異世界転移だああああああ
どれくらいの時間が経ったのだろう?
ふと目を開けると……変わらず視界は真っ白なままだった。
「あ……れ……? 消火剤……は? 助かった……のか?」
朧気に覚醒してくる意識を周りに向けると、
「な、なんだ!? 何も……何もない! サーバー室じゃないのかここは!? 病院……でもないみたいだ」
ふと冷静になる。
「はは……は……ついに俺は……死んじまったのか……」
ここは、そう。天国……いや、そんないい行いを続けた記憶も無い。地獄かもしれないな。
真っ白な空間の中で、延々……そう、延々と居続けることを強要されるような刑罰……
「いやいや! そこまでの悪いことはしてねぇよ!?」
1人でブツブツ呟いてると、なんだか冷静になってきちゃったな。
とりあえず辺りを見てみるか。
うん……何もない。地面は……ううん? 固くもないような柔らかくもないような、不思議な感じだ。
なんだろう? 素材が気になるな。
走っても、歩いても……うーん、距離感もよくわかんないし、なんだこりゃ? ヘンテコな場所だなぁ……
「やっぱ地獄なのか……」
楽天的な俺も、あまりの変化のなさに、ここはやっぱ地獄なのではないかと思い始め、さすがに凹んだ。
「いやだな……さすがに無限地獄ってのは」
「異世界より参られし勇者よ! あれっ!? いないっ?」
「ん? なんだ? よく聞こえないけど、遠くからかすかに声が聞こえるな」
何もないと思ってたのに人の気配を感じ、一気に嬉しくなって思わず駆け出……ん?
あれなんか見覚えあるな……なんだっけ……えーっと……ああ、あれだ!
スロットのミリオンG●Dのゼ●スだ! 神っぽいぞ!
ってことはやっぱここは天国か?
でもなんで急に天国に? やっぱ死んじゃったのか……?
……このまま隠れてたら忘れられてワンチャン現世に戻れるんじゃね?
「よし、ちょっと黙っとこう……」
「……」
「…………ん?」
後ろからなんだか圧を感じるな?
「うひょわぁあああ!」
「なんじゃ、ここにおったのか。目覚める予定の場所におらんから焦ったわい」
「うわぁぁあああ、許してください、僕悪いことなんもしてないです! あ、いや、全然したことないこともないんですけども、ほんと、まだ天国行くのは早いって言うか、え? もしかして地獄ですか? スロッカスは地獄なんですか? アナザーゴッドなんですか!?」
「お、おぉ……なんだか混乱してるのかいつもこんな感じなのか反応に困るわい」
「まだ夢見さんに告白もしてないんですぅぅうう……帰してもらえません?」
「あーー……ちと言いにくいんじゃがの、それはちーっと無理かのう……」
「やっぱ……俺、死んだんですね……」
終わった。やっぱ俺の人生終わったんだ……
DT(童貞)のまま、ついに一生を終えちゃった……ツラい。卒業くらいはしておきたかった……よよ……
「いや、なんか勘違いしておるようじゃが、別にお主は死んではおらんぞ?」
「ふぉえ? 死んで……ない?」
「うむ」
「え……? でも、ここ天国なんじゃ……?」
「うむ、まぁ天国じゃよ」
「うわぁぁあああああああ」
「まぁ落ち着きなさい。お主は確かに死ぬところじゃった」
「死ぬところだった……?」
そういや消火剤に呑まれて……窒息するところだったような……?
「そうじゃ。じゃが、こちらの様々な世界では人手不足でな。お前さんらの世界で言うところの異世界にあたるのじゃが」
「異世界きったぁぁぁあああああああ」
「おいおい、まだ説明が途中じゃぞ」
「すみません」
「うむ、それでのう。さすがに生きてる人間をどんどん色んな世界に放り込むのは倫理的にもまずいのじゃ。単に片っ端から誘拐することになるからの」
「なるほど」
まぁそんなことしたら人工のバランスがおかしくなるわなぁ。いくら星全体の人数が多くても、神様の力があったらいくらでも移動できるだろうし。
「なので、例えば地球。お前さんらがいた星じゃな。そこで、まだ生きておるものの、もうすぐ不可抗力で死の運命にある者の中でも、異界への並々ならぬ執着がある者や、異界となんらかの関わりがあるもの、接点があったとか、様々な要因から、転移させて救出しておるのじゃ。それと同時に、ピンチの異世界を救ってもらおうというわけじゃな」
「おー、ラノベで似たようなやつよく見る」
「うーむ、お主は緊張感がなくていいのか悪いのか……どうにも楽観的過ぎるのう」
「あはは」
「まぁよい。それで、やはり異世界に転移させるだけじゃ、地球の人間の力じゃできることは限られておるからの。それで……うん、まぁお前さんらの言葉でぶっちゃけると、転移の特典を授けます」
「え!? 転移特典!?」
「いわゆるスキルというやつじゃな」
「いよっしゃああああ! うぉら! っしゃぁ!」
「おおぅ……こんなに元気な異世界転移者は久しぶりじゃのう。さて、時間はじっくり与えるから、この中から好きなスキルを3つだけ与えよう。そなたに付与した後、異世界へ転移させるからの。しっかり選ぶのじゃぞ」
本状の……っていうかこれ地球のカタログと一緒じゃん……
えーと、何々……うおっ!? なんじゃこりゃ!?
めちゃくちゃ種類ある……何々……?
・投げた物が自動で追尾し、相手を狙うスローイングスキル
・絵画彫刻なんでもござれの芸術的スキル
・剣、短剣の扱いが達人級になれる剣術、短剣術
……etc
めちゃくちゃ種類ある……そりゃ神様も毎回こんなん設定してたら頭おかしなるわ。
自分で探して申告するくらいがちょうどいいわな。
とりあえず、これとこれは必須で………おお!? これは!
なんだかよくわからないけど、俺の為に用意されたかのようなスキルだ!
「この3つにします!」
「おお、どれどれ……ほぉ、珍しいのを選ぶのぅ」
「そうですかね?」
★大翔が選んだスキル★
【設定変更(等級:ユニーク)】
説明:自身を含め、対象の設定を10分間変更可能。
1回につき1つの対象の設定を変更できる。
最低設定は1、最高設定は6
他人の能力等は見えないが、1~6の数値が頭の上に見えるようになる。
偶数変更・・対象の設定を2、4、6のいずれかに変更する。1回MPを20消費。
奇数変更・・対象の設定を1、3、5のいずれかに変更する。1回MPを10消費。
【アイテムストレージ(等級:ユニーク)】
容量無制限で自由に物や生物が出し入れできる。
中に入っているものは鮮度や状態が変化しない。
【状態異常無効化(等級:レア)】
麻痺や石化等だけではなく、アルコールの過剰摂取等により身体に害が及ぶものまで自動でカットしてくれるスグレモノ。