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216.歩く妖怪たち

「スライムたちは妖怪退治にあたってくれ!」


「キュッ!」


 スライムたちが夜の村を駆けていく。

 これが百鬼夜行か……辺りを妖怪たちが闊歩している様を見ると、アウトブレークよりもかなり規模が大きそうだ。


「見て! <不滅の愛(マリア)>がいるわ! まさか、近くに<アンデッド>の使い手が!?」


 ライゼが指す方を見ると、確かに巨大な骸骨が建物の屋根の向こうからこちらを見ている。

 でも……あれ、<不滅の愛(マリア)>って花嫁みたいな恰好してなかったっけ?


「<鑑定>!」


――


 対象:がしゃどくろ レベル1


 推定討伐難易度:レベル35


 弱点部位:頭蓋骨


 体長3メートルの巨大な骸骨。広範囲の攻撃が得意。


――


 違う! あれ、妖怪だ! ああいう奴ってアズマにもいるんだ!


「<緋のドレス>! <緋色の火球スカーレット・フレイア>!」


 <魔装>で服を着替えたライゼは、<大火球(エル・フレイア)>よりも火力の高い一撃をがしゃどくろに叩きこむ。

 がしゃどくろの頭蓋骨に火球がぶつかった瞬間、激しい爆発音とともに敵の頭が吹っ飛んだ。


「うおおおおおおおおおおおお! ライゼ、すごい威力だな! あたしもたぎってきたぜ!」


 ライゼの活躍を見て、イレーナもかなり興奮しているようだ。彼女は俺に手を伸ばしてくる。


「アルクス、あたしの魔剣を出してくれ! あたしも戦いたいんだ!」


「あの一回だけ使える魔剣のことか? 別にいいけど……」


 旅の前に預かっていた色とりどりの魔剣を、収納スライムを使って取り出す。

 魔剣を手に取ったイレーナは、意気揚々と走っていってしまった。


「私も戦わせて! <戦器変形(せんきへんけい)花槍(かそう)>!」


 フウカもイレーナに続いてナイフを取り出すと、たちまちそのナイフは槍に姿を変えた。

 すごいな、あれは剣だけじゃなくて槍にも変化するのか。便利だな。


「うわあああああああ! や、やめてくださいぃぃぃぃぃぃ!!」


 さて、問題はルリカさんだな。

 ルリカさんは妖怪たちに追い回されながら泣きべそをかいている。


「ルリカさん! 大丈夫ですか!?」


「ご、ごめんなさいぃぃぃぃ! お化けは無理なんですぅ、でも頑張りますぅ!」


 ルリカさんはクナイを投げ捨てるようにポイポイと妖怪に投げつける。


 本当に大丈夫かなあ。でも、俺は俺でやることがあるし。


「アルクス様! この百鬼夜行の元凶を見つけましたっ!」


 お、ちょうどよくやってきた。


 敬礼をして俺に報告をしにきたのは、ピンク色の髪をツインテールにした少女。見た目は完全に人間だが、彼女もスライムだ。

 スライムリサーチャー。手にはメモ帳とペンが握られており、周囲の状況を見て伝えてくれる役割を持っている。


「リサ、ありがとう。さっそくだけど、報告してくれるかな?」


「はいっ! この百鬼夜行は、夜行(やぎょう)というモンスターによって率いられているみたいです!」


 リサは元気よく返事をすると、メモの内容を読み始めた。


「夜行? そいつはどこにいるんだ?」


「行列の先頭にいますっ! どうやらその妖怪がチアさんのような役割を果たしているようです!」


 夜行が指揮官でこの百鬼夜行は発生している……ということか。

 見たところ、妖怪たちは皆かなりの戦闘能力を持っているようだ。誰かが能力の底上げをしているというのも納得が出来る。


「なるほどな、その夜行は先頭に行けばわかるかな?」


「この行列の中でも群を抜いて強いので、一目でわかると思います! 一つ目の妖怪です!」


「ありがとう。引き続き状況の把握を任せた!」


 リサの快活な返事を聞き、俺は全力疾走で行列の先頭に走る。


 それにしても、かなり量が多いな。大小合わせて百匹じゃすまないくらいはいる。


 走っていると、前方から骸骨の手のひらが迫ってくる。


「お、がしゃどくろか」


 邪魔だな、と思った俺はすかさず蹴りを入れ、強引にがしゃどくろを突破する。

 がしゃどくろの骨だけの体は、蹴りを食らった刹那、まるで砂の塊のように粉みじんになって破壊されてしまった。


「――あいつか!」


 襲い来る妖怪たちを抜けて先頭にたどり着く。そこには、リサの報告通りの一つ目の妖怪が立っていた。

 頭には二本の角が生えており、肌が病的に青い。ずんぐりむっくりとした見た目で、あまり強そうには見えないな。


「お前のことはよく知らないけど、困っている人がいるんだ。容赦はしないよ」


 刹那、夜行の大きな顔面にストレートが炸裂する。

 会敵から1秒にも満たない間。そこから放たれた一撃。夜行は対応することが出来ず、ゆらりと体勢を崩す。


 夜行が隙だらけになっているのを見て、俺はさらに追加で蹴りを叩きこむ。夜行の体は軽く、他の妖怪を巻き込みながら吹っ飛ばされていく。


 ……変だな?

 これだけ大規模な百鬼夜行を引き連れているのに、指揮官がこんな弱いことなんてありえるのか?


 確かに他の妖怪よりは幾ばくか強いように感じるけど……これだけの現象ならレベル60台の奴が出てきてもおかしくないような気がする。


「アルクス様! 戻ってください!」


 その時、トークが焦った様子でこちらへ駆け寄ってきた。


「どうした?」


「アルクス様の仲間たちが危ないです! 中団にいたモンスターが急に強くなって、暴れています!」


 そうか……! 夜行はあくまで妖怪たちの能力を上げるための要員。

 本当のボスは、百鬼夜行の中にいた――!

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