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201.瞬間移動の秘密

「ローラ、今回復するからな!」


 俺は治癒スライムをその場に召喚し、彼女の腕に注射器を刺させた。


「アルクス……貴様、いつの間にそんな怪力を身につけた?」


 ローラの表情からは、驚愕ともとれる色が読み取れる。

 それもそうか。これだけデカい物体を急に持ち上げたらそういう反応をするのも頷ける。


「詳しく説明したいところだけど……今はこいつの相手が先みたいだな!」


「ぐぬぬぬぬ……な、なんだお前は!?」


 ロイドは四本足をバタバタと必死に動かし、ようやくうつ伏せの状態に戻ることが出来たようだ。

 見れば見るほどおぞましい見た目だ。こいつ、本当にあの偏屈なロイドか?


「<上位鑑定>!」


 俺は次に、上位鑑定スライムを召喚し、ロイドの情報を読み取ってみることにした。


――


 対象:ロイド・スキュール レベル7

 推定討伐難易度:レベル79

 弱点部位:特になし


 スキル:

 <蠎慕┌縺励?鬟「鬢薙→鄒ィ譛?>……<鬟滉ココ鬯シ>繝サ<證エ鬟溷シキ蛹?繝サ<迢ゆケア縺ョ謌ヲ螢ォ>繧医j逕滓?縲


――


「なんだこれ……?」


 上位鑑定の結果、目の前のガマガエルは確かにロイドであることがわかった。

 だが――それ以上に、奇妙だ。スキルの部分で、脳に聞こえてくる音声が何も聞き取れない言語になってしまった。


 こんなことは初めてだ。このスキルは一体なんなんだ!?


「ロイド、これが終わったら詳しく聞かせてもらうぞ! 何があったのかを!」


「さっきから黙って聞いていれば――」


 その刹那だった。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 鼓膜が破れるほどの大音量での絶叫。まるで横殴りに滝を浴びたような衝撃の後、聞こえてきたのはロイドの吐息だ。


「お前ら――冒険者風情がこの俺様に指図してくるんじゃねえ!!」


「……お前、そんな喋り方だったっけ?」


「違った。この能力を手に入れるまではな。だが、この姿になってから、人を食えば食うほど力がみなぎってくるんだ! 10代に若返ったみたいだ! ワハハハハ!」


 こいつ……人を食ったのか! もし、奴が食った人間の力を吸収する能力でも持っているなら、奴の強くなり方も納得だ。


「フ……フフフフフフフ」


「さっきから何をずっと笑ってるんだ。罪のない人をいじめて神様気取りするのがそんなに楽しいか?」


「ああ楽しいさ! それに……お前、俺様よりも弱いだろう? 見ればわかる」


 なるほど、それでつけあがってるのか。

 確かに俺のレベルは70。こいつの推定討伐難易度にはレベルが9足りない。


 だが、それがなんだというのか。


「怖いのか? お前が見下してる冒険者は、いちいちそんなこと確認しなくても戦うぞ?」


「……決めたぞ。お前は出来るだけ苦しませた後に俺様の胃袋に入れてやる!」


 ロイドはそう宣言したかと思うと、見た目からは想像もできない、鳥のついばみのような速度で襲い掛かってきた!


「死ねえ! クソッタレ冒険者が!!」


「アルクス!」


 俺がいたその場所を、ロイドの大口が襲った。無数に生えた歯がガチンと音を立てて閉じられ、ローラの叫びだけが虚しくこだまする。


「フハハ……フハハハ! それ見たことか! 口ほどにもない雑魚なんて、俺様にかかれば一飲みだ!」


「そうか、それはよかったな」


「……ッ!?!?」


 余裕そうな言葉から一転、ロイドは慌てて反対方向に振り返った。

 予想外だったのだろう。俺が――奴の真後ろに瞬間移動していたのだから。


「馬鹿な……私の目には確かに、アルクスが飲み込まれたように見えたぞ!?」


「お前、何をした!? トリックか何かか!?」


「簡単な話だよ」


 俺がそう言って指をパチンと鳴らすと、現れたのは一匹のスライム。

 スライムは他の個体と同じような見た目をしているが、頭には一本の針のようなものが刺さっている。俺はそのスライムを抱きかかえると、話し始めた。


「こいつの名前は座標スライム。<スライムクリエイター>で作り出した、新しいスライムだ」


「そんな虫ケラみたいなモンスターと、お前の瞬間移動に何の関係があるんだ!!」


「まだわからないか? 座標スライムの能力は、自身とこの俺の位置を交換するというものだ」


「……ということは、まさか!」


 まだわからないという様子のロイドに対して、ローラは真意に気づいてハッと表情を変える。


「そう。俺は最初に街にスライムを放った。そして、移動したい位置のスライムを座標スライムにクラスチェンジして、俺と位置を交換しているんだ」


「つまり、さっきの瞬間移動は……ロイドの口の中のアルクスと、奴の背後にいた座標スライムの位置を交換したことで、疑似的に瞬間移動が出来る様にしていた、ということか!」


 ミラさんと初めに戦ったとき、俺も瞬間移動が出来るようになりたいと思って、この一か月ずっとアイデアを練っていたんだ。

 本当はミラさんとの戦いで見せたかったけど――まあ、ここでも充分だろう。


「ハッ――だからなんだと言うんだ。そんなもの、俺様が座標スライムの位置にだけ注意を払っておけば、容易に対策できるではないか!」


「ああ、確かにそうだ。だけど――お前はやっぱりわかってない。なぜ俺が、敵であるお前に能力をベラベラと解説したのかを」


 俺はロイドを指さし、言い放つ。


瞬間移動(こんな能力)なんて、お前みたいな雑魚を倒すのには必要ないってことだよ」

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