新たなる冒険?
「あ、でもね。一応美味しい物もあるにはあるんだー」
「なんだ、ちゃんとあるのか。もしかして高いのか?」
「その通り。例えばコショウなんかは大体このくらいで」
リオラが小さい手でお椀型を作って見せてくれる。小さめの茶碗1杯分ってところか。
「35万イェンくらいかな」
「たけぇぇぇぇえ」
たけぇぇぇ! 心の声とリンクしちゃったよ!
「それで塩がこのくらいで5万イェンくらいかなぁ……」
「う、むう……まぁ、それくらいなら……」
その後も、色んな調味料を聞いたが、目が飛び出るような金額ばかりだった。
だが……正直塩コショウ以外の調味料はいまいち使い勝手が悪そうなので、そんなに欲しくない。
だが、塩コショウは別だ。正直コショウがあるだけで、肉を焼いた時のうまさは段違いだ。
どうしよう……買えないことはないんだけど、高いな……。
どうしても地球にいた時の感覚が抜けないので、躊躇われる。
だって、小ぶりの瓶1つで100円ちょいで買えたコショウが、2瓶くらいの量で35万イェンって……
「なんでこんなに調味料が高いの?」
「一応モンスターがドロップするんだけどねぇ……難易度が高いんだ。落とすとされてるモンスターの推定レベルは30くらいらしくて。正直めちゃ強だよ。私だってスキルのおかげでけっこう強いんだけど、それでもレベル32だからね」
んん? ギルドの受付の子、レベル20で一流って言ってたよな……この子実はかなりの実力者なんじゃ……
「……」
「一応1体とか2体なら倒せないこともないんだけど……ってあれ? タイト、どうしたの? 黙り込んじゃって? 私何か変なこと言った?」
「いや、その……リオラってさ。パーティー誰かと組んでたりする?」
「へ? パーティー? 組んでないよ。組んだこともないよ。なんだか怖くって」
「あの……地球で出会ったよしみでパーティー組んでくれない?」
「え!? 私と!? も、もしかして私に変なことするつもりじゃ……」
自分の身体をかき抱くようなポーズを見せつけてくる。
チラ。
「……ふぅ」
「ちょっと!? どこ見てため息ついたの!? ねぇ!? 胸!? 胸のとこ見てたでしょ!?」
「いやぁ……別に……」
「くぅぅぅーー……」
リオラは確かにとても可愛いけど、最初は幼女に見間違えたくらいのド貧乳だからなぁ……可愛いけど。
「ま、まぁ真面目な話をすると、俺達winwinな関係になれると思うんだ」
「うぃんうぃん? って何?」
「俺も得をして、リオラも得をするってことさ」
「どんな得があるの?」
「ふっふっふ……」
わざわざもったいつける。
「やっぱえっちなことしようとしてるんじゃ……」
「んなわけあるか! リオラ、君は地球に転移してまで美味しい物を探し求めてたんだろう?」
「え? まぁそうだけど……」
「この星で、安くて美味しい物が食べられる、そんな生活に憧れないか?」
「そりゃそんなことができたら理想だけどね……香辛料とかはバカみたいに高いし、しょっちゅうは……」
「食べられるようになるよ、しょっちゅうね」
ニヤリと思わず微笑んでしまう。
「え? そんなうまい話が……」
「あるんだよ。俺とパーティーを組んだらね」
「どういうこと?」
「リオラ、君は香辛料とかをドロップするモンスターがどこで出没するか知っているね?」
「う、うん……かなり強いけど」
「そこに案内してくれればいい」
「でもほんとに強いよ?」
「問題ない。何しろ今の俺のレベルは78、恐らく香辛料をドロップする敵も倒せる」
「78!? 嘘!? そんなの伝説の英雄級じゃん! そんなはず……」
「そうだな……うーん」
よく考えたら俺のレベルを証明するのって難しいのか。そういやギルドカード作る時も、自己申告だから嘘を書かないように、みたいなこと言われてたっけ。
「パーティー云々は置いといて、とりあえずそのコショウとか調味料系のモンスターがいるダンジョンとかに案内してくれない?」
「まぁそれくらいならいいけど……」
「よし、決まりだ! 早速今から行こう!」
「はーい」
早速扉を出て……
「あ、ちょっと待ってください」
「え? なん……!?」
リオラがいきなり手を繋いできた!
久々の女の子の感触でドキッとする。
「私のスキルでダンジョンまで一気に移動しちゃいましょ」
「あ、ああ」
「? どうかしました? 行きますよ」
ドギマギしたことを悟られないように、必死に平静を保つ。
「あ、ああ」
リオラが呪文を呟くと、景色が一瞬で切り替わる。
「おお……おぉ……」
ここがダンジョンか……!




