211.集まった仲間たち
「……というわけで、一緒にアズマに来て欲しいんです! ルリカさん!」
「こ、ここで私ですかぁ!?」
俺たちがモントロリアに会いに行ったのは、攻略班で知り合ったルリカさんだ。
灰のダンジョンの最下層まで到達したことで、攻略班は活動を休止している。
しかし、攻略班の仲間との関係はまだ続いていた。特にルリカさんとエレノアは、ローラとのつながりで時々会うことがあった。
「困りましたぁ……私は確かに生まれはアズマなんですが、育ちはモントロリアなんですぅ」
「ええっ!? そうだったんですか!? じゃあ、アズマのことは全然知らないんですか!?」
「全然知らないわけではないですが……ぼんやりとしか覚えてないですぅ。ごめんなさいぃ、私は役立たずですぅ……」
ルリカさんが可哀想になってきたな。これは……俺の見当違いかな?
「それでもいいんだッ!」
その時だった。イレーナが突然前に出て、ルリカの手を握る。
「あたしはどうしてもアズマに行きたい! そのために、あんたの力を借りたいんだ!」
「は、はいいいいいいい!? で、でも私じゃお役には立てませんよぉ!」
「それだって構わない! あたしはあんたが必要だ!」
突然の強烈のアプローチに、ルリカさんは顔を真っ赤にしてしまう。イレーナもイレーナで、彼女から目を逸らさない。
「ねえ、これは何を見せられてるの?」
「俺に聞くなよ」
イレーナの懇願が通り、ルリカさんもようやくその気になってきたようだ。
「……わかりましたぁ。自信はありませんけど、案内役をやらせてください」
「よっしゃあ! あんた、べらぼうにいい女だぜ!」
「そ、そんなことないですよぉ……」
ルリカさんは咳ばらいをすると、さっきまでより少しだけ嬉しそうに話し始める。
「アズマに行くには、船に乗る必要があるんですぅ。船は週に一回出てますから、直近だと3日後ですぅ」
「3日かぁー。なあ、アルクス、何かスライムの力で1日で行けないか?」
「無茶言うなよ。瞬間移動するには移動先に座標スライムがいないと駄目なんだ」
ワープスライムを使うにも、行き先に一度行ったことがないと登録が出来ない。
今回は大人しく船に乗るしかないのだ。
「ちぇー。仕方ねえ! あたしは旅の準備してくるぜ! じゃあな!」
イレーナは素早く切り替えると、走ってダンツェルさんのお店の方へ走って行ってしまった。
「……行っちゃいましたねぇ」
「イレーナは嵐みたいな性格なんだよ」
俺たちはイレーナの背中を見つめて笑う。
「じゃあ、3日後に港に集合。それでいいかしら?」
「そうだね。イレーナには俺から伝えておくよ」
「久しぶりのアズマなんてちょっと楽しみですぅ。不束者ですが、よろしくお願いしますぅ」
俺たちは約束を取り付け、その場で解散した。
3日後にアズマかあ。シドレラが現れたことで、とんでもない予定が入ってしまったな。
アズマか、そういえば、シラユキはアズマの和服を着ていた。
「まさか……な」
いくらなんでも考えすぎか。そうだよな。ここ最近、色々考えすぎているような気がする。
「……後で、ライゼに今日の埋め合わせをしないとな」
シラユキがアズマにいるかもしれない、なんて。考えすぎだよな。
*
「うあああああああああああああ!!」
全身を襲う焼けるような痛み。絶え間なく襲う苦しみに、私は声を上げた。
「まさか……腕を治すだけでここまで苦しむ羽目になるとはね」
<キュウビ>は他人の命をストックするだけの能力じゃない。命を奪った相手のスキルも使うことが出来るようになる。
さらにダビアの<キマイラ>によって、私は自在にスキルを付け替えることが出来る。
私の現在の命のストックは2つ。そのうち1つは<キュウビ>のスキルに対応している私のオリジナルの生命。
そして、最後に戦ったときから現在までに、私に適合する命が1つ見つかった。それが2つ目のストックだ。
2つ目の命には、<魔力再生>を対応させた。
これは、魔力を使用すればするほど、自分自身を回復させることができるというスキルだ。
私はこの力を使って無くなった腕の復活を試みている。だが、使用する魔力の量が桁違いに多く、体に魔力を強引に注入する必要があるのだ。
その方法は、湯治。魔力で満ちた液体の中に浸かることで、魔力の吸収を試みている。
だが、このやり方はかなり強引だ。治療には激しい痛みを伴う。
「……シラユキ様、少し休まれてはいかがでしょう」
その時、私の叫び声を聞きつけて、紅色の髪をした少女が部屋に入ってくる。
少女の名前はサクラ。私が拾った――奴隷だ。
「失せろ! 私に指図するな!!」
「……承知しました。差し出がましい真似をしてしまい、申し訳ございません」
サクラはいつもそう言い、私の部屋から出ていく。
今日もそうだ。私の身を案じて、余計な気を使ってくる。
――ただの使い捨ての駒として置いているだけだというのに。
「はァ、はァッ……!」
こうしている間にも、痛みは絶え間なく襲ってくる。だが、立ち止まっている時間はないのだ。
1か月だ。1か月で命のストックを9つに戻し、腕を完治させる。
「待ってろよリュドミラ……! お前の大事な弟子を、そっちに送ってやるからな!」
真っ暗な部屋の中で、私の声が大きく響いた。
「応援してもいいよ!」「続きが読みたい!」という方は以下の方法で応援ができます!
・広告の下の☆☆☆☆☆をタップ・クリックして評価する
・ブックマークをする(しおりが使えるようになって便利です!まだの人はやってみてください!)
・お気に入りユーザー登録する
・いいねを押す(地味に結構見てます!)
応援してくださると、作者がもっと頑張ります!