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166.朝令暮改レベル100

「気が変わった! アンタら、うちに住みな!」


 ミラさんの家に泊まった翌朝――起きてリビングに行くと、仁王立ちでそう宣言するミラさんの姿があった。


「どうしたんですかいきなり? 昨日あれだけ弟子にはしないって言ってたのに」


「だから気が変わったって言ってるさね! それに、弟子は取らないっていうことに変わりはない! アンタたちが勝手に住むだけさね!」


 なぜそこまでして弟子を取りたくないのかわからないけど……おそらく、昨晩のうちに彼女の中に心境の変化でもあったんだろう。

 考えようによっては、これはチャンスだ。ミラさんのすぐ近くで過ごすことが出来るんだから。


「もちろん、無料(タダ)ってわけにはいかないさね! 食事や家事手伝い、雑用もろもろはやってもらうさね~」


「……もしかして、それが目的なんじゃ?」


「ブツブツうるさいさね! 食材はあるから、まずは朝食を作ってもらうさね!」


 ミラさんはそう言うと、ソファに横たわって二度寝に入ってしまった。

 本当に自由な人だ。まるで行動が予測できないというか、何も考えてないというか……。


「アルクス。料理は私が得意だから任せて。アンタはワープスライムで王国にゼインの魔眼について報告してきて」


「わかった。念のため、シノにお手伝いをしてもらおうか」


 俺はミラさんの家にシノを置いて、王国へとワープした。


 陰険な老人ことロイドは俺の顔を見るなり愚痴をいくつか溢してきて、相変わらずの様子だ。

 俺は淡々とミラさんから聞いた話を説明し、もうしばらく魔眼を預かりたい旨を伝えた。


「フン、別に構わんよ。そんな誰も使えない厄介なアイテム、ほとんど無価値みたいなものだからな」


 ロイドはそう言い、俺が魔眼を持つことを許可してくれた。

 彼の態度には相変わらずイライラさせられるが、グッとこらえて報告を終えると、俺は再びミラさんの家に戻った。


「ん~! これも美味しいさね!」


 リビングに戻ると、食卓について朝食にがっつくミラさんがいた。

 テーブルの上には色とりどりの食材が並べられていて、どれも見るだけで食欲をそそられる。ミラさんはそんな料理を、本能のままにむさぼっているという様子だ。


「ミラさん、お味はどうですか?」


「どれも最高さね! ライゼ、アンタやっぱり天才さね!」


 機嫌を伺うライゼに、ミラさんは上機嫌な様子で答えた。どうやらよほど美味しいらしい。


「これはもう、いつものカエル汁には戻れないさね! 食事なんてどうでもいいと思ってたけどねえ」


「カエル汁……? ミラさんはいつもカエルを食べてるんですか……?」


「カエルは栄養がたっぷりだからね!」


 俺は難色を示さずにいられないが、ミラさんは本当に気にしていない様子だ。

 ミラさんはある程度食事をして満足したのか、息をついて手を止めた。


「さてと、今日は家にあった食料を使って料理してもらったけど、今晩からは自前で食材を用意してもらうさね」


「わかりました。街で買ってきます」


「アルクス! アンタ何のためにここに来たんだい? 街で買ったら意味ないさね!!」


「ってことはもしかして……」


「そう。この森から食材を調達するってことさね」


 ミラさんはビシッと俺を指さすと、得意げに笑った。

 思うに、これは修行の第一段階だ。まずはこの森のモンスターを倒せるようにならなければいけないということだろう。


 だが、森のモンスターは狡猾だ。最初に戦ったときは、まんまと策にはまって危うく死にかけた。

 いきなりハードルが高いな。でも、強くなるためには超えなければいけないことには間違いない。


「んでもって、二人にアドバイスだ。まずはライゼ。アンタは直感を信じること」


「直感を信じる……ですか?」


「そう。アンタの強みでもあり、弱点でもあるところ。それは考えすぎること。これまでの経験から、アンタは充分すぎるくらいに論理的な行動が染みついてるはずさね。だから、直感を信じて動いてみな」


 ミラさんは次に、俺を指さした。


「アルクス。アンタはよく観察しな」


「それはつまり、どういうことですか?」


「それは実戦のときのお楽しみさね! ただ、ちゃんと観察することを怠らなければ、意味はわかってくるはずさね」


 ライゼの時と違って、具体的なことは何も教えてもらえない。自分で考えろってことか。

 よーし、だったら、ミラさんのアドバイスを絶対に物にしてみせるぞ!


「食後のお茶が入りました」


 話がひと段落したところで、シノがティーセットを運んできた。

 美味しそうな紅茶の香りが漂ってくる。さすがはメイド。ライゼの食事と同じくらいクオリティが高いと見た。


「メイドさんはずいぶん気が利くねえ。ついでに家事もお願いするさね」


「アルクス様のためならば、なんでもいたします。何なりとお申し付けくださいませ」


 従順なシノの様子に、ミラさんはずいぶん嬉しそうだ。お茶を飲むと、椅子の背もたれに寄りかかった。


 家のことはシノに任せて、俺とライゼは森に行く。絶対に、この課題を乗り越えてみせるぞ!

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