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少女? との出会い

 口を開けたまま止まる。


「うおっ!?」


 思わずアメドを取り落としそうになる。

 いつの間にかベンチに座っていた女の子に話し掛けられたからだ。


「だ、誰……だ? こ、こんな時間に……」


「お兄さん、それなぁに?」


「話聞かねぇなおい……」


 なんだ? 深夜3時過ぎてんだぞ? コンビニ前だったり繁華街……もっと都会ならいてもまだわかる。

 なんでこんな誰もいないようなところに女の子が?

 っていうかどっからきた!? 物音なんてなかったし、離れた獣道からはジャンプしたら絶対無音じゃ無理だ。かと言って階段歩いてきたら足音するしな……


 そう思いつつ、目の前の女の子をよく観察する。


 透き通るような白いロングヘアー、黒くてパッチリした目。背は……うん、低いな。130cmくらいか?

 胸は貧乳で……っておい、俺はどこ見てんだ。

 えーっと……年は14~15くらいか? 服はクリーム色のワンピースか……だいぶ幼く見えるな。

 いやいや、幼くっていうかガチ少女じゃん。でも……めっっちゃ可愛いな……いやいやいや、こんな時間に少女と一緒にいるとか、誰かに見られたら下手したら人生終わるぞ!


「ねぇお兄さんってば」


「あ、はい。どした?」


「それ、何食べてるの?」


「これか? アメドだよアメド。アメリカンドッグだよ」


「アメリカンドッグ? 何それ?」


「なんだぁ? アメリカンドッグを知らないのか? 日本人じゃないのか?」


 日本語は流暢なんだが……どこか外国人っぽさがある。アメドを知らないのかとは、日本人じゃないのか?

 さすがに食ったことはなくても、日本人なら見たことや聞いたことくらいあんだろ?


「美味しいの? それ」


「あ? うんめぇに決まってるだろ? アメドだぞアメド。外はカリっとして生地はふわふわ。そしてジューシーなソーセージがだな」


「いいなぁ……ねぇお兄さん、私にもちょっとちょうだい?」


「へ? なんでだよ。自分で買いなさいよ。そこのコンビニで売ってるから」


「お金ない……」


「そうか。じゃあちゃんとおうちに帰りなさいね。こんな時間に夜中をうろついてちゃ危ないよ?」


 自然な感じで帰宅を促し、アメドに口をつける。


「ぐすっ……」


「おいおいおいおい、なんで泣くなだよぉ……ちょ、俺が泣かしたみたいだろ……」


「……アメリカンドッグ……」


「……」


 なんだ? 脅しか? 甘いが俺はそんな安っぽい脅しに屈するような男ではない。

 汗水たらして仕事をしたものにご褒美として与えられるのだ、アメドは。

 何もせずにただ求められただけで与えられるような安いものではないのだ。まぁ100円だけど。

 ここであっさり渡してしまったらアメドの価値が下がるってもんだ。あまり大人を舐めるんじゃない。


「気をつけてお帰りなさいね」


「ぐすん……人呼んじゃおっかな……」


「美味しいよ! これ! 好きなだけお食べなさい」


「やったぁー!」


 アメドをぶんどられた。


「はぁー……」


 数十秒前にした誓いなど一瞬で消え失せた。

 大人を呼ばれるのはまずい。25歳だからまだ若い……若いよな?

 とは言え、さすがにこんな夜中にこんな場所で幼い女の子を泣かせてるところを誰かに見られてみろ?

 100%警察行きだ。数日……下手したら1ヶ月とか帰ってこられねぇぞ。

 そんなことになったら会社はクビ待った無し。残ってる僅かなお金を食いつぶして緩やかに死んでいく超絶バッドエンドが見える。俺は穏やかに生きていきたいだけなんだ……。


「それで、君はどこからきたんだ?」


「むぐっ もぐっ、お兄さん!」


「え? 何?」


 ってか涙なんて出てねぇじゃねぇか! くっそ、ウソ泣きか……騙された。


「このあめど? すっごい美味しい! ザクザクふわっとジューシーだね! 最高だね!」


「お、おう……そうか……うまいよなアメド」


 俺の分はなくなっちまったが、こんなに嬉しそうならまぁ……いっか。


「ん? 違う違う。どっからきたんだ? それ食ったら送っていってやるから」


「大丈夫だよ! こう見えても成人してから5年くらい経ってるからね! オトナオトナ!」


「は!? ウソだろ!? 成人してから5年って……25!? 俺と同い年じゃねぇか!」


「へ? 成人は14でしょ? 私は19歳だよ」


「は?」


「?」


 きょとんとした顔でこちらを見つめる少女。


 いや、少女って年齢でもないのか? ややこしいな……


 しゃぁない。後でそっと送ってやるか。その前に……新作のゼリー食べるかな。

 ゴロゴロとさくらんぼが入っていて、実にうまそうだ。


 ペリペリと、蓋を剥がすと、


「おととっ」


 果汁なのかゼリーの成分なのかわからない汁が溢れそうになるのを口でキャッチする。

 ん、これはこれでうまいな!

 プラスチックのスプーンを開け、1口食べる。んんーー! うんめぇ。シロップ漬けさくらんぼとゼリーが合う……ん?


「じーー」


「……」


 なんかめっちゃ見られてる。俺のアメドを完食した挙げ句、ゼリーまで奪おうというのか?

 そうはいかないぜ。視線をガン無視して、もう1口含む。


「……すんっ……すんっ……ぐす」


「…………わかったよ。食べるか?」


「え!? いいの?」


 やっぱりウソ泣きだった。はぁ……女はズルいって……。


「ああ、いいよ。食べたかったんだろ?」


「これなんていうの?」


 ズルッと、身体が滑る。


「うっそだろ? ゼリー知らんのか? フルーツゼリー」


「ふるうつぜるい?」


「ゼリーだ、ゼリー」


「フルーツゼリー」


「ああ」


 百歩譲ってアメドは知らない可能性はあるにしたってゼリーを知らんだと? そんな馬鹿な。

 なんだ? もしかして親に虐待でもされてるのか? ずっと閉じ込められて生活してるとか?

 送ってやったらちょっと言ってやらないといけないかもしれないな。


「おいしー! 何これ? 甘くてぷるぷるー」


「……よかったな」


 ん? でも肌の血色はめっちゃいいな。虐待されてるっつう格好でもないのか。よくわからんな。外国人なのかな?


……わからん。

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