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再会

 女性の声だ。


 この異世界に女性の知り合いなんていないはず。


 そう思いながらも、声の主を見上げると。


「え!?」


 地球で……というか俺の職場近くのベンチで会ってた子がそこにいた。


「アメド強奪娘……」


「っちょ!? ご、強奪なんてしてないじゃん……」


「なんだタイト、嬢ちゃんと知り合いかい?」


「え、ええまぁ」


「なんでタイトがここにいるのよ!?」


「ってそれは俺のセリフ! え!? なんで君ここにいんの!? だって……あー……ちょっと俺の部屋にきてくれるか?」


 さすがに地球の話を公共の場でベラベラ喋る気にはなれない。


「え、えぇ……いいわよ?」


「若いお二人さん、多少は声出しても大丈夫だけど、部屋の声漏れるからなるべく控え目にな」


 おっちゃんが笑顔でサムずアップしてくる。


「?」


「いやいや、そういうんじゃないですって……」


 不思議そうにしているリオラを連れて、今日決まったばかりの俺の部屋へ移動する。


「お、割りといい部屋だなぁ。お金がある限りここ泊まろっかな」


「ねぇタイト、さっきおじさんが言ってたことってなんのこと?」


「いや、あれはその……君19歳って言ってなかったっけ? そういう話したことないの?」


「そういう話?」


 あーー……なんでこんなこと説明せにゃならんのだ……


「だからー………男と女が1つ屋根の下……っていうか同じ部屋に……一緒ってことは……男と女が……ゴニョゴニョ……」


「~~~~!?」


 真っ赤な顔をしたリオラが俺のことをバシバシ叩いてくる。


「えー……なんで教えてあげたのに叩かれるんだ……」


「だって……だって……!」


「あー……わかった。ごめんごめん。それで、君がここにいるのは?」


「いや、それよりタイトでしょ!? 地球の人だよね!? あれから何度か探しても見つからなかったからしょんぼりしてこっち帰って来たんだから」


「帰って来た?」


 まるでここの星が故郷であるかのような言い方だな。


「ええ、だって私、この星で生まれ育ったから」


「ええええ!? 地球と行き来できんの!?」


「スキルの力でね。まぁじゃんじゃん使えるようなものじゃなくて、1回使うと距離に応じてクールタイムができるから……それよりタイトはなぜここに?」


「俺は……」


 神様に召還? されて、転移特典をゲットしてこっちにきてどうにかこうにか今に至るという話をかいつまんで伝えた。


「へぇぇ……そういうこともありのねぇ……聞いたことないけど、もしかしたらそのことを隠してるだけで他にもそういう人いるのかしら?」


「かもしれないね。ところで、なぜ地球に?」


「あー……」


 ん? もしかして重要な使命があって……?

 例えばあの神様に命じられて、異世界適正のある人物を探してたとか?


「神様に口止めされてるとかか」


「え!? いや、そういうわけじゃ……」


「わかったわかった、言えない事情があるんだな? あるある。そういうこともあるわな」


「いや、ほんとに違うくて……その……ボソボソ……だから」


 ん?


「ごめん、ちょっと最後の方だけ聞き取れなかった」


「だから……ボソボソ……なの……」


「え?」


「地球のほうが美味しい食べ物いっぱいあったからぁ!」


「うおっ!?」


 急にデカイ声出すもんだから、耳がキーンなったぞ……


「ま、まぁ確かにうまいもんはいっぱいあるけどさ……」


「うーー……だってこの星の料理、美味しくないんだもん……地球のご飯が食べたいよ……でも地球のお金持ってないから、タイトにもらったアメドとゼリーくらいしか食べたことないし……ブツブツ」


 さっきから顔を赤くしたり戻したりまた赤くしたり忙しい子だなぁ……。



「それより……ちょっと気になったんだけど、リオラのスキルを使って俺を地球に運んだりとかできるのかな」


「あ、ごめんね。それは無理なんだ。人がとかじゃなくて、私以外、正確に言うと私と私が身に付けてる服以外は一緒に飛ぼうとしても、勝手にキャンセル状態になって私だけ移動しちゃうんだ」


「そっかー……じゃあやっぱ地球にはもう戻れないのかなあ」


「あー……なんかごめんね。期待させちゃって」


「いや、いいんだ。両親もずいぶん昔に亡くなってて、地球に未練なんて……あー、まぁなくはないんだけどさ。そんなに気にしないでよ」


「んー……そーお? ならいいんだけど」


「そんなことより、この星の料理が美味しくないって、全部屋台の串焼きみたいな感じってこと?」


「あ、串焼き食べたんだね」


「うん。もし、基本的に食う飯が大体あんな感じだったら……俺はなんとしてでも地球に帰ろうと思う」


「残念ながら……」


「Oh……」


 絶望しかなかった。

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