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33/218

33.森の番人と仲良くなりました。

『ありがとう。必ず解決してみせるよ』


『人間が自然の力を利用することは別によいのだ。しかし、それがあまりにも過剰すぎる。そこを是正さえしてくれれば問題はない』


『わかった。ついでに聞いておきたいんだけど、モンスターを倒すのもまずいかな?』


『それも、過剰になりすぎなければ問題はない。我々も人間を殺すからな。それは自然の摂理というものだ』


 まさに森の番人。考え方が自然と調和しているな。


『アルクス、私は貴様と話すことができて本当によかった。あのまま行けば、私はこの街を破壊し尽くしていただろう。自然の摂理とはいえ、それは心が痛むことだ』


『こちらこそ、ラウハイゼンと話せてよかったよ。あのままだったら無謀な戦いをするところだったから』


『ハハハ、やってみるか?』


『……シャレにならねーっす』


 ラウハイゼンと戦ったら俺は1秒で潰される自信がある。


『私は貴様が気に入ったぞ。これをやろう』


 そう言うと、ラウハイゼンは頭の空洞部分に手を突っ込んで、直径30センチくらいの綺麗な水晶のような玉を俺に差し出した。

 小さいころに見た、木の幹から出ている蜜みたいな色合いをしている。飴色って言うんだっけか。


『これは?』


『魔力宝珠。所有者が念ずれば、一度だけその者の魔力上限を高めることができる。私には不要なものだ』


『そんなすごいもの貰っちゃっていいのか? でも、俺には魔法の才能がないんだよ』


『いや、そんなことはありえないぞ。魔法は全ての者に平等に使えるはずだ。多少才能がなくても、そのアイテムさえあれば魔法は使える』


 マジか。確かに、小さいころに先生に才能が無いと言われて、ずっとそれを信じて生きてしまったような気がする。

 俺も魔法、使えるのかな? できるならやってみたいかもしれないな。


『さて、そろそろ森に帰るとしようか。楽しかったぞアルクス。また会おう』


『うん。また会おう。それから、次会うときはラウハって呼んでいいか?』


『ラウハ?』


『ラウハイゼンのニックネームだよ。ニックネームって言うのは、友達同士で呼び合うようなものかな?』


『友達……か。素晴らしい響きだな。貴様とはよき友人になれそうだぞ、アルクス』


 俺はラウハからもらった宝珠を<収納>でインベントリに入れると、人間の姿に戻った。


「じゃあな、ラウハイゼン!」


「ゴゴゴゴゴ……」


 地響きのような唸り声だが、俺にはなぜかさらばだと言っているように聞こえた。


 いい奴だったな。やっぱり話したらわかってくれた。


「アルクス!」


 その時、俺の名前を呼ぶ声がして、誰かが俺の背中に頭突きをしてきた。ライゼだった。


「何するんだお前!? 怪我するだろうが!!」


「いきなり走り出して勝手に解決するなって言ってんのよ! 心配したんだから!!」


 怒ってるんだか心配してるんだか。


「で、どうなったの?」


「オルテーゼ家の森林破壊を辞めさせるという条件で手を引いてもらった。今回の一件はさすがにうやむやにはできないだろうし、改善するはずだ」


 どんな権力も、ラウハの前では無に等しい。冒険者たちで呼びかければさすがに止まるはずだ。

 さて、一件落着だな。ラウハに言われた通り、魔法を試してみようかな。ライゼなら教えるの上手そうだし――


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 その時。街の中から獣のような叫び声が聞こえた。同時に、何かが俺の横を通った。


「なんだ!?」


 慌てて振り返ると、ラウハの方へ誰かが走っている。ダンだ。


「くらええええええええ!!」


 ちょっと大きめな石をラウハの背中に投げつけた。コツン、という音が鳴って、石が地面に落ちる。


「おいそこの雑魚モンスター!! スライム野郎なんかにビビって逃げたのか!? デカい図体して全然大したことないじゃねえか!!」


「おいやめろ!」


 ダンはなぜかハイになっていて、頭から流血しながらゲラゲラ笑っている。


「俺はそこのアルクスなんかよりも有能なんだよ!! つまり、お前なんか楽勝だぜ!!」


 ダンが拳を握りしめ、ラウハに飛び掛かる。ラウハはそれに気が付くと、後ろを振り返る。


「ハハハハハ!! これで終わ――」


 次の瞬間、ダンはラウハの巨大な拳に叩き潰された。まるで人間が蚊を潰すようにあっさりと。


「……ゴゴゴゴ」


 ラウハはさみしそうにつぶやいた後、歩いて街を後にした。

 街を沈黙が支配した。あまりにも強烈な光景に、俺たちは目を奪われてしまったのだ。


 ダンが死んだ。巨人の拳に潰され、無残にも最期を迎えた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一人の馬鹿すら止められない雑魚が貴族をまして領主を止められるかよ(笑)
2021/07/21 10:14 退会済み
管理
[一言] 結構面白いです! ダンの呆気なさは・・小悪党の末路は呆気ないとはよく言ったものだ。
[一言] (*ゝω・*)つ ★★★★★
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