感じ世間に公表する流れとなった。論文は世界に公表されて『コマンド言語』≪神≫が発した言葉がそれであるのが確からしいという物でもあり一気に信憑性を増した。魔法など非科学的で馬鹿げてる。そういった声が多く出る中アニメの国ならではの発想のもと考えだした厨二病のような研究内容は嫌味なほど現実とリンクしていた。
魔法研究所の持ち出した資料によって裏付け証拠も確定したことにより日本では、偽った発言をした者を詐欺罪として書類送検していった。他国でも似たような検挙があったようだ。それによりある程度はデマは収まりを見せた。しかし国が研究所に似たような資料を出させ私たちが先に辿り着いていた者を横取りされた!
と『魔法研究所』を訴えるような国が増えだすのにも時間は掛からなかった。
4月18日臨時国会が開かれた。
議論内容は≪神≫に求める内容、外国などに対応する会議だ。
珍しくと言っても良いのだろうか。寝てる人が居ない。まぁ緊迫した会議にはなり喧嘩が勃発するのは食い止められないものもあったが、結果、民が為の要望は薄くなっていき皆自分の意見を通したい欲が見えるような会議になり、普段寝てるような人々が意見を合わせられる筈もなく崩壊状態で保留となった。
そして国会の内容で世間では大炎上をかまし、テロも多発し始めてしまった。自分達に利益が多そうな制度を作ろうとした政治家は殺害されるまでに至った。
しかし日本だけでなくほぼ独裁政治をしているような国以外は殆どが似たような状態だった。
4月30日臨時でのサミットが行われた。
しかしここでも意見が合うことは決して無く対立した。大きな話題として上がったのは日本が『魔法研究所』の成果を我が国のものと言い張り権利を主張した事だった。他国がそれを許すはずなどなく口論は激化していき殴り合いなども発生する事態にまで発展した。そして解決の糸口すら見つからずにそのサミットはお開きとなってしまった。
5月6日、『魔法研究所』が新たな世界のルールに良いのではないかと、いくつかの定義設立案を発表した。一つ目はコマンド権限を得ること。そうすればそもそも神にすらなれるはずだ、という考えがあった。そして最も推した内容になった。しかし問題になったのはコマンド言語は解読に成功した『魔法研究所』があらかた秘匿しているということだった。その為、その力の研究所による独占、また日本にやる独占を恐れ強い反対を買った。次に魔力を得るという考え。それこそファンタジーのような新たなエネルギー、ほんの少しの媒体で大きな現象を起こせる新エネルギーはかなり良いのではないかという、改変案を持ち出した。しかしそれも同様に力の集中が起きることを危惧した国から大きな反感を買う意見となった。
日本にある魔法研究所に決定権を委ねるということは国際情勢的に面白くない国が多くい結局はそんな醜い意地の張り合いによって意見が割れ続けていった。
そしてそれは、必然というように訪れた。
6月1日、【ロシアが日本に宣戦布告】
日本の第9条などお構いなしにロシアが攻め込んできたのを発端に第三次世界大戦の幕開けとなってしまった。自分達さえ良ければ良い。そういった考え方が大きくなっていく。日本は海に囲まれた立地ゆえにほぼ空襲による攻撃が主なものとなっていた。爆弾を多く乗せた飛行機が街の上空を飛ぶ。自衛隊が出動しかなり効率よく敵機を上空にて爆散させた。しかしその機体の破片が街に降り注ぐこともあり大きな被害が相次いだ。アメリカは協定通り保護目的でロシア側と本格的にやり合う流れとなった。
6月中盤を過ぎた辺りで宗教団体が武力を集め出し7月ごろには第三次世界大戦に参加するまでに武力を拡大していった。神の存在が現実のものとなった今神の巫女を騙る者が大いに増え教団に信者が増えていったことも要因となった。教団は各々
「我々が神の使徒であるから我々がその改変案を作る。」
