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 地球人として不満はあるものの、なんとかウサギを完食。


 なんだかんだでお腹が減っていたから食べられたが、あまりバクバク食べたいものではなかった。


「うーん……鹿肉風のやつもあるけど、調味料ないんじゃなぁ……ウサギと一緒だよなぁ」


 なんか食べられそうなやつ……


「グリーンスライムの体液、あとはゼリーか」


 体液のほうは青汁っぽい見た目、ゼリーは薄いメロンゼリーって感じの見た目をしている。


「うーん…………もうちょい食べたい気持ちはあるんだけど……これかぁ……」


 消去法にしたっていまいち選択肢が……


「名前的に体液は嫌だからゼリーのほういっとくか」


 ストレージから取り出して手のひらに乗せてみる。

 ふむふむ……ぷにゅんとしてて、ゼリーってよりは地球で言うところのわらび餅っぽい感じだ。


「これは抹茶わらび餅……これは抹茶わらび餅……」


 自分に言い聞かせながらスライムゼリーを口に運ぶ。


「うっ……これは……なんというか……」


 無味無臭だな。


「なんでだよ……うっすら緑色してるんだからもういっそ草風味とかでもいいからなんか味ついてて欲しかったよ……どうしてこうなった」


 例えるなら……砂糖とかもろもろの味が一切無いわらび餅だな。

 美味しくないに決まっている。


「はぁ……初の食事がこれかぁ……どっか街に行ったらさすがにもうちょいマシなものあるだろうな? 後は調味料。あーああー……こっちにくる前にもっとアメド食べとけばよかった……あのジャンキーな味わいが恋しい……」


 まぁともあれ、衣食住の食は確保っと。後は住みかと服か……服どうしようかね。とりあえず街を探してお金稼がないことには、いくらスキルあったって原始人みたいな暮らしになっちゃうしな。


「あ」


 もう夜だってのに飯のことに気を取られすぎて寝る場所のことを一切考えてなかった。


「うーん……家なんて作ったことないぞ……どうしよ」


 木はいっぱいある……石とか岩もある……


 組み合わせたらそれっぽいやつができなくもないけど……


「んー……でもなぁ……こんないつ襲われるかわからない世界で熟睡したらヤバイよな。自分のステータスがこの世界でどれくらいなのかさっぱりわからないけど、どんだけ強くたって無防備で森の中とか草原のど真ん中で寝てても大丈夫ってことはないだろうし。ま、どうせ夜勤続きだったし、起きとくか」


 そうと決まればたき火だな。どんな世界だろうが、火を恐れる者は少なくないはずだ。とりあえず火を焚いとけばある程度敵は防げるだろう。


 ん……うん。細かい枝とか葉っぱも落ちてるな。


「やっぱ岩場を背にしたいな……お、ここなんかちょうどいいんじゃないか?」


 ちょっと窪んだ、小さな洞窟みたいな場所を見つけた。

 奥行きは全然なく、すぐに行き止まりになっている。


「あんまり奥でたき火すると一酸化炭素中毒になるよな? この世界にもそういう地球の法則が通用するかわからないけど、避けといたほうがいいよなぁ」


 細かい枝、太い枝、葉っぱ。どれも枯れていて、すぐ燃えそうなものをチョイスする。


 太い枝の予備は洞窟にいっぱい入れておくとして、ちゃんと燃えるかどうか。


「小学生の時に行った林間学校以来だなぁ、たき火とかするの。ええっと、確か」


 細かい枝と葉っぱを混ぜるような感じで重ねていって……あ、そうか、空気の通り道もいるのか。間に1本太い枝を入れて……うん、いい感じだぞ。


「あとは太い枝を互い違いに組んで、っと。ついでにカマド風に周りを石とか岩で囲むか。ふふっ、なんか楽しくなってきたな」


 IT系の仕事で働いてて、パソコンばっかりずっと触ってた俺だったが、意外と俺はこういうサバイバルが好きなのかもしれないなぁ。意外な発見だ。


「後は炎魔法を最弱で放って……お、よしよし」


 パチッ……パチパチッ……


 そんな音を立てながら枯れ木や枯れ葉が徐々に燃え始める。


「成功だな。なんとなくでも意外とうまくいくもんだなぁ……」


 なんだか癒されるな。思えば毎日同じような仕事の繰り返しばっかりだった割りに、ずっとセカセカしてたような気がするな。


 のんびりとこうやってたき火を眺めてるのもなかなかいいもんだな。


 なくなりそうになったら枝を足してはまた火を眺め、なくなっては枝を足す。


「そういえば、動画配信サイトで延々たき火の映像流すやつが一時期流行ってたっけ。あんなもん誰が見るんだよって思ってたけど。なるほどなるほど。わかる気がしてきた」


 ……


 …………


 ……ん? そう言えば……俺って地球に帰ることってできるのかな?


 ━━━━落ちてきた時のことを思い出す。


「うむ、ではスキルも付与したことじゃし」


「頂きましたし?」


「良い異世界ライフを!」


「へ? どわぁぁあああああああ」


 ━━━━ん、特に説明受けてないな。


 ってかいきなり突き落とされたな。ん? ドタバタしてて忘れてたけど思い出したらだんだん腹立ってきたな。

 ろくにこの世界の説明受けてないし。サービスが悪いな。

 ゲームアプリだったら割りと序盤でアンスコしてるかんな神さん? 見てるか?


 ……見てるわけないよな。ちょっと虚しくなってきた。


「ま、とりあえず、せっかく異世界転移してきたんだし、旅行にきた気分で楽しみますかね。異世界転移だって広義では旅行みたいなもんだろ、たぶん」


 ごそごそとストレージを漁り、グリーンスライムの体液を取り出す。

 なぜか木でできたコップ状の器に入っている。


「……どういう仕組みなんだろう、って思うのは野暮なんだろうな。とりあえず、まずそうだけど異世界初の……乾杯!」


 1人で乾杯し、グリーンスライムの体液をぐいっと呷る。


「うっ……」


 なんだか身に覚えのある風味……。


「青汁だこれ」

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