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異世界ディナー

「ステータスオープン」


【3元魔法 炎、雷、水】

 それぞれ基本的な事象を魔法で再現する。該当の事象を唱えると発現する。込めた魔力量に応じて変化する。


 覚えたての魔法の詳細を見ると……


「きたぁぁぁぁあああああ! 異世界! THE 異世界の魔法きたぁぁあああ!」


 これだよこれ、こういうのでいいんだよこういうので。


「どれどれ……あ、待てよ……」


 いきなり強い魔力込めるとヤバイか?


 うーん……炎と雷と水か。とりあえず一番危険度が低そうな水から試してみるか。


「うーん……ふんっ、水!」


 ちょろりっ……


 と水が手から出てくる。


「うおおおお! 水だ水! これでとりあえず生きていけそうだぞぉ! 異世界の水とかどういう処理されてるかわからないから不安で仕方なかったからな……」


 っていうかこれ毎回魔法名言わないといけないんだろうか。脳内で詠唱とかできないのか?

 毎回「水」「炎」とか叫ぶのちょっとカッコ悪いぞ……


「うぬぬぬ……んっ」


 脳内で水! と気合いを込めて唱えると、


「ズシャァァァァァアアア」


「おわああああ! めっちゃ出てる、ストップストップ!」


 ふぅ……口に出さずに詠唱できることがわかったのはいいけど、びしょびしょじゃねぇか……えらいピーキーなんだな、魔法ってのは。こりゃ練習したほうがよさそうだ。


「うんっ、ほっ、てっ」


 何度か水を出す練習をすること数分。


「うん? …………ラノベとかアニメ見てたときはなんとも思わなかったけど、この魔法の水……どっから出てるんだ……? 俺の体液から純粋な水を絞り出してるとかじゃねぇよな……」


 想像するとちょっと怖くなったので、これ以上考えることはやめた。


「異世界なんだ。そういうもんなんだよな。うん。野暮ってもん……」


 ぐぅぅ~~


「腹……減ったな」


 そういや異世界きてからなんも食べてない。飲み物は今水を浴びた時に飲んだし、まぁいつでも飲めるけど……やっぱ固形物が食べたいよなぁ……。


「とりあえずアイテムストレージ見てみるか」


 ━━━━

 アイテムストレージ

 ・グリーンスライムの魔石 ×103

 ・キララビットの魔石 ×6

 ・ポイホーンディアの魔石 ×3

 ・グリーンスライムの体液 ×21

 ・グリーンスライムゼリー ×13

 ・キララビットのお肉 ×10

 ・ポイホーンディアのお肉 ×35

 ━━━━


「神様もちょっとくらい食べ物いれといてくれても……って思わなくもないけど、ま、そんくらい自分でできなきゃ異世界で生きていけないよな」


 どれどれ……あれ? ウサギっぽいやつも鹿っぽいやつもそんなに数倒してないのに個数がだいぶ多いぞ? なんでだ?


 手当たり次第に放り込んだ肉塊が、×いくつの表記になることで、よくわからなくなっていた。


「何個か取り出すか」


 暗闇に手をツッコミ、ウサギモドキと鹿モドキを取り出す。


 いまいち処理した記憶もないのだが、


「ううーん? これは、持った感じ1kgくらいなのかな? の塊肉になって、しかも下処理っぽいのが終わっているな。アイテムストレージすごすぎん?」


 転移前は肉を切った経験もなければろくに触った記憶もないので、こういうのがあらかじめ終わってる状態というのは助かる。切ったやつならけっこう調理するんだけど。


「っていうか待てよ? これ、中から取り出す時に任意の形状にしながら取り出すことができるのでは?」


 とりあえずウサギモドキを手のひらサイズになるよう頭でイメージしながらストレージから取り出す。


「おおおお……」


 これあれだ、スーパーとかで見かけるパックの肉だ!


「後は焼くだけじゃん! なんと素晴らしい機能なんだ! 神様ありがとう!」


 ちょっと前は罰当たりにも、神への文句を言っていた気がするが、単純なものである。

 天に向けて祈り始めた大翔であった。


「よぉーし、焼くぞ焼くぞ!」


 初めての異世界ディナー(日が暮れてきたので、もう実質ディナーと言っていいだろう)を楽しむべく、手頃な石の上に……上に……


「うーん、なんか抵抗あるな……」


 平たくておっきい石にまず魔法で水をかけて洗ってから火で炙る。


 状態異常無効化を持ってるとはいえ、なんとなく地球人にはちょっと耐え難いものがあったのでせめて消毒っぽいことはしてみる。


「うーん……フライパンが欲しいな……この世界の調理器具が地球のやつと似てたらいいんだけどな」


 とりあえず、石の上にウサギモドキ……めんどくせぇ、ウサギでいいや。ウサギを置く。


「うまいこと焼けてくれよ……」


 炎魔法でウサギをジリジリと焼いていく。


 ジュウ……ジュジュ……という音が出始める。


「よーし……いいぞ……その調子だ……」


 魔力を惜しむことなく、火を通していく。


「んー? 焼けたかな? フライパンじゃないからいまいちわからん……まぁ噛ってみりゃわかるか! いっただっきまーす!」


 ガブリッ


 とかぶりつくと……


「うぇっ……中めっちゃ生じゃねぇか」


 ……状態異常無効化で食中毒も防いでくれるよな?


 めっちゃ不安になってくる。


「とりあえずもっかい焼こう」


 丹念に、丹念に火を通す。


「うーん……こんなもんかなぁ」


 先ほどの失敗の経験を活かし、手で肉を半分に割る。


「あづっ! あぢっ! くそー……あ、でも今度はしっかり火が通ってるぞ!」


 全体的にコンガリと焼けており、ウサギだった肉はパッと見は地球の鶏肉みたいな見た目になっていた。


「では気を取り直して、いただきます」


 モグモグ……


 モグモグモグモグ……


 モグモグモグモグモグモグ……ごくっ


「…………なんだろう、まずくはないんだけど……いや、はっきり言ってしまうと……」


 不味いな。


「はー……さっき噛った時にうっすらそうなんじゃないかと思ったけど……味がろくにねぇ」


 淡白な繊維っぽさと脂っぽさだけ。ただただ、それだけだった。


「あー……塩コショウ欲しい……」


 心底そう思った大翔であった。

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