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217.総大将ぬらりひょん

「気を付けて、アルクス! こいついきなり豹変したかと思ったら、魔装でも全然歯が立たないくらい強くなったの!!」


 そう言って、ライゼが相対している妖怪を見ると――、


「ほう、なんだ貴様は? ワシとやるんか?」


 ただのおじいちゃんだった。


「これ、普通の人じゃないの……?」


「アホか! ワシはぬらりひょん。まあ、この百鬼夜行の長ってところじゃな」


 言われてみれば、なんとなく貫禄があるような気がするけど……?


「<鑑定>!!」


――


 対象:ぬらりひょん レベル57


 推定討伐難易度:レベル70


 弱点部位:人体の急所と一致。


 妖怪の総大将。のらりくらりと生きているため普段は妖怪だと気づかないが、かなりの実力を持っている。


――


 なるほど、ライゼの言う通り相当強いらしいな。


「貴様はなんじゃ? ワシとまともに向き合えるのは貴様が始めてじゃぞ? そこのお嬢ちゃんですら気圧されてたというのに」


「俺はアルクス。そっちが妖怪の総大将なら――こっちは冒険者の総大将ってところかな」


「その冒険者がなんだかはわからんが……どうりで、貴様の強さが伝わってくる。これはワシも、少々本気を出さねばならんな!」


 ぬらりひょんは腰に携えていたドスを引き抜くと、老人とは思えないスピードで肉薄してくる。


「ほう、反応するか!」


 ドスと緋華が交じり合い、互いに拮抗する。なるほど、化け物じみた膂力だな。


 これなら、少しは試せるかもな――!


「何を笑っているんじゃ?」


「別に、こっちの話だよ。さあ、もっと本気で来てくれよ」


「小癪な! これでどうじゃ!!」


 ぬらりひょんは剣を弾くと、ためのような姿勢に入り、再び斬りかかってくる。


「<妖気爛漫(ようきらんまん)>!」


「嘘……まだ攻撃のスピードが上がるの!?」


 ぬらりひょんが放ったのは、妖気の名がふさわしい、怪しげなオーラを放つ一撃。

 まるで残像が命を帯びているようなその攻撃をくらい、俺の胴体は――、


「アルクスさぁん!」


 真っ二つに切り裂かれた。


「……終わりじゃな」


 ぬらりひょんが腰から分裂した俺の姿を見て、静かにつぶやく。

 ――しかし。


「何が終わったって?」


「なにっ!?」


 突如横に現れた俺に、ぬらりひょんは殺気だって距離を取る。


「え――あれ、瞬間移動!? でも、私にはアルクスが斬られたように見えたけど……」


「私もですぅ。アルクスさんは確かに体が二つに分かれて……」


 ライゼとルリカさんは先のやりとりを見て、ああだこうだと意見を話している。


 ぬらりひょんもまた、タネがわからないようでこちらを警戒しながら構えている。


「――今のは確かに手ごたえがあった。貴様、何をした!?」


「<スライムデコイ>。お前が斬ったのはただのスライムだよ」


 原理は瞬間移動と同じだ。適当な位置にスライムを召喚し、それを俺とそっくりの見た目にする。

 そして、攻撃される瞬間に位置を交換すれば、俺が斬られたように見せることが出来る。これが新技<スライムデコイ>だ。


 俺がスライムに擬態できるなら、スライムが俺に擬態できない道理なんてないよな。


「この前の王都での戦いで瞬間移動は出来るようになったのはいいんだけど、それだけだと相手を錯乱できないと思って。今、ちょっと試させてもらったんだ」


「――貴様、馬鹿にしとるんか?」


「馬鹿になんてしてないさ。実力がある相手じゃないとこんなこと試せないから、これを機に色々試してみたいと思ってね」


 ミラさんを失ってからの一週間、レベル上げの合間に考えていた必殺技を、こいつで徹底的に試してやる!


「次はこの技だ。<スライムイリュージョン>」


 技を発動すると、俺の背後から五人の俺の見た目をした(・・・・・・・)スライムたちが現れる。

 原理は<スライムデコイ>と同じだ。見た目では判別できないようになっている。


「ならば、全員一掃するのみだ! <波紋時雨(はもんしぐれ)>!」


 ぬらりひょんがドスを空中で振り回すと、無数の斬撃がこちらに向かって飛んでくる。

 その名の通り、水たまりに出来る波紋のように、かつ空から降ってくる雨のように、無数の斬撃は広がりを見せる。


 俺が分身したなら、向こうも多くの手数を打ってくる。

 完璧に予想通りだ。


「それを待っていた! <スライムリフレクション>!」


「貴様、どれだけ技を持っている!?」


 俺は十匹のスライムを空中に召喚する。そのスライムは頭に銀色の手鏡を載せている。俺はこいつらに『反射スライム』と名を付けた。


 反射スライムは空中にとどまったまま、頭に載せた鏡で斬撃を弾き返す。

 すると、当たった角度によって斬撃が弾かれ、その先にある鏡に弾かれ――といった様子で、斬撃が鏡と鏡の間を動き回り始めた。


「反射スライムが持つ鏡は、入射角に応じて斬撃を弾き返す。そして、それを繰り返すことによって――」


 斬撃のばらつきは少しずつ収まりを見せ、ついに一か所に収束した。


「今だ!」


 合図の瞬間、一か所に集まった無数の斬撃が、ぬらりひょんのいる方に向かって弾き返された。


「まさか、ワシの攻撃をそのまま返してきたというのか!?」


 これが<スライムリフレクション>。鏡で攻撃をキャッチボールし、最後に一か所に集めたところで敵に向かって弾き返す。

 遠距離攻撃限定ではあるが、カウンターになるいい技だ。


「ぐっ……!」


 自分が放った斬撃を食らって、ぬらりひょんは後方に滑る。真っ黒な和服が少し破れている。


「……ワシは少し、勘違いをしていたようだな」


「何がだ?」


「貴様は一瞬で葬らなければいけなかったようじゃ!」


 次の瞬間、妖怪たちがまるで自然に発火したように青い炎に包まれていく。


「何が起こってるの!?」


 ライゼが叫んだその時、青い炎となった妖怪たちは一気にぬらりひょんの体に集まり、吸収されていく。


「まさか……百鬼夜行を自分自身の力にしたのか?」


「……この技を使えば、自制が聞かぬ故隠しておこうと思った。しかし、こうでもしなければ貴様は倒せないのでな」


 そう言ったぬらりひょんの体は、不気味な青色のオーラに包まれ、こちらを睥睨していた。


「<鑑定>!」


――


 対象:ぬらりひょん(百鬼夜行) レベル57


 推定討伐難易度:レベル85


 弱点部位:人体の急所と一致。


 百鬼夜行を吸収した妖怪の総大将。自制心を失う代わりにその力は比類がない。


――

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