復縁 と 缶コーヒー
誠は、別れた元カノと思い出の場所にいた。
彼女と昔話をする中で、高校時代よくミルクティーを飲んでいた理由を知る事になる。
かつて別れた2人は、どんな未来を辿るのか……。
俺はポケットから、買ってきた甘いミルクティーと、微糖の缶コーヒーを差し出した。
「 じゃ、コーヒーもらおっかなぁ〜 」
亜美はそう言うと、微糖の缶コーヒーを選んだ。
亜美とは小学校の頃からの幼馴染で、高校卒業まで付き合っていた。
初めて手を繋いだのも、初めて誰かを抱きしめたのも、初めてキスをしたのも亜美だった。
それなのに俺は、大学での新生活に舞い上がり、結果、亜美を傷つけ失う事になった。
大学を卒業し、この春から地元の中小企業に就職すると、今まで疎遠だった地元の友達とよく会うようになった。そこで、亜美の近況を聞いた俺は、居ても立っても居られなくなり、会う約束を取り付けていた。
「 コーヒーなんて飲めたっけ? 」
「 高校くらいまでは、飲めんかったかな〜。でも、今はコーヒー大好き、カフェイン中毒!! 」
亜美がおどけて言ったから、俺もつられて笑った。
俺達は、思い出の場所にいた。そこは小学生の頃よく2人で宿題をした場所で、初めて思いが通じ合った場所だった。
「 亜美、高校の時は、ミルクティーばっかり飲んでたじゃん! 」
「 それはさ、今だから言っちゃうけど……。コーヒー飲んだ後でキスすると、きっと苦いじゃん! だから……。本当は、結構前からコーヒー派だったんよね〜 」
「 アハ、何だそれ〜 」
化粧が濃くなった、らしくない亜美が、この日初めて可愛く見えた。
「 しかもさ、コーヒーよりミルクティー飲んでる女の子の方が可愛いくない? 」
確かにあの頃のキスはすごく甘くて、俺は毎回甘い味と匂いにクラクラさせられていた。
あの頃の亜美は、俺に好かれるために、わざと甘いミルクティーを選んで飲んでたんだ。
「 別れた時……、傷つけてごめん……」
俺は、ずっと胸につっかえていた言葉を吐いた。
「 何それ〜、今さらじゃない? 」
亜美が、強がって明るくそう言った事に気付いてしまった。
「 本当、ごめん 」
「 あの時はさ、辛かったんよ……すごくね。でも、もう昔の事じゃし、気にしてない 」
「 それでも……本当にごめん……」
「 だからか〜。みんな、お正月にも帰って来んって心配しとったよー! 気にして帰って来れんかった? 」
「 いや、そりゃ、そうじゃろ? 全部俺が悪いんじゃけぇ、合わせる顔ないし…… 」
「 それでも、今さら私を呼んだのは何でなん? 」
「 それは…… 」
あれだけ傷つけたんだ。
そう簡単に復縁できるなんて思ってない。
でも俺は、甘くて苦い、コーヒー味だって大歓迎だ。
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