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聖夜にスマートフォンを配っていただけで逮捕されたわしは『聖人』の力で無双する。「携帯電話の値引き規制? わしは知らんぞ? どういうことじゃ! いまさらサンタを信じると言われても、もう遅い」

作者: サターン
掲載日:2021/12/31


「ふぉっふぉっふぉっ! ハッピーメリークリスマース!!」


 色とりどりの装飾でにぎわうパーティーの会場に、笑い声が高らかにひびいた。


「わあい! サンタさんだ!」

「やったぜ、プレゼントちょうだい!」


 まっ赤な衣装に身をつつむ、わしの名前はサンタクロース。

 遠い国よりやってきたクリスマスの聖人じゃ。


「ふぉっふぉっ。みんな今年もいい子にしていたかな? はい、プレゼントだよ」


 わしは袋から小さな箱をとりだした。


「ありがとうサンタさん! ねえ今開けてもいい?」


「もちろんじゃよ。さあ、どうぞ」


 女の子が箱を開ける。

 中には手のひらサイズの、ディスプレイとカメラが付いた黄色い機械が入っていた。


「うわぁやったあ! P・PHONEだ!」


「すっげえ! パイナップル社の新型だぜ!」 


「ふぉっふぉ。よろこんでもらえたかの? さあぼうや、もちろん君の分もあるぞ」


「うひゃあ! かっこいいぜ。サンタのおじちゃん、ありがとう!」


 まったく子供たちの笑顔ほど尊いものはない。


 なごり惜しいが次の子供たちが待っておる。

 今夜だけで世界中の子供たちにわし一人でプレゼントを配らなきゃならん。



 わしは子供たちに手を振ってその場を後にしようとしたーーそのときじゃった。



 バアン!!



 突如、家の戸が乱暴に開けられた。

 そして、武装した何人もの男たちが室内になだれ込んできたのじゃ。


「いたぞ!! サンタクロースだひっ捕らえろ!!」


「全員動くな!! やっと見つけたぞ。このうす汚い犯罪者が!!」


 男たちはまたたく間にわしを取り囲んだ。

 そしてわしを後ろから羽交い絞めにするのじゃった。


「な、なにをする!? きみたちはいったい何者じゃ?」


「我々はこの国の警察である! 貴様がサンタクロースだな? 我々と署まで同行願おうか」


「ま、待ってくれ。まるで意味がわからんぞ。なぜわしが逮捕されなきゃならんのじゃ。今夜のあいだに子供たちにプレゼントを配らなきゃならないんじゃ。お願いじゃ、この手を離してくれんかのう」


 この国の警察じゃと?

 わしはまったく身に覚えがないのじゃが。


 ふーむまいったのう。

 時間が無いというのに、この者たちはどうしてこのようなことを……


「悪いがそれはできない相談だな。サンタクロース……お前は我が国において重大な犯罪を犯した。携帯電話の値引き規制という言葉を知らないとは言わせんぞ」


「……?? 携帯電話……値引き規制? な、なんじゃそれは……聞いたこともないぞ」


「ふん、しらばっくれても無駄だぞ。いまこの国では携帯電話の値引きは20000ゴールドまでしかやってはならんと決まっておるのだ。今日だけでもお前が数千もの世帯に携帯電話を無料で配っていたのは調べがついている。これは明らかな逸脱行為だ、まったく許しがたい!」


 わしは男たちの言っている意味がわからなかった。

 これまでプレゼントを配っていてこんな事になったことなんてなかったからの。

 いったいこの国でなにが起こっているのじゃ。


「値引きが20000まで? わ、わしはプレゼントをあげているだけじゃぞ。別に金をとっているわけでもないのになんでこんな事になるんじゃ」


「黙れ、じじい。この死にぞこないが! 携帯電話の値引きは20000ゴールド程度が望ましい。それがこの国の政府の意向である、何人たりともそれに逆らうことは許さん!」


