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193.脱出ゲーム

「助かったよ、ノア。ノアがいなかったら、今頃……」


「いえ、私は何もしてませんよ。立ち上がったのはアルクスさんです」


 それにしても、これがゼインの魔眼の試練か……恐ろしい内容だったな。

 自分自身の過去と向き合う。それはとても辛いことだ。危うく心が折れてしまうところだった。


「で、なんでノアはここにいるんだ?」


「それは、アルクスさんが見えたからです!」


「そうじゃなくて」


 改めて考えてみると、夢の中なのにノアがいるのはおかしい。

 もしかしてここは心の中なのか? でも、見た感じサリナ村だしな……。


「ここは現実世界なのかな?」


「いえ、おそらくはアルクスさんの心の中です。こうして私がいるのも説明が出来ますから」


 じゃあ、俺は気を失った後、心の中の世界に移動してきたというわけか……?


「私も、いきなり周囲の景色が変わってビックリしましたよ。でも、なぜかこの村の場所はすぐにわかったんです」


「……きっと、ノアは現実世界のサリナ村に来たことがあるからだ。前に母さんが言ってた」


 ノアはサリナ村に泊まったことがある。そして、俺を助けに行くために魔女の森に行き、消えたと言っていた。


「多分だけど、記憶は消えててもサリナ村のことはわかってたんだよ。だからノアは俺のピンチに駆けつけることが出来た」


「なるほど……確かに懐かしい感じがするような気がします」


 ノアは辺りをキョロキョロと見回した。


「……で、なんで誰もいないんですかね?」


「心の中だからだよ!」


「あ、なるほど確かに! 心の中に人がたくさんいたら、休む暇がないですもんね」


 ノアはそう言ってコロコロと鈴のように笑った。


 ノアの天然っぷりが相変わらずなのは嬉しいけど……俺は素直に喜んでもいられなかった。


「これからどうすればいいんだ? 試練はまだ続いてるとか……?」


「いつもみたいに現実世界に戻れないんですか?」


「何回か試してるんだけど、目が覚めないんだ」


 試練のタイムリミットは1時間と言っていた。


「もしかして……1時間経つまで出られないとか?」


「だったら、いつもみたいにここでお喋りをして時間を潰しましょう!」


 いや、ちょっと待てよ……?


 心の中の世界と現実世界では、時間の流れが違う。

 例えば、最初にノアと会った時はほんの数分くらいだったのに、数時間が経っていた。


 もしかしたら、まだ30秒くらいしか経ってないかもしれないし、逆にとっくに1時間も過ぎているかもしれない。


 そうなれば、俺はずっとこの空間に幽閉されてしまうというわけだ。


「駄目だ、やっぱり今すぐ外の世界に行こう」


「でも、何か方法はあるんですか?」


「そこなんだよなあ……うーん」


 自力で目覚めることが出来ないなら、他の何かに頼ってみるしかない。

 でも、見たところ人はいないし、外の世界に出られそうなものも見当たらない。


「アルクスさんはどうしてこの世界に来たんですか?」


「それは、試練のためだよ。ゼインの魔眼っていうアイテムを使いこなすために試練を受けるって聞いてたんだけど……」


「なるほど、さっきのダンさんはその試練だったということですね。だから姿が消えた、というわけですか」


 ノアの言っていることに間違いはない。

 試練は過去を乗り越えるというもので、そのためにダンが現れて――、


「……もしかして」


 もしかすると、だけど。俺はあるアイデアを思い付いた。

 可能性は限りなく低いが、ゼロじゃない。


 だとしたら、試してみるだけだ!


「ライゼ!」


 俺は頭の中でライゼの容姿を想像し、彼女の名前を呼んだ。


「何よ、いきなり」


 その時だった。

 なんということだろう。俺の目の前にライゼが突然現れた。


「あ、アルクスさん!? 何をしたんですか!? いきなり人が!」


「やっぱりそうだ……ここが心の中だからだ!」


 ゼインの魔眼の試練は、過去と向き合うというものだ。


 だとしたら、現れるのはその人の過去に即した人物でなければいけない。

 例えば、俺の試練にはダンが現れるけれど、他の人の試練にダンが現れることはない。


 つまり、試練では、自分が見ようとしている人しか見ることが出来ない。


 それは、裏を返せば、見ようとすれば誰のことを見ることも出来るということだ。


 俺はそのことをノアに説明した。


「なるほど……確かにそういう考え方も出来ますね。さすがはアルクスさん!」


 ノアは笑顔で拍手をした後、再び首を傾げた。


「……で、それが脱出と何か関係あるんですか?」


「それが大ありなんだ。もしかしたら、あの人なら俺を元の世界に戻してくれるかもしれない!」


 俺はさっきと同じ要領で、次に呼ぶ人の容姿をイメージした。


「……来てください! ミラさん!」


 名前を呼ぶと――そこには、ミラさんの姿が現れた。

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