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冒険者ギルド

「あっ!」


 しまった……冒険者ギルドがどこかわからん……やっちまった。


「うーん、おっちゃんに聞いとけばよかったなぁ……まぁ異世界モノで冒険者ギルドと言えばでかいものって相場は決まってるし、その辺歩いてたらわかるだろ」


 街の中を、なるべく不審がられないようにうろちょろしてみる。


「お?」


 屋台もあるんだなぁ……へぇ。


 何かの肉を焼いたものやパンのような何かを焼いたような、基本的に焼いたものばっかり売っている。

 なんだかあまり美味しそうではない。


 なんだろう……食にあまり期待できないな、この異世界。地球人としてはやっぱツラい場所なのかなぁ……

 ラノベとか読んでると大体美味しそうな果物とか料理とか出てくるんだけどなぁ……


「しっかし……うーん」


 なんだか心なしかチラチラ見られてる気がするな。


 あっ……そうか……そういやスーツ着てる人が1人もいねぇじゃん。そりゃ目立つか……


 早く服を現地風の物に着替えたい。


 とか考えてる間に、なんだか人の流れが1ヶ所に偏っている場所を見付ける。


「もしかして……お? あれは……」


 屈強な男、真っ黒なローブを着た杖を持った女、ばかでかい盾を持った男に、聖女風の女。


「間違いない、あれが冒険者ギルドだな」


 大きな石造りの建築物があった。人と人が武器や防具を持って何かに……あれはドラゴンかな? に立ち向かっている看板がぶら下げられていた。


 他の人の流れに沿って、ギルド? 内部に初めて突入する。


「ほぇー」


 まさにアニメとかで見かける「THE 冒険者ギルド」と言った雰囲気だった。


 たくさんの依頼書らしきものが貼られたコルクボード。

 はしゃぐパーティーやケンカしているパーティー。

 色んな物を売り買いしているカウンター。

 そして、メインの受付。


 なんだかワクワクしてくるな。


「おい……なんだあの格好?」


「見たことあるか?」


「ないない。どこの都市のやつだろう」


 ……どうやら俺の服装が気になるやつはここでも多いようだ。


 こういう場合の対処は無視に限る。


 無視無視……自然な感じで、毅然とした態度で受付に……


「おおいそこの兄ちゃんよぉ」


 自然に……


「おいって!」


 ん? 俺じゃないよな? 俺じゃないって言って?


「おいてめぇ、無視してんじゃねぇぞ!」


 振り向くと、若い金髪の……剣士? が絡んできた。


 俺かよ!


 普通の黒髪で盾役っぽい男、ピンク髪の魔法使い風の女も一緒にいる。


「え? ああ、俺? なんだ? なんか用か?」


 ぶっちゃけちょっとビビっているが、舐められないように冒険者っぽい言葉を意識して喋る。


「なんか用かだって? はっ! ヘンテコな服してるやつが生意気な」


「ほんとよね。痛い目会いたくないなら出すもの出したほうがいいわよ?」


 もしかして他2人はまともな人かも? とか思ったが、その期待は一瞬で裏切られた。

 黒髪盾もピンク魔法使いもクズいな。


 ……ピンク魔法使いってなんか響きがエロいな。


「出すものって……文無しなんで何も差し出せるもんなんてないぞ」


「ああ? そんな小綺麗な格好して何もねぇだと!?」


「嘘つくんじゃねぇ!」


「私達を騙そうったってそうはいかないわよ!」


「騙そうなんてしてねぇよ……めんどくせぇなぁ」


 思わず本音が出てしまった。


「んだとゴルァ! 痛い目みせてやる!」


「いけぇ! ガルファン」


 ガルファンと呼ばれてるやつのパンチが飛んでくる。


 ギルドとか周りの人は、日常茶飯事なのか、我関せず……っていうよりガチで興味無さそうだな……なんとか避けないと……ん?


 あれ? まだパンチ当たってない……? 意外と遅いな。


 ひょいっ


 と、男のパンチを避ける。


「なっ!? 何避けてんだよてめぇ!」


「そうだそうだ!」


「めちゃくちゃ言うな……」


 なんで避けたら文句を言われないといかんのだ。


「わかったよ」


 めんどくさいからとりあえずパンチの一発でも受けておくか……


「オラァ!」


 金髪男と盾の男が拳をこちらに放つ。


 いや、両方同時かよ。


「ぐおおおっ! ってあれ? 全然痛くないな?」


 予想より遥かに少ないダメージに、逆にビビる。何? どゆこと?


「ぎゃぁぁあ!」


「いってぇぇぇ、なんだこいつ!? かてぇ!?」


「ちょ、ちょっと、2人とも何やってんのよ?」


「固すぎんだよコイツ!」


 3人がなんか言い争っているのを眺めつつ、


 あれ? 俺、もしかしてけっこうステータス上がっちゃってるんじゃないか? と思い始めた。


「正当防衛成立、ってことで」


 金髪と盾のやつにパンチをお見舞いする。


 ボゴゥッ! と、ギルドの外まで吹っ飛ぶ。


 やべぇぇぇええ! 入口の木戸が壊れた!


 ヤバいヤバいヤバいヤバい、文無しなのに弁償とか言われたらヤバいいいいい!


 チラッと周りを見ると、なぜかみんなシーンと静まり帰っている。

 もうこうなったら追い討ちかけるしかねぇ!


「おい! 俺は男女平等が声高に叫ばれる世界の出身だ! 女だって同じように成敗してやるぞオラァ! 嫌なら木戸を弁償してそこの男2人連れて消え失せろ!」


「ひぃぃぃぃっぁぁぁあ」


 あ、ピンク魔法使いの足元に水たまりができてる……強く言い過ぎたか? でもこんくらいは言っとかないとな……また絡まれたら面倒だし。


「すすす、すみませんでしたぁぁ!」


 ピンク魔法使いが、お金が入ってると思わしき袋をギルドの受付に置いて、男2人を引き摺りながら去っていった。


 一応解決……したか?


「うぉぉおおおおおお!」


「やるじゃねぇか兄ちゃん!」


「うおっ」


 なぜか知らない人達からめっちゃ賞賛された。


 そこいらにいた人に聞くと、どうも彼らは普段から素行が悪く、割りとみんなから疎まれていたらしいのだが、意外と実力がある上にすぐ暴力を振るってくるため、手がつけられなかったのだとか。


 うーん……クズい……


 まぁ何はともあれ、ギルドの受付に並ぼう。


 集めた素材が売れたらいいんだけどなぁ……せめて宿代だけは稼がないと……。

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