 警察を名乗るその男は威圧するようにわしの顔に警棒を突きつけると下卑た笑みを浮かべるのじゃった。


「覚悟しろよこの老いぼれめ。お前は特別に過酷な監獄にぶち込んでやるからな。死ぬまで太陽は拝めねえぜ? くくくっどうだ、命乞いでもしてみたらどうだ。少しは俺の心象が変わるかもしれんぞ?」


 この男、間違っておる。

 わしは男をにらみ返すのじゃった。


「今夜だけでもわしはいくつもの国をまわってきた。じゃがこのような扱いを受けたことは一度たりとてなかったぞ。なあ、君。おかしいとは思わんのか? 自分の胸に手を当てて考えてみたまえよ」


「ふん。誰がなんと言おうが我々こそがルールであって正義なのだ。たとえサンタクロースであっても携帯電話の値引き規制の枠組みからは逃れることはできん。おとなしくお縄につくんだな!」


「おのれ若造が偉そうに。そもそもわしはこの国の人間じゃないぞ。そのようなふざけた法など知ったことではないわ!」


「この耄碌じじいが。お前は領事裁判権という言葉を知らないのか? この国の領空に一歩でも入った瞬間からあらゆる法律が適用されることになっておるのだ」


「な、なんじゃと! おのれよくも……」


「ふん、おしゃべりは終わりだ。連れていけ!」


 男たちはわしの肩をつかむと乱暴に引っ張っていくのじゃった。


「うわーん、サンタさんがつかまっちゃった!」


「こわいよー!」


 かわいそうに。

 わしの背後では子供たちが怖がって泣いておる。

 

 ん? そうじゃ! 大事な事を思い出したぞ。


「待ちたまえ、警察とやら。さっき君たちは言っておったな? わしの罪状とやらをな」


「そうだ。サンタクロース、お前の罪は重いぞ。なにせ今夜だけで数千もの携帯電話を不正に値引きして無料で販売していたわけだからな。これは一生刑務所から出られんだろうな、ははははは!」


 高笑いする警察の男。まったく哀れなことよ。

 自分で言っていてその大きな矛盾に気づいていないのか?


「ふむ、それなのじゃがはたして可能なことかの?」


「な、何だと!? じじい、なにが言いたい?」


「君は数千の世帯に今夜だけで配ったと言ったのう。だが、そんな事あり得るか? 仮に一世帯あたり渡すのに5分かかったとしよう。それが5000世帯ならば25000分、時間に直すと416時間じゃぞ? 一応聞いておくぞ、一日は何時間じゃ?」


「……に、24時間だ」


「そうじゃろう? そして夜の間という条件も加えるなら実際に活動できるのは12時間は優に下回るじゃろうな。さらに渡すだけではない、移動の時間もここに加えねばならん。この国すべてを回るとして移動にどれだけかかると思う? そんな状態で一夜で数千世帯を回った? 冗談じゃろ、そんなことできるわけないではないか!」


「ぐう、だが目撃証言もある。お前が手渡したと話す証人が何千人もおるのだぞ?」


「それなのじゃが、本当にわしがやったと言い切れるのか? なにせ数が数じゃぞ。そんなに短期間に一人の人間があちこちで同時に目撃されるなどあり得るのか? 少し考えれば馬鹿げた話だと、わかりそうなものだがな。大方、わしの恰好を真似した別人が目撃されただけじゃろう」


「ふ、ふざけるな! お前はサンタクロースなのだから世界中を飛びまわって一晩でプレゼントを配るのは当たり前だろう。トナカイが引く空飛ぶ魔法のソリで高速で飛びまわり、何かこう……すごい力で一気にプレゼントを配るんだろ? そうに決まっている!」


