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155.レスキュータイム!

 悠々と空の旅を楽しむこと、2時間が経過した。

 空は雲一つない晴天で、心地いい風が吹いてくる。これだけ天気がいいと、昼寝でもしたくなるな。


 さて、そろそろ実家のあるサリナ村に着くぞ。それまで空の旅を楽しむとするか……ん?


 上から草原を見つめたとき、地平線の向こうに、何かが動いているのが見えた。

 あれは……人影、だろうか。この辺りに冒険者がいるのはおかしいことじゃないけど、やけに慌ただしいような気がする。


 その正体はすぐにわかった。一台の馬車と、数人の冒険者たちだ。

 そして、彼らが素早く動いている理由も理解できた。彼らの前には、一体のモンスターが立ちはだかっていたのだ。


「あれは……キングバジリスク!?」


 彼らが戦っている相手に、俺は見覚えがあった。忘れもしない、少し前に苦戦を強いられたキングバジリスクだ。

 緑色の体に、ギラギラとした蛍光色の黄色の目玉。二足歩行のトカゲのような見た目は相変わらずだ。


 ベヒーモスに集まってきた個体の残党が、まだ残ってたってことか?


「しかし……だとするとまずいな」


 一度戦ったからこそわかることだが、あのモンスターはかなり強い。A級冒険者のエレノアや仮にもS級のゲルダが一方的にやられるほどだ。

 ややもすれば俺もやられてしまうかもしれないほど、奴は手ごわいのだ。


 問題は、あの冒険者たちがキングバジリスクとまともにやり合えるだけの強さを持っているのかということ。

 馬車に乗っているのが一人、戦っている冒険者が三人。S級やA級に、あんな冒険者がいた覚えはない。


 つまり――おそらくだが、あの三人の冒険者は、馬車の護衛任務中にばったりキングバジリスクに遭遇してしまったというわけだ!


「マズい! 助けないと!」


 事態は一刻を争う。俺はすぐに飛行スライムから飛び降りると、<スライムクリエイター>を発動した。


「ガーディアン! 頼んだ!」


「了解だぜ」


 俺が呼び出したのは、真っ黒なスーツ姿に身を包んだスライムガーディアンだ。

 俺と一緒に地上に落ちながら、ハットを抑えて下を見やる。


「うわああああああああああああああああああ!!」


 一人の男が悲鳴を上げた。それと同時に、キングバジリスクが鋭い爪の生えた腕を振り下ろす。


「<守護者の防御ガーディアンズ・シールド>」


 刹那、両者の間に割って入ったのはガーディアンだ。彼は右手を前に出すと、前面に透明なバリアを張り、キングバジリスクの攻撃を弾き返した。


「あああああああああああ……って、ええっ!?」


 何が起こったのかわからず、襲われていた男が尻餅をついた。


「よく頑張った! あとは俺に任せろ!」


 下にいた四人は――全員無事。どうやら間に合ったようだ。

 あとは、俺がなんとかする!!


「キシャアアアアアアアアア!!」


 鶏の悲鳴のような鳴き声と共に、小さな突風が吹いてくる。こいつと相対するのは久しぶりだな。


 だが……もう苦戦していた時の俺じゃない。

 奴の威嚇の声を聞いて、俺は笑った。


「悪いけど、一瞬で終わらせてもらうよ」


 キングバジリスクがこちらに向かってくる。俺はゆったりと歩き、奴と真っ向から対峙した。


「<紫電一閃(しでんいっせん)(ほむら)>」


 すれ違う瞬間、剣を引き抜いて、俺は全身に雷を纏わせた。それに伴って、刃が炎を帯び始める。


 それはほんの一瞬だった。


 瞬きをするほどの短い時間で、俺はキングバジリスクの胴体を斜めに一刀両断し、剣を鞘に納めた。


「グエ……!?」


 喉から漏れ出すような断末魔の後、キングバジリスクは絶命した。


「ふー、終わった終わった」


 あまりにも一瞬だったな。あの時に苦戦していたのが懐かしい。

 自分が強くなったことを再確認していると、上空から遅れてライゼが降りてきた。


「…………」


 ライゼは着地するなり、黙って俺のことを見つめてくる。


「どうかしたか?」


「いや、なんでもないわ。そんなことより、あの冒険者たちの安否は大丈夫なの?」


 言われて思い出した。そういえば、あの冒険者たちはどうなってるんだ?


 振り返ってみると、そこにいた四人は皆一様の反応を示していた。

 言葉にするとするなら、『驚き』だろう。口を大きく開けたまま、固まってしまっている。


「ま、あんなのを見せられたらそうなるのも無理はないわね。で、アンタたちは怪我はない?」


 ライゼの問いに、黙って頷く冒険者たち。

 しかし、唖然としている冒険者たちの静寂は、すぐにかき消された。


「もしかして……お前、アルクスか!?」


 叫び声を上げたのは、馬車の中にいた人物だった。

 ふくよかな体型に、青色のターバン。あごには立派なひげを蓄えており、いかにも中年という見た目をしたおじさん。


 俺は、この人を知っていた。


「もしかして……ライネスさん!?」


 その人こそ、村でお店を営んでいる商人――ライネスさんだった。

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