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25.ライゼとの距離が縮まりました。

「ライゼ、後方支援頼んだ!」


「言われなくてもわかってる!」


 剣を構え、俺はオークに体当たりする。オークが持っている細い槍とつば競り合いのような体勢になった後、パワーで押し切った。

 次の瞬間、ライゼが放ったファイアーボールがオークの胴体に直撃し、屈強な男ほどの巨体が地面を転がる。


「そこだッ!」


 そのまま畳みかけるようにして、俺はオークの心臓に剣を突き立てた。手に感触が伝わってきて、オークが絶命した。


「ふう、オークも楽勝だったな」


 3層。それは前回俺が撤退した場所だが、今回ははるかに攻略がしやすくなっている。

 それは、俺がレベルアップしたというのも原因の一つだろうが、ライゼが支援してくれているのがかなり大きい。


 まず、スライムたちがダンジョン全体の状況を把握する。モンスターを発見すると、スライムが応援を要請。

 俺たちが登場して、モンスターと戦う。俺が前衛で剣を振るい、ライゼが魔法で後方から支援する。

 このパターンでほとんど負けはない。今までは一人でやっていた戦闘に、まさに魔法が加わったのだ。


 そしてライゼだが、かなり戦うのが上手い。後方から魔法を撃つと言っても、ただ適当にしていれば連携は機能しない。

 ライゼは俺とモンスターの状況を見て、適切なタイミングで魔法を発動している。モンスターの種類によって魔法属性も使い分けているようだ。


 おそらく、これまで相当な鍛錬を積んでいるんだろう。一朝一夕でレベルアップしてきた俺とは大違いだ。


――


 レベルが18になりました。


 <スライム>の能力が強化されました。


――


「おっ、レベルが上がった」


「レベル? よかったわね、いくつになったの?」


「18だよ。今日は22くらいになったらいいなと思ってる」


「18!? 22!?」


 俺はステータスを開く。


――


 アルクス・セイラント 17歳 男

 レベル18


 スキル

 <スライム>

 『スライムテイマー』……レベル4のスライムを発生させることができる。最大20匹。

 『スライムメーカー』……スライムにクラスチェンジを施すことができる。

 ・鑑定スライム……スキル<鑑定>を持ったスライム。同時に1匹までクラスチェンジ可能。

 ・収納スライム……スキル<収納>を持ったスライム。同時に1匹までクラスチェンジ可能。

 ・鉄壁スライム……スキル<鉄壁>を持ったスライム。同時に1匹までクラスチェンジ可能。


――


 新しいスライムの種類が増えてる! でも、<鉄壁>ってなんだ?


「ライゼ、<鉄壁>ってどんなスキル?」


「<鉄壁>って言うのは、自分自身の防御力を100%アップさせるスキルよ。でも、なんでそんなことアンタが聞くの?」


「ちょっと試してみようと思ってね」


 新しいことができるようになったら試してみたくなるのが人間というもの。俺はさっそく、鉄壁スライムを呼び出してみることにしてみた。

 スライムのうち一匹が白い光を放って、いつものようにクラスチェンジを始める。

 光が消えると、今度は小さな盾を背中に乗せたスライムが現れた。


「これが鉄壁スライムか。ちょっと頼りなく見えるけど、大丈夫なのか?」


「キュッ! キュッ!」


 任せてくれ! と言わんばかりに、鉄壁スライムは自信満々に鳴いている。よし、じゃあ任せてみようかな。


「ピギギーーーー!!」


 その時、スライムが階段を発見したという合図を送ってきた。


「階段が見つかったみたいだから、先を進もうか」


 新しい仲間も増えて、俺たちはさらにダンジョンの奥へと進んでいく。



「おかしい! 絶対におかしい!!」


 ライゼが騒ぎ出したのは、ダンジョン4層に入って15分くらい経ってのこと。

 4層に入ってすぐ、俺のレベルが19になったのだ。


「さっき3層でレベルアップしたって言ってたわよね!? なんでちょっとモンスターと戦っただけでレベルが上がるのよ!!」


「いや、これもスキルのおかげなんだ」


「そんな説明で納得できるわけないでしょ!! 私なんかまだレベル11なのに!!」


 ライゼってレベル11だったんだ。

 俺のレベルアップのスピードをうらやんでいるのか、ちょっといじけてしまっている。口が悪い子だと思っていたけど、なんだか可愛く見えてきた。


「何笑ってるのよ!」


「ん? なんか可愛いなと思って」


「かわ……馬鹿なこと言わないで!」


「そうやって他人と距離を作るより、自然なままでいた方が俺は好きだよ」


「す……う、うっさい! ほら、モンスター来た!」


 ライゼは強引に話を終わらせると、魔法陣を大量に展開して、前方から向かってきたモンスターたちを全て焼き払ってしまった。

 無茶苦茶だなあと思っていると、ライゼが俺を指さして忠告をしてくる。


「いい? 5層は4層とは比べ物にならないくらいモンスターの強さが変わるわ。1体相手なら問題はないけど、複数体が出てきたらすぐに撤退するわよ」


 俺は首肯した。タイミングよく、スライムから階段を発見したという信号が送られてきた。

 俺たちは緊張感を高めながら、5層の階段を下りた。


 5層はどんな世界が広がっているのだろうと考えていたが、そこは相も変わらず洞窟のような壁に囲まれていて、大きな変化があったという実感はない。

 ゴーレムと戦ったこともあって5層を別世界のようにとらえていたが、意外とそんなことはないのかもしれない。


「なあライゼ、ゴーレムって5層だと頻繁に出るのかな?」


「ゴーレム? 5層で出るのはごくまれね。出現率が高くなるのは6層からって話じゃない?」


 やっぱり、ゴーレムが極端に強かっただけで、5層の攻略自体は大したことないのかもしれない。なんだか安心感が湧いてきた。


「ピギギーーーー!!」


 ホッと胸をなでおろそうとした瞬間、敵の出現を意味するスライムの鳴き声が聞こえてきた。それに、かなり近い!!


「グルルル……」


 聞こえてくる唸り声。俺たちはダンジョンの迷路の中の『部屋』のような空間にいた。四方に道がある、ちょうど水車のような形をした空間だ。

 問題なのは、その四つの道すべてからモンスターの唸り声が聞こえてくることだ。こんなことは今までなかった。


「う、うそ……まさか……」


 疑問に思っていると、ライゼが怯えたような様子で声を漏らした。


「これは、アウトブレーク……!!」


 ライゼの言葉の意味はわからなかった。しかし、彼女の態度で、何かとんでもないことが起こっているのを悟った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ネクロマンサー感が出ていて、これからのスライムの成長を期待する読者も多いのではないだろうか? これまでもスライムを成長にさせていく話しはあったが、文がそれなりにまとまっていて、良い点である…
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