 わしは男のもの言いにおもわずため息がこぼれてしまう。

 まったく馬鹿な男である。

 図体がでかいくせに頭脳は子供以下である。

 まっとうな馬鹿ならまだ救いはあるが、ひねくれたこの男はどうしようもないな。


「おい、あんまりわしを舐めるなよ。お前が言うのはなんじゃ。魔法? すごい力? ははは! そんな非科学的なものあり得るわけないじゃろう。まったくお笑いじゃな。おい警察とやら、法廷の場でそんなことをいってみよ。笑われるだけじゃすまんぞ? 正気を疑うわい」


「いやいや、俺は見たぞ。サンタクロースを乗せたソリがとんでもない速度で駆けてくるのをな。そしてあんたが人間離れした機敏な動きで煙突に飛び込んでくのもさっきみたぞ。みぐるしい言い訳はやめるんだな!」


 まわりの警察たちから俺も見た! 俺もだと声が上がる。

 だがこいつらは何もわかっとらん。

 見ただけではなんの証拠にもならんというのに……


「ほお、ならば聞くがそのソリがとんでもない速度を出せる理由はなんだ? 科学的に説明ができるのか? そのソリには超高性能なジェットエンジンでも付いていたのか。仮に付いていたとしてトナカイやわしがその加速に耐えられるか? もし、わしが耐えられたとしてプレゼントは急加速でぐちゃぐちゃになるぞ。……ひとまず法廷の場で争うとして、だ。お前たち納得のいく説明ができるのか」


「ぐ……それは……」


「それ見たことか! 起こっていることを科学的に正しい説明ができない以上、考えられることは一つしかない。すべてはお前らが見ていた幻覚だったという訳よ。人の事を疑う前にまず自分の頭を心配するべきじゃったかな! がっはっはっはっはっは!!」 


「くそっおのれ! 我らを侮辱するか! どうやら痛い目を見ないとわからんらしいな」


 激昂した男たちは殺気立ってわしを取り囲みその手に持つ武器を構えた。


「じじいとて容赦はいらん! 発砲許可を出す! こいつを撃ち殺せ!!」



 バアンッ!! バンッ! バアンッ!!



 四方から放たれる発砲音と硝煙の匂い。

 ーーしかし。


「無駄じゃよ」



 キイン!! カアン! チュイン!



 弾丸はわしのからだに着弾すると潰れた小豆のようになって床にポロポロと落ちた。

 わしをとり囲む男たちは信じられんといった表情で震えている。

 

「やれやれ、お前たちはわしが着飾っただけのただのじじいか何かだとでも思っていたのか? とんでもないことじゃ。お前たちは自分の置かれている立場がまるでわかっとらん。わしは聖人サンタクロースじゃぞ?」


「だ、だまれじじい! この死にぞこないが、次であの世に送ってやるぞ!」


「次? お前たちに次などないぞ。教えてやろうかの。わしがなぜ一夜で世界中にプレゼントを配れるのか、その理由をのう。聖人たる、わしがその気になればこの国など一夜で滅ぼせるのじゃぞ?」


「減らず口を! 冗談もほどほどにするんだな!」


「どれその証拠を軽く見せてやるか。わしにかかればこの国の法律とやらを書き換えることくらい容易いことじゃ。ふむさっそく行ってくるとするかの」


 わしは男たちに認識できない速度で部屋を出ると、トナカイの駆るソリにとび乗り亜光速で夜空を疾走した。



 ーー1分後


 わしはこの国の代表の家まで飛んでいきそこで話をつけてきたのじゃった。

 話の間、わしは家に時空調律魔法をかけていたので外から観測する分にはほとんど時間は経っておるまい。

 まったく今日は忙しいというのに困ったことじゃ。

 しかし、この国の代表に聞いてきたのじゃが法律を変えさせる以前にまさかこんな事になっておろうとは。


 わしが戻ると、男たちはサンタが消えたぞ、どういう事だとうろたえているところじゃった。

 