と言った。世界中で戦火が上がる中宗教理念を押し付ける形で“死は救済”など口にしながら洗脳されたような死を恐れない兵が参戦していった。国同士のしがらみもない為平然と一般人を巻き込みながら蹂躙していく。だが実際空襲を行っている国も一般人は殺さないなんて綺麗事だけで平然と巻き込んでいくのは変わらなかった。日本は結局1番権利主張に正当性があった為世界各国から狙われてしまうことになってしまった。中国や韓国といった近隣諸国にも日本は狙われて出していた。
その結果
8月2日【東京原爆投下】
本格的になりふり構っていられなくなったのか、ロシアが東京に原爆を落とした。大きな黒いキノコ雲が出来上がりそれと同時に凄まじい勢いで熱風が辺りを吹き飛ばしていく。国会付近にいた議員も当然のように諸共吹き飛ばされた。原爆は広島のもののおよそ3倍の大きさなものだった。半径約6kmに熱波が広がり全てを飲み込んでいくその光景を範囲外から見た者も目が焼け爛れ高濃度の被曝によって命を落としていく。東京から地方へ逃げた人も少なくはなかったが、約200万人以上の死者が出たとされた。まさに終わりの始まりを意味する光景がそこには広がっていた。
これがきっかけとなり核戦争が始まってしまうことになる。日本はまた原爆の被害を受ける羽目になってしまった。国会のある東京が爆心地となったことで日本の指揮は一気に低下し指示通り動くのが強みの自衛隊は崩壊していった。自衛隊を逃げ出す者も急激に増え、防衛力が下がった日本は一気に滅びに一直線で向かっていった。日本に投下されたこともあり、後日アメリカはロシアに対して核を飛ばし始めた。このままではアメリカにも権利が行かずロシアに権利を持っていかれると思ったようだ。その核戦争に同調するように世界各国が核を使い始めた。
8月3日【大阪、神奈川原爆投下】
国会が潰れてトップがいない状態の国になった日本は降伏することも叶わぬまま原爆を落とされ続けるようになってしまった。金沢区にあった魔法研究所の真上に落とされた形になり破壊され尽くし所員1人として生き残りは居なくなってしまった。研究内容は全て虚無に追いやられ世界に残された論文だけではもはや再度辿り着けるか怪しいものになった。
同日アメリカによってロシアに原爆が落とされ始めた。本格的な核戦争であからさまに収集が付かなくなってしまっていった。日本が滅んだ今最初の戦う理由などとうに忘れて戦争は続いた。もう生き残っている国が自分の国だけにでもならないと止まらない。そんな勢いだった。
9月末、この頃までに世界中投下された原爆は200を超えた。全世界の総人口が80億人から約20億人に減った。人類の滅びが目前となったようやく悟り話し合いの場が設けられるようになった。日本からは日本人が誰も見たこともないような政治家が派遣され降伏の意を伝えにいくこととなった。指揮系統がほぼ完全に消失していること。天皇家ですら全員死亡していたことが報告され降伏が認められた。
10月20日停戦協定が結ばれることになった。今後は話し合いで決めて行こうという形に決定した。しかしいくら国ごとに意見を出し合ってもまとまるわけもなく、武力を持って制すことを選択肢に入れてしまった国々はこの後も世界のルール改変について気に食わないと何度も戦争になりかけることが続いた。ルールなんてあってないようなものとでもいうように原爆を落とす国も少なくなかった。
12月に入り残り期間が無いという焦りから結局停戦協定は破綻し核戦争へと戻ってしまった。戦争がどうしようもなく続き疲弊した地殻がついに悲鳴を上げた。星の崩壊が起こってしまったのだ。崩壊した地殻からは溶岩が噴き出し気候は異常に急変したりを繰り返し自転は崩れていった。
計算上の2月18日
異常気象などの要因により地球上の生物が絶滅を迎えた。
4月10日
≪神≫「なんだ、自分たちで既に叶えたのか」
fine
最後まで読んで頂きありがとうございます。
あまり文章力に自信がないので変なところはお許しください。