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35.冒険者をやる理由

「まったく、今日は休みって言ったのに……なんでアンタはそうなのよ」


「悪かったよ。でも俺宛に依頼が入っちゃったんだ」


「まあそういうことなら別にいいけど。その代わり、次の休日は私に付き合いなさい。その……荷物を持たせてあげるわ!」


 俺は今、ライゼと一緒に灰のダンジョンに潜っている。

 ダンツェルさんから依頼された鉱石は、5~8層で取ることができるという。今の俺のレベルなら、正直10層くらいまでなら余裕だろう。


 それにしても、なんでダンツェルさんは俺を指名して依頼なんかしたんだろう?

 ギルドを通して依頼する際、依頼主は冒険者を指名することができる。その場合、指名料として余計にお金を払わないといけないのだ。

 ダンツェルさんはわざわざ高いお金を払って依頼をした。単に知り合いだから頼みやすかったという理由なんだろうか。


「アルクス! 前、モンスター!」


「了解!」


 剣を握り、向かってくるモンスターを斬り伏せる。今いる3層のモンスターではもはや俺の相手にはならない。

 ふと、最初にゴーレムと戦った時のことを思い出した。

 あの時と比べて、俺は本当に強くなったんだな。


「ピギー!!」


 スライムが階段を見つけた。鉱石を見つけるため、さらに下の層へ進んでいく。



 気が付けば、あっという間に7層まで来てしまった。

 さすがはスライム24体、下への階段を見つける早さが尋常じゃない。


 そして、出てくる敵ももはや大した強さではなくなってしまった。前に5層で苦戦したのは、アウトブレークのせいだったわけで。

 さすがに退屈になってきたので、俺はライゼと話してみることにした。


「なあ、ライゼはなんのために冒険者をやってるんだ?」


「どうしたのよいきなり?」


「だって、ライゼは貴族の娘で、家を継げば無理して金なんか稼ぐ必要がないだろ?」


 ライゼは『そうね』と返事をした後、上を向いた。


「前はね、両親への反抗のために冒険者をやっていたの。うちの親がいわゆるクズでね、そんな人間になりたくなかったの」


「前はってことは、今は違うのか?」


「そうね。えーと……」


 ライゼはなぜかもじもじとし始めた。


「と、友達の話でね! その子は、他人を守ろうとするばっかりに、他人と距離を置くようになっていたの。でも、ある時一人の冒険者に出会って。そいつは他人の領域に入り込んでくる変な奴なんだけど、その子のことをすごく大切に思ってくれる人で――その仲間と一緒に頑張るのも悪くないか、って思ったの」


 『これ、友達の話だからね!?』とライゼは繰り返す。それはわかったから。

 ライゼも昔と今では冒険者をやっている理由が違うのか。だったら俺も新しい理由を見つけてもいいのかもしれない。


「ピギギーーッ!!」


 その時、ひときわ大きなスライムの鳴き声が上がった。これはモンスターの出現を意味しているが、それにしてはただ事じゃない雰囲気がある。


「アルクス、雑談は終わり! 行くわよ!」


「わかった!」


 該当するスライムのところへ行くと、そこにいたのは体長2メートルほどの黄金のニワトリモンスターだった!


「ゴールデンコカトリス……このフロアのボスモンスターよ!」


 <鑑定>を発動。ライゼの解説通り、このモンスターはフロアボスらしい。


「このモンスターの卵は『金の卵』って言われて高値で取引されているのよ! 焼き鳥にしてやるわ!」


「あ、おい待て!」


 ライゼは俺が止めるよりも先に炎魔法をボスに向かって放つ。巨大な炎が放射され、巨体が焼き尽くされる。


「どんなもんよ! 一瞬で倒してやったわ!」


「だから待てって! ゴールデンコカトリスは、倒されると分裂して大量のニワトリに……」


 ボンッッッ!!


 言いかけたその時、ボスの体が小規模に爆発した。すると、煙の中から蜘蛛の子を散らすようにしてニワトリたちがあふれだしてきた!


「ギャーーーーッ!! 何コレ!?」


「だから言っただろ! どうするんだこの量!」


「しょうがないでしょ! ほら、文句言わないで戦う!」


 俺はスライムを全員出動させて、ついでにチアも呼び出す。


「チア、スライムたちをパワーアップさせてくれ!」


「りょーかいしました! みんな頑張ってー! ニワトリさんをやっつけてー!!」


 スライム、人間、ニワトリ……狭いダンジョンの中で、俺たちは大乱戦を繰り広げていた。

 子ボスたちを斬るたびに、金色の羽が宙を舞う。スライムたちも必死で体当たりし、ライゼも炎魔法を使う。


 楽しい。

 モンスターを倒しながら、俺は気づけばそう感じていた。

 仲間と冒険をしていると楽しい。強いモンスターと戦うとワクワクする。

 こんな感覚は久しぶりだ。いや、厳密に言えば初めてかもしれない。今までとは違う類の感覚だ。


「よーし、じゃあ俺も魔法を使ってみるか!」


「ちょっと!? まだ練習してないんだからできるわけないでしょ!?」


 俺は全身に力を込め、初めて魔法を使ったときの感覚を呼び覚ます。腕に電気を集め、増幅させて――一気に解放!!


「おらあああああああ!!」


 魔法を発動した瞬間、ニワトリたちが一斉に感電した。青白い稲妻が金色の体にぶつかり、辺りを駆け巡る。


 ああ、これが冒険か。

 上手く言葉にできないような達成感が胸の中に広がっていくのを感じた。


 ゴールデンコカトリスは全滅。俺の魔法で何匹か巻き添えを食らってしまったらしく、地面に倒れてピクピクしている。

 この後レベルは2上がったが、代償としてライゼにこっぴどく叱られた。

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[気になる点] 主語が足りない
[良い点] このモンスターの卵は金の卵で高価 →火炎放射で焼き鳥に えっ?
[一言] ヒロイン?の言動が気持ち悪い
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