「おいお前ら、今確認してきたがわしのやってることはどうやら問題ないらしいぞ!」


「な、なんだって! そんなはずはない。20000ゴールドを超えて値引きしたらダメだってはっきりそう法律の本に書かれているはずだぞ!?」


「若造が知った風な口をたたくなよ? この国の代表が言っておったぞ。そのルールが適用されるのは回線契約が値引きの条件に含まれる場合だけだとな!」


「ええっ!? じゃあ本体だけを販売する場合はどうなるんだ?」


「その場合、20000ゴールドの上限規制はあてはまらん。と、いうわけだ。今夜わしが配っていたのは携帯電話の本体だけじゃ。回線契約を条件になど出しておらんぞ!」


「そ、そんな……じゃあ俺たちのやったことは……」


「当然、誤認逮捕ということになるなあ! これは大変なことじゃぞ、証拠不十分だった上に無用な発砲もしてくれたな? うぐっ!! 撃たれた箇所が今になって痛むわい。これは後遺症になるな、慰謝料もたっぷりと払ってもらわねばならん!」


「す、すみませんでしたサンタクロース様! ここはどうか穏便に……」


「ならん! わしは外国籍じゃ。下手をすれば国際問題になるぞ」


「ひえええ、ど、どうかお許しを」


「そうじゃいい知らせがあるぞ。この国の代表と話してきてな、お前らの『人権』とやらをなかったことにしてくれるらしいぞ。今のおまえらは、けだもの以下というわけじゃ。わしがお前らに何をしようが一切罪には問われんのだぞ?」


「あ……あ……」


「おお、なんということじゃ。害獣の分際で人間のまね事で服を着ているなどなんと罪深い。このわし自らお前らに死を賜るゆえ、恐悦して拝するのだぞ?」


 わしは魔力を片手に込めて赤色のマントをひるがえした。


「死ぬがよい……サンタブリザード!!」



 ヒュゴオオオッ!!



「う、うわああああッ!!」


 刹那、凍てつくような吹雪が男たちに襲い掛かる。

 突風が彼らの衣服をずたずたに引き裂いていったのじゃ。


「こ、凍える!」


「ひぃ、助けてくれ!」


 悲鳴をあげながらのたうつ警察たち。

 ほとんど全裸と言っていい格好となっていた。

 無残なその姿には国家権力としての面影もあったものではないのう。


「感謝するんじゃな。もし子供たちの見ている前でなかったら、お前たちの肉体までばらばらに引き裂いていたところじゃよ?」


「す、すみませんでした、サンタクロース様!」


「疑って申しわけありませんでした! あなた様こそ真の聖人です!」


 男たちは皆、土下座をしておった。

 ようやく彼らも立場というものがわかってきたようじゃのう。


「そもそも聖人であるわしが犯罪などするはずがないじゃろう? サンタを信じぬからこのようなことになるのだ、君たち理解したかね」

 

「は、はい! サンタクロース様こそ正義です。我々が間違っておりました!」


 まったく、あわれなやつらじゃな。

 まあ考えれば、彼らも命令に従っただけの公僕ということか。


「ふむ。わかったもうよい、今回は許すとしよう。ルールを作るのはかまわん。しかし運用には注意しなくてはならんぞ。君たちもしっかり確認をしたまえよ」


 男たちは命びろいした喜びで泣きながら頭を下げておった。

 


「やったあ! サンタさんが勝った!」


「信じてたぜ。サンタさんが悪いことなんてするわけないってね!」


 子供たちが笑顔でわしのもとに駆けよってくる。


「ふぉっふぉっふぉっふぉっ! ありがとうぼうやたち。さて、わしはまだ待っている子供たちのもとに行かねばならん。来年もまた会おうぞ、さらばじゃ!」



 子供たちに別れを告げ、家を出たわしはトナカイのソリに飛び乗った。

 さて、今夜の仕事はまだ始まったばかりじゃ。

 


 ーー聖夜の空に一筋の光が走る。

 待っている子供たちのいる限り、サンタクロースの戦いは終わらないのだった。




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