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188.試練開始

 俺とミラさんは、俺が暮らしている部屋に移動した。


「ゼインの魔眼を使うのはわかったんですけど、なんでここなんですか?」


 ミラさんはいつもの調子で人差し指を立て、説明を始めた。


「今、アンタは魔眼を扱えるまでレベルを上げた。つまり、資格を得たってわけさね」


 それは、事前に聞いていた話と同じだ。俺は実力で灰のダンジョンを攻略できるようになった。


「資格を得た後とその前だとゼインの魔眼を取り込んだ後の行動は変わる。資格を持っていないと暴走するが、資格を持っている者は――静かに眠る」


 ミラさんはベッドを指さした。なるほど、眠るからベッドがあるこの部屋にしたというわけか。


「眠っている間、アンタは夢を見る。それが試練さ。その夢の世界から抜け出すことが出来たら、試練達成。魔眼を扱えるようになる」


「……もし、試練を達成できなかったら?」


「試練は1時間で終わる。だから、1時間が過ぎたら、強制的に魔眼が排出されて、目覚める。だから、心配することはないさね」


 一応、リスクはないということか……。


「で、その試練の内容って何なんですか?」


「そんなの、言ったら意味ないさね! 楽しようとするんじゃないよ!」


 それもそうか。じゃあ、試練は一発勝負ってわけか。


「でも、何かヒントくらいはないんですか? どこの師匠も、試験対策くらいはしてくれると思うんですが」


「できるもんなら、してるさね。アドバイスしたところで、意味がないのさ」


 ミラさんの言葉は、珍しく要領を得なかった。おそらく、それ以上に表現のしようがないのだろう。


「さ、つべこべ言ってないで試練を始めるさね! 1時間たったら様子を見に来てあげるから、早くするさね!」


「うわっ! 急かさないでくださいよ! 緊張してるのに!」


 何と言ったって、ミラさんに弟子入りしてから一か月の集大成みたいなものだ。

 緊張しないはずがない。ましてや、試練の内容もわからないのに!


「大丈夫さね。この試練は一発で終わるようなものじゃないから」


 ってことは、平均3~4回くらい受ければ合格できる試練ってことか?

 なら、少しは気が楽だ。


 俺は部屋に置かれたゼインの魔眼の入ったケースを手に取り、横になった。


「よし、行くぞ……!」


「気を張りな。アンタなら大丈夫さ」


 俺はミラさんの言葉を胸に、ゼインの魔眼をケースから取り出し、握りしめた!



 アルクスが眠った。いや、正確には試練が始まったというべきだろうか。


 アタシは部屋から出ると、リビングに戻り、ソファに座り込んだ。


「ミラさん、アルクスの様子はどうですか?」


 家事を一通り終えたライゼは、アルクスのことを気にしているようだ。

 この子、本当にアルクスのこと大好きさね。若者の恋愛に口を出すのは野暮だけど、もう少し素直になったらいいのにねえ。


「アルクスは試練を始めたよ。1時間たったら教えて欲しいさね」


「わかりました。でも、その試練って1時間で終わるんですか? 意外と簡単なんですね」


「いや……試練自体は1時間で終わるけど、期間で言えば最低3年はかかるだろうね」


「3年!?」


 ライゼが驚いて声を上げた。

 それも無理はない。ゼインの魔眼の試練は、人間の精神力を試す。


 アタシは一発でクリアしたが、あれは常人には3年――いや、10年かかってもおかしくないだろう。

 下手をすれば、精神が崩壊して廃人になってしまうかもしれない。


「そんな恐ろしい試練なんて……アルクスは大丈夫なんですか?」


「さあね。アタシはアルクスじゃないし、大丈夫かどうかは1時間でわかることさ」


「でも、それじゃ……」


「アタシはあの子を信じてるよ。だから、どんな厳しい試練も課す。あの子なら乗り越えられると思ってるからね」


 ライゼはそれを聞いて、ようやく納得した様子になった。


 とはいえ、今回のゼインの魔眼は本当にどうなるかわからないね。最低3年とは言ったけど、3年で済めば天才さね。


「……!」


 その時、アタシのセンサーが何かを感知した。


「どうしたんですか、ミラさん!?」


「誰かが森に入ってきたさね。それに、アルクスの名前を呼んでいる。ちょっとこの部屋に繋いでみるさね」


 アタシは手刀で空を切り、次元に穴を空ける。森とリビングを繋いだ。

 その穴を通ってやってきたのは――金髪の少女だった。なぜか、背中には水色の髪の少女もいる。


「やっほー! ライゼさん!」


「驚いた。これはワープか何かか?」


「ローラ!? それに、フランちゃんも!」


 声を上げたのはライゼだった。


「なんだい、知り合いかい?」


「そうです。でも、どうして!?」


 ローラと呼ばれた金髪の少女は、フランという少女を下ろすと、深刻そうな表情で話し始めた。


「大変なんだ。王都で、黒い化け物が暴れている!